序文 幻想世界も綱渡り
レヴィアタンは考えていた。
とりあえず突発的に起こった九尾騒動はひと段落ついたらしい。
ラファエルにも見舞いがてらの情報交換をついさっき済ませたばかりだ。
が、こっちはラファエルの生死と同じぐらいにどうでもいい。
やはりじわじわと問題が浮上し始めた。
正直なところ、智欲の大罪をめぐる問題は深刻の一途をたどっていると言っていい。
ルシファーとミカエルをそろって返り討ちにしたとあれば、我らが魔王は当然動かざるを得ない。そしてそれは神の側も同様だ。
ミカエルを筆頭とした正攻法で勝てないとあらば、搦め手を狙ってくるだろうことは想像に難くない。
…んー。そういう意味ではラファエルをここでふつーに暗殺しておくべきだったのかも。
…いや、まあいまさらか。
あれはもともと放っておいても勝手に病院送りを繰り返してしまうタイプのキャラなのだ。
より深刻なのは対外的な問題のほうだ。
九尾の狐が殴りこんできたように、各神話のバトルマニアたちが少しずつ騒ぎ始めている。
特にヤバイのは中国神話の闘戦勝仏・孫悟空と闘神哪吒太子。
「智欲の大罪ってやつがすごい強いらしいぜ?」という感じに困ったことになり始めている。
別の意味でヤバイのはクトルゥー神話のニャルラトホテプと此度の九尾の妖狐。
おもしろい事があらば首をつっこまずにはいられないような輩たちが、これまた困ったことをやり始めようとしている。
まあ、実際にやった九尾の狐は手ひどいお仕置きをもらったようだが。
これについてはマスターぐっじょぶと言わざるをえない。
まあ、すっかり調教されちゃって別の問題が発生しちゃってるような気もしないでもないけど、それはそれ、これはこれ。
他にも悪魔勢力による全界制覇を恐れた、北欧やギリシア、エジプトなどを筆頭とした他の神話群の動向が日に日に悪化していくのを感じる。
ここまで爆弾が積み上げられてしまえば、迂闊に動くことも受身にまわることも悪手にしかならないことが目に見えている。
人間の尺度で言うのなら、互いに核弾頭を撃ち合った終末戦争と同様のものが、この幻想世界で起こりえてしまうのかもしれない。
ラグナロクVS.アルマゲドン、な感じで。
「仕掛けてきたら、そんときはそんとき」ぐらいの気持ちでどーんと構えててくれたらいいのに。
神なんだから。ねえ?
ほんと、この世界は平気で戦争ふっかけるバカばっかりで心底頭が痛い。
…詮無いことだとは思うが、もしも智欲の大罪が普通にドラゴンレベルの実力だったなら、ここまでやっかいな問題にはならなかっただろうと思う。
うん。神レベルは倒すもんじゃないね。問題しか起こらないから。
スカっと闘ってハイ終わり、とはいかないみたい。
……政治ってやだね。西に行ったルシファー、うまくやってるかな?
まあ、バティンも付いてるし、大丈夫か。
この翌日、レヴィアタンは地雷原に手榴弾を投げ込むような依頼を、智欲の大罪とそのマスターへと持ちかけることとなる。
多少の問題発生は当然覚悟の上で。
第四章 レヴィアタンの依頼編、始動します。




