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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第三章 九尾巫女の厄日編
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西から来た巫女

『唐突ですが、ここで問題です』というような感じで、俺の脳裏に問題文と選択肢が浮かんだ。

 Q.目の前に道に迷った風な巫女さんが居ます。あなたはどうしますか?

 1.声をかける。

 2.無視する。

 3.とりあえず様子を見る。


「3だな。とりあえず様子を見よう」


 …様子を見ました。唐突ですが、ここで問題です。

 Q.目の前に道に迷った風な巫女さんが居ます。あなたはどうしますか?

 1.声をかける。

 2.無視する。

 3.とりあえず様子を


「エンドレスかよ俺の脳味噌!

 一昔前の王様でもあるまいし、今時バグ扱いだぞそれ。

 もうちょっと詳細よこせよ。結局二択じゃねぇか!」

「落ち着いてください、マスター。相手に聞こえます」

「う」


 正直できれば無視したいところなのだが、こっちにはアンノウンが居る以上、事情が事情だ。

 可能性だけならここで無視すればリアルにバッドエンドフラグが立ちかねない。

 命を狙われる理由がある生活ってほんとイヤだよな。


「…結局『1』しかないのな」


 ちなみにこの場合、考えられる反応は三つ。

 一つ、まったく無関係な通りすがりの巫女さん。これが一番うれしい。

 二つ、自分を訪ねてきたが、ただのお使い。これがまだマシ。

 三つ、認識された瞬間エンカウントバトル。

 ルシファーの前例がある最悪のパターンだ。

 一が出ますように。一が出ますように。一が出ますように。

 声をかける前に本気で観察。

 見たところ身長は155前後か。巫女服着てて男だったらブチ切れていいよな?

 ん、男の娘だったら? 不許可だ。

 その際は着せた神社の御神体をしばいてくれる。

 髪は肩までとアンノウンやルシファーほど長くはない。黒髪だ。

 気になるのは顔と頭を覆い隠すように…掛け羽衣だったかな?

 牛若丸と弁慶とかのイメージで思い浮かぶ羽衣を被っている。

 靴なに履いてるかはよく見えない。

 一言文句を言ってみたくなるのはキャリーケースだな。

 旅行するならそこは風呂敷だろう、服装ビジュアル的に。

 偏見だと思うので心に押しとどめるが。

 …もしかしてあの巫女服で電車とか乗ってきたのか?

 …よし。よくないけど、よし。


「…あの、どこかお探しですか? 駅か交番ぐらいなら案内できますよ」


 まずはジャブだ。遠回りからしかけて取れるだけの情報を取る。

 暗い夜道で、幼女を連れた買い物帰りの男に声をかけられる相手の気持ちは…

 とりあえず気にしない。

 しかし、


「あ、写真の――」


 ぐはっ。モロストレートカウンター。一撃ノックダウンかよ。


「失礼いたしました。ご親切にどうもありがとうございます。

 あなたはもしや、その、ええと…」


 口ごもる姿に二番の反応だと直感した。YES!

 この巫女さんはただのお使いだ。考えてみれば当然だな。

「あなたが智欲の大罪さんですか?」なんてまともな人間が口にできる言葉じゃない。

 もう一度言う。まともな人間が口にできる言葉じゃない。


「とりあえずこっちのチビはアンノウンって呼ばれてるな。んで、俺は――」

「私のマスターです」


 おい、名乗らせろよ。


「いろいろと思うところがあるとお察しいたしますが、日本の陰陽師と式神の関係だと認識していただければ、だいたい合ってます」

「いや、魔王に目ぇつけられるような式神、ほしくなかったからな?

 たのむからもうちょっと自重してくれ。

 …一応確認しときたいんだけど、キミ、俺らに用があると思っていいのかな?」


 本音を言わせてもらえれば、できれば「NO」と答えてほしい。

 が、この流れじゃ期待できないよなー。


「ぁ…ええ、はい、そうです。京都――京の稲荷から参りました」


 ん? なんか違和感があるな。

 首をひねっていると買ったばかりの米袋がずり落ちてきた。


「とと。悪い。立ち話で済まないんなら茶でも出すぞ」

「ロクな茶葉はありませんが」

「うるせっ」


 アンノウンとの掛け合いに、巫女さんが羽衣の奥で笑ったような気配がした。


「すみません。ごちそうになります」



 自宅に顔を覆い隠した巫女さんを招く。

 去年の俺なら想像もしていなかったな。

 まあ、あのルシファーも大概か。

 できれば軽く片付く問題だといいなぁ。

 座布団の上で固まっている巫女さんに「コトリ」と茶を差し出して、対面のたたみに直に座る。


「見苦しくて悪いね」

「い、いいいい、いえいえ、そ、そんなことは! ――熱っ」


 お茶で舌をやけどしたかな? 嘘がつけないタイプだね、どうも。

 軽くこぼして飛び散った雫を、アンノウンが手ぬぐい取り出してフキフキ。


「あ、す、すみません!」

「かまいません」

「とりあえず落ち着け。噛み付きゃしないから」


 アンノウンからの「失礼ですよ」的な視線を受け流す。


「まだ名前を聞いてなかったな。俺は――」

「も、申し遅れました! ウチ、いやいや、わたくし、京の稲荷から参りました、花枷雫はながせしずくと申します!

 どうぞよしなにお願い(ゴツッ)痛ああぁっ!」


 土下座せんばかりの勢いで頭を下げた巫女さんが、ちゃぶ台の角に頭を痛打クリティカルした。

「うわ、痛そー」と最初は思っていた。

 しかし、その衝撃で彼女の頭から羽衣が落ちた瞬間、その感想は消し飛んだ。


「あぅ!」


 はらりと落ちた布の奥から、「ぴょこり、ピクピク」と、耳が。


「ね、ネコミミだと…?」

「ち、違うんです、違うんです、違うんです! ちゃうゆーとるやろあほぉ!」


 涙目でパニックを起こして手をぶんぶん振り回す巫女さん。

 場は混迷を極めた。

 困惑するネコミミ巫女に、対処のしようがまったくない俺。

 視界のすみではなぜかアンノウンが大きな紙を折り折りしている。

 いったいなんなんだ、この状況は!?


「パァンッ!」


 いきなりの破裂音に両者硬直。音源はアンノウン。

 どうやら折っていたのは紙製のクラッカーだったらしい。


「…落ち着いてください」

『…はい』


 アンノウン最強伝説がまたひとつ更新された瞬間だった。


今回の掲載にて総アクセス数8000、総文字数10万文字を突破しました。

ただし、評価はさして変わらず!

期待はされてないものと判断して、のんびり行きます。

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