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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第三章 九尾巫女の厄日編
34/83

序文 ある負け犬の選択

『やられた』『ハメられた』『嘘だろ?』『なにやってんだよ、自分』


 智欲の大罪にはまったくもってしてやられた。

 正直なところ、作者でありながらこの事態は想像だにしていなかった。

 自分は二章開始時に、迷いはあったが打ち切る覚悟を決めていた。これに偽りはない。

 なのに「作者として智欲の大罪のスペックに敗北する」ことでそれを見事に覆された。

 冗談じゃない。こんなことが起こり得るのか?

 最終話書き終わって、しばらくしてから気付かされたのだ。智欲の大罪に。

「敗北という形で打ち切る格好悪さ」と「負け犬を承知で前言を翻す格好悪さ」

 そのどちらかを選べと。

 問題は最終話でのウリエルとの一幕だ。

 普通ならただの最終話らしい会話というだけで終わる。

 しかし、アンノウンに敗北した事実を以って、その後で語ると作中会話だけの領域には留まらない。留まってはくれないことに運悪く気付いた。

 主人公に「見捨てない」と言わせておいて、作者が「見捨てる」格好悪さを許容できるのか、と、そうなる。なってしまう。というかなってしまっていた。気付かなければよかった。

 そんなこと、許容できるわけがないだろう。

 たったの一文が、章一つ分と同等の価値を盗んでいったのだ。

 一会話が恐ろしく高くついた。


 在り得ないことが起こり得た。

 気付いたらもう、この状況に追い込まれていた。

 各キャラクターの所有イメージに任せるという自分の執筆方法を、弱気を衝かれて登場キャラクターに逆利用された。

 普通ならそんなこと在り得ない。

 智欲の大罪のチートイメージが強すぎたっていうのか?

 感情移入のし過ぎだろう。本当になにをやってたんだ自分。もはや病気の領域だぞ、この失態。

 作者の意図なくフラグの連鎖。

 理屈ではおそらく、自分の「無意識」に「意識」がだまされた、という事になるのだろうか。

 自分が想像し、生み出したはずのキャラクターに、これほどのレベルで逆に操られた。

 セーフティの外れた拳銃が暴発したようなものだ。跳弾して脳天撃ち抜かれた。


 完敗だ。もう笑うしかない。正直吹いた。

 こういう事って本当に起こるものなんだな。

 いまさら最終話を書き直す選択肢を採るなど在り得ない。

 その選択は採ったらマズイだろう。

 甘かった。ウリエルは三途の川に流しておくべきだった。

 アンノウンは大罪悪魔とはいえ、本来自らが生み出した幻想のはずだ。

 だというのに、これに気付いた時、まるでアンノウンにうまく利用されたような気分だった。

 さすがに待て。「智欲の大罪を強くイメージした者の脳に居座って、だれかれ構わず逆に操るチート能力」なんて在り得ていいのか? いいわけないだろう。

 もしかして呪われたんじゃないか?

 脳味噌ハッキングされてんなよ、自分。しっかりしろ。


 仕方ない、頭切り替えて、空いた時間に古本屋に立て篭もろう。

 せめて智欲の大罪に喧嘩を売れるだけの危険ネタを手に入れなければ、文字通り話にならない。

 ここから先は確実に負け戦か。

 しかし、ある意味面白くもある。

 こうなったらもう、「負け犬を承知で前言を翻す格好悪さ」以外の選択はない。

 覚えていろアンノウン。いつか必ず虫地獄にいざなってやる。ウリエルも覚えておけ。

 …とはいえ、クールダウンも絶対必須だ。猛省して頭を冷やそう。

 暴発した拳銃のメンテナンスは最重要事項だ。

 智欲の大罪には、せめて一噛みくれてやろうじゃないか。

 負け犬の牙、ちょっと痛いのくれてやりたいかな。


11月再開を目処に第三章の構築を開始します。


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