表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第二章 ミカエル暗躍編
31/83

そしてアクマは舞い降りた

「さあ、いくわ(showdown)よッ!」


 そして手札は開かれる。

 もはや余計な後先を考えることはない。

 自分が死のうが相手が死のうが知ったことじゃない。

 それは互いにすべてをチップとしたギャンブルなのだから。

 一切の迷いはなく、躊躇はなく、そして後悔も残さぬよう闘うだけ。


 宙高くに舞うルシファーが、一切の手加減を排除した全力の二刀垂直斬りを繰り出す。

 受けるミカエルもまた全力で応じ、咆哮を上げて飛翔し、突貫。

 横一文字に切り払う。

 神話級バカ力の持ち主二柱による空中戦。

 そのぶつかり合いを前に球体状に拡散する衝撃と、激しく火花を散らす三本の剣。

 構えを変えるルシファー。

 右手の魔剣を主に使っての乱打を仕掛け、

 左の聖剣を突きの型に固定して音無しの構え。

 狙いは二刀流における近接狙撃ソードスナイプ

 左右息をつかせぬ連撃だけが二刀術の華というわけじゃない。

 この切っ先の銃口、隙を晒さば心臓だろうがのど笛だろうが容赦なく狙い撃つ。

 対するミカエルにとってはかなりのストレスだろう。

 こうなっては左の狙撃に常に対応できるだけの余裕の保持を強要されることとなる。

 また、この状態が長引けば常時致命打の緊迫感に苛まれ、精神的に不利な状況にイヤでも引き込まれる。

 ならば、と、ミカエルはあえて撃たせる選択肢を取った。

 剣を強打で弾いてわざと隙を見せ、直後撃ち込まれた刺突を見据える。

 左腕ヴァンガードの拳に小型楯バックラーを具現。

 表面を切り裂いていくルシファーの聖剣を受け、殴りつけて左の突きを左の拳で無理矢理押し流し、二柱そろって両腕を開く。

 同時に白と黒の翼が推力を全開。

 間髪入れず兄妹そろってヘッドバッド!

 これまでで最大級の衝撃波ショックウェーブが周囲一帯をぶったたく。

 ここは兄貴天使の意地か、わずかにミカエルが押し勝つ。

 弾かれるルシファーが後方に仰け反りながらも、はしたなくドレスを翻して、真紅の靴で蹴りを見舞う。

 ミカエルは翼で大気を打ち叩いて彼女の蹴りを急速回避。

 これはルシファーの隠し技だ。

 万が一当たれば真紅のハイヒールのつま先から五本の凶器が飛び出すだろう。

 能あるルシファーはハイヒールで爪を隠している。

 あの容姿でなんとブレイクダンスの心得まで持っているらしいというのだ。

 かつての戦役では、彼女を取り囲んだ十数柱の中級天使たちが、二十爪の乱舞で八つ裂きにされたという報告もミカエルの耳に届いている。

 そしてミカエルの回避はギリギリ成功。

 あと数ミリ距離が及ばず、あごの先端をわずかに掠るのみ。

 ミカエルもまた怯まない。

 蹴りの反動を得られず隙だらけのサマーソルト。

 上下を逆にして翼を見せるルシファーの無防備な背に、ミカエル左肩からのショルダータックルが入る。

 離れていくルシファーに追撃の突進を仕掛けるミカエル。

 しかしキャンセルして急速防御。

 ルシファーは二刀のエクスカリバーを開放し、はた迷惑な全方位無差別の黄金斬撃を繰り出した。歪な満月が地表に墜ちる。

 小隕石が落ちたかのような振動と衝撃がフィールドを襲う。

 さして間を置かずに離脱したはずのアンノウンから、作業を邪魔された怒りを乗せての無差別レーザー射撃十六連射。

 それを無視してクレーターの白煙から飛び出すルシファーの十爪。

 漆黒の六翼が白煙を打ち払い、なにかを抱きとめるように両手を突き出したルシファーが姿を現す。

 十本の爪が揺れ動いてアンノウンのレーザー射撃に注意を逸らしたミカエルを取り囲む。

 編み込まれたのは真紅の爪による処刑の檻。

 そのまま祈るかのように両手を組もうとするルシファー。

 肉も骨もやすやすと断ち切る真紅の檻が、その内部を切り刻まんと迫りくる。

 ミカエル急速退避。狙いどころは固定の弱い親指と小指の計四本。

 そのうち親指の一本を斬り止めて檻の外へ。そのまま爪を掴んで飛ぶ。

 いつかアンノウンにも突かれた一瞬の隙。

 しかしルシファー、同じ轍は踏まない。

 エクスカリバーの刃に爪を重ねて五本まるごと、いや、左も同様にして十本まとめて切り落とす。

 加速途中に支えを落とされてバランスを崩すミカエル。

 この瞬間、目に見えてのクリティカルチャンス到来。

 通常のチャンスは目に見えるようなものではなく、直感的に感じ取るものであるのだが、この瞬間に限っては見事に劇的としか言いようがない。

 切り落とされた十本の爪がもともとルシファーとミカエルを繋ぐトンネルを形成していたのだから当然と言えば当然。

 よろけたミカエルがちょうどラインの中央に出戻りしていた。

 この機を逃さば大罪悪魔は語れない。トンネルは二秒と保たないだろう。

 ならばと二剣をひったくるように掴み取って最大加速。そして突撃。

 逆手に持った左を前に態勢を崩したミカエルに襲いかかる。

 その間、つんのめったミカエルは、一か八か、一瞬の判断で前転してかかとを落とす。

 態勢を崩したミカエルと突進してくるルシファー。

 彼我の距離と速度を見誤れば痛打は免れない。

 ミカエルは計算を放棄して直感に賭けた。

 ゼロコンマ一秒単位の成功をつかむミカエル。

 ルシファーの左肩が強打されて剣閃が下がる。

 しかしそれでも右はまだ生きている。


「――ッ! アアアアアアアアアアアア!!」


 ルシファー咆哮。全力を振り絞って右半身から体当たり。

 さらなる加速にミカエルをそのまま引きずり、獅子が牙を突き立てるかのように剣を握った右手を振り下ろし、ショルダープレートを柄尻で破壊する。

 飛び散る鉄片。ミカエルの頬に二つ目の切り傷。

 先の横傷と重なって、左頬に十字の傷を描く。

 ルシファーの眼光が鋭くミカエルを射抜く。

 重ねられた両手に握られた、己の肩へと向かってVの字を描く二本のエクスカリバー。


「断ち切りなさい」


 以前変身したアンノウンには回避された渾身の一手。

 全力の左右薙ぎ払い。

 この渾身の一撃、ただの薙ぎ払いというわけじゃない。

 左右の刃鉄はがねを正確に噛み合わせたクロス・シザーズだ。


「…エクス――


 ハサミはナイフほど切れ味は鋭くない。

 しかし左右の刃を正確に噛み合わせることで、力も切れ味も最低限であっても、最大の成果を出すようにできている。

 それを想像し得る限り最高の刃物二振りと、

 出せる限り最大のパワーで行えばどうなるか。


     ――カリバーッ!!」


 気迫一閃。

 相反する聖魔黄金の光がVの字からX字に、X字から逆Vの字へと流れ、巨大なはさみを作り出し、その中央を裁断する。


「――ッ」


 その黄金のラインにすでに挟み込まれているミカエルが、危機を直感して手に取る聖剣を、そのもっとも危険な威力を誇る地点である交差に楔のように押し込み、歪ませようと捻り込ませる。

 しかし剣は開放されたエクスカリバー二刀の切れ味に耐え切れず、断面キレイに真っ二つ切り裂かれた。

「キンッ」と甲高い音が戦場に響く。


「………今のはちょっと、さすがにひどくないか?」

「そう? おチビは避けてみせたわよ。

 刃鉄の組み合わせを剣を投げ当てて崩し、本人は射程外に退避するって寸法でね。

 その後も本当にひどかったんだから」


 アンノウンはその後、追撃に出たルシファーをクトゥルー神話の「名状しがたいバールのようなもの」で迎え撃ち、怯んだ彼女をさらに新撰組の「菊一文字則宗」で切り裂いた。

 そしてとどめは北欧神話の「ミョルニル」で空高く打ち、仕上げにアポロ11号に亀甲で縛り付けられて月面まで拉致された。

 さすがにそこまでの説明はしないが。


「…敵わないな」

「もうあきらめなさいよ。今なら優しく手当てしてあげるわよ?」

「キミが? それはぞっとしないな」


 ミカエルの口元からは一筋の血が流れ落ちている。

 鎧は見事に一閃断ち切られて傷は深く、裂傷はもはや上下分断の域にまで達している。

 さらにエクスカリバーの開放により内臓臓器も消し飛ばされ侵食を受け、下半身はもはや神聖術で繋げているのが精一杯で、満足に動かせない状態に陥っていた。


「…降参を。いやだと言うのなら先百年、眠らせてあげるわ」

「ハハハ、さすがにそれは困るな。これでもいろいろやることの多い身だよ。

 百年も眠らされるなんて、起きたときが怖くてとてもとても」

「ミカエル」


 叱責するように一言だけ名を呼ぶルシファー。


「ん、ゴメン」


 ほんの数秒、しかし真剣に天秤を傾けるミカエル。


「ゴメン、ルシフェル。やはりアレは放置できない」

「死ぬわよ?」

「死んでもだ」

「…そ」


 あきらめたように二刀から手を離し、地表へと放るルシファー。


「ルシフェル?」

「好きにしたら? アタシもそーするし」

「…済まない、ルシフェル」


 背を向け、離脱しようとするミカエル。


 しかし、ルシファーがその肩を「ガシッ」と掴んだ。

 訝しんで振り向くミカエル。



「こんのぉ! ブァカアニキぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」



 ルシファー渾身のグー!

 うっかり振り向いたミカエルの鼻っ柱に痛烈な強打(クリティカルヒット)

 一時的に流星化したミカエルが地表に叩き付けられる。


「ぐはっ! …る、るしふぇる?」


 鼻から吹き出る血を押さえて目を開ければそこに、堂々仁王立ちにガッシリと腕を組んだ、ルシファーの圧倒的威圧の光景が。


「アタシ、言ったわよね? アタシも好きにするって」

「ちょ、ま、るし、げふっ!?」


 殴る、殴る、殴るルシファー。


「根性叩き直してやるわあああああ!!!」

「う、わ、うわああああああああ!!!」


 …兄妹喧嘩はしばらく収まりそうもなかった。


result

 アンノウン勢力、戦闘参加人数三名、損害0名。――勝利。

 ミカエル勢力、戦闘参加人数千三十六名、全滅。――敗北。

個別評価

『アンノウン』

 敵勢力千三十五名撃破。内二名はウリエルとラファエル。

 恐竜、照野さんを召還ペット化。変身及び編纂callは最後まで使用せず。

『ルシファー』

 一名撃破。相手は敵大将ミカエル。戦争に介入して好き勝手に大暴れ。

 各参戦者の中でもっとも得をすることとなった。

『マスター』

 撃破数0名。終始役に立たず。

 発掘時になにか事故があったらしいが詳細は不明。

『ラファエル』

 アンノウンの召還したゲイ・ボルグにより戦闘不能。

 レヴィアタンの手により、後方支援のガブリエルに引き渡される。

『ウリエル』

 同じくアンノウンの召還した巨大トイレに流され行方不明。

 その存在及び性格故にだれにも探してもらえず、結局自力で帰還したらしい。

『ミカエル』

 ルシファーの手によりフルボッコ。

 なんでも泣きながら土下座させられたらしい。

bonus

『エクスカリバー1st(ver.victory demons)』

 以上。

第二章の戦闘パート終了。

間に一本番外入れて完結予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ