テンシに向ける銃口
智欲の大罪アンノウンVS.神の炎ウリエル。
傲慢の大罪ルシファーVS.神の如き者ミカエル。
大罪二柱と四大セラフ二柱の対決図式がここに成立した。
先陣を切ったのは今回もアンノウン。彼女に余裕はない。
この場には智欲の大罪のマスターが埋もれている。
彼女に残されたタイムリミットは戦況を大きく左右するだろう。
ならば短期決戦以外に選択肢はありえない。
世に名の知れたウリエルには悪いが、容赦のないイカサマを打たせてもらうつもりだった。
思考を対火属性用へと切り替える。
彼女は突進しながらウリエルに向けて、決闘申し込みの左手袋代わりにルシファー乱入で役目を果たさなかったナイフを投げつけ、そのまま「ついて来い」と言わんばかりに中空へと飛び去る。
ウリエルも掴み取った紙製のナイフを手中で焼き払いながら獰猛に笑い、「上等だぜ、チビガキ」と言い置いて赤々と炎上する六枚羽を開放した。
飛び去る二柱を背景にルシファーとミカエルも斬撃戦を開始。
聖剣で打ちかかるミカエルを、交差させたエクスカリバーで受けるルシファー。
「邪魔をするなルシフェル。僕は智欲の大罪を殺す!」
打ち払って薙ぎ、返して逆、上げて袈裟と繰り出しながらミカエルが攻めに出る。
ルシファーもまた薙ぎを左で、逆を右で、最後袈裟を左で真っ向噛み合わせて封じ込める。
「暑苦しいし、見苦しいのよ。アンタ一体どこの熱血ヒーロー気取ってんのよ。
おまけに相手が幼女姿ってとこに、ちったぁ違和感感じないの?
オマワリさん、いらっしゃいよ」
払い、左右斬撃の雨あられ。
もとよりルシファーのバトルスタイルは左右の爪と魔力放出のコンビネーション。
両腕を使う二刀流には一日の長がある。
右唐竹割り、左平突き、右逆風、そして横一文字、いや、横二文字と連撃が飛び、ミカエルの聖剣に悲鳴と火花を上げさせる。
「相手の容姿など関係あるものか!」
斬り払って空中へ。
「相手は神殺しの悪魔、故に討滅する。そこに他の要因は必要ない」
構えは大上段。
再びため息を吐き出したルシファー。
「何百年経っても神、神、神か。恥ずかしくないの、アンタ?」
「黙れルシフェル。僕に言わせればお前の存在の方がよほど恥ずかしいんだ。
神の寵愛を受けたいが為に反抗し、挙句取り返しのつかないところまで敵対したお前のことを、一体僕がどれだけ恥じたか!!」
「………………………………昔の話よ」
若干顔を赤らめ、かつ目も泳がせて否定するルシファー。
要するにツンデレが行き過ぎて取り返しのつかない、行き着くところまで行ってしまったらしい。
そしてそれが天界と魔界の戦争の根源。原因の真相だ、と。
黒歴史にしても黒すぎる歴史だった。
ルシフェル嬢、よく悶え死ななかったモノである。
(注)ツンデレは病気です。用法、用量を守って正しく対応しましょう。
反応が過剰な時は本人、対象者、友人を問わず、保健室や精神科のお医者さんにご相談くださいませ。
「…それが、それが同じ最上位天使の僕にとって、
一体どれだけ針のむしろだったか…ッ!」
ブルブルわなわなと怒りと屈辱に震える聖剣の切っ先。
大上段に斬り込むミカエル。
積年の恨みを込めて渾身の一撃を、防ぐルシファーに容赦なく叩き込む。
「ぐ…ぅ…」
その衝撃が交差した三本の剣を離れ、ルシファーの体を殴り叩いて足場に亀裂を走らせる。(マスター大ピンチ)
しかしルシファーは、全身に負荷がかかったその状態でなお口角を上げ、硬直した体の中で右手の人差し指だけをミカエルに差し向ける。
「BANG!」
それは真紅の弾丸。
一方、飛び去ったアンノウンは、燃え盛る火の玉ことウリエルに執拗なまでに追い掛け回されていた。
絵面は逃げ回る妖精と追いかける炎の精霊そのまま。
ウリエルは智欲の大罪相手に小細工は通用しないとの結論にでも至ったのか、最初から手加減抜き最大火力のパワー勝負を挑んできた。
そしてその判断はおそらく正しい、が、もしもこの場に勇者と呼ばれる人種が居合わせたなら、どちらを助けるか訊いてみるのもいいかもしれない。
まあ、まず間違いなくウリエル討伐で決定だろう。
彼ら二柱の相性は極端に悪く、アンノウンがブースターから放出した紙片を、ぴったりと後を追うウリエルがそのほとんどを焼き尽くして回っている。
ウリエルがミサイルポッドよろしく大量に繰り出す炎を、こちらも負けじと炎の紙片で相殺し続け、敵の懐へと飛び込む。
ブースターの炎を舞い踊らせて空中での近接戦闘を挑むアンノウン。
ナイフ二刀の斬撃の合間に身を翻す。
回転機動中ブースターの右上の一基が沈黙し、ページがめくられて直後噴出すバーナー攻撃がウリエルの顔を焼いて目隠し。
瞬間物理、非物理を問わない全属性紙片による槍状串刺し攻撃。
身体の各所に属性違いのダメージを与え、弱点属性を見抜く。
ついでに心臓には治癒不可の傷を負わせる宝具、ディルムッドの黄槍『ゲイ・ボゥ』を投擲。
しかしこれは素通りの不発。
結果物理属性の刺突、斬撃は極めて効果が薄く、半端な宝具では鉄パイプと大差なし。
特に顔面目掛けて放った炎槍はひと呑みに喰われた。
やはり冷却系属性が一番効果ありだろう。
また、このドッグファイトの最中にM60マシンガンでの一斉射撃を行うものの、これもさしたる効果は認められず、純物理攻撃はもちろん、魔力付与も同じく半端な威力ではまるで意味を成さないらしい。
おそらくは肉体派の根性野郎なのだろうと推測される。
やるなら大技を仕掛けるか、欠落のイメージを魂にまで叩き付けるような概念打撃か。
それとも、
「オラオラオラオラぁ!」
思考の途中でウリエルがミサイルのように噴射炎を吐く焔の弾丸を複数飛ばしてくる。
瞬間アンノウンは閃いた。ブースターを180度最大噴射。
紙片を大量に撒き散らす。
「重複call」
ミサイルといえばチャフだ。そしてここに一手仕込む。
ブースターの噴射音に紛れさせての発声。
数瞬後、思惑通りにミサイルは衝突、
「うおぉぁ!?」
そして…大爆発。
仕込んだ紙片は化け学知識。
化学式はC3H5(ONO2)3、すなわち爆薬の一種ニトログリセリンの紙片の開放。
この爆破のカーテン、「神の炎」相手では無論効果はないに等しい。
だが、カーテンをくぐる一瞬の目隠しぐらいには必ずなる。
故に、
「連続call『メタルアーム』『イチイバル』『ゲイ・ジャルグ』」
ゲイ・ボゥに続き、ケルト神話の英雄ディルムッドの「魔殺しの赤槍」を、ここに、差し込む。
ウリエルの体を包む炎のヴェールを、問答無用で真正面から射ち貫く。
キリキリと引き絞られる弦。
切り裂かれる爆炎。姿を現す炎の魔人。
邂逅する妖精と精霊。
鼻面に突きつけられた槍の穂先。
鳴り響くのは…弦の奏でる破裂音。
ミカエルは自分に向けて突き進む真紅の爪弾を全身を捻って回避。
左頬を裂かれて鮮血の華を咲かせる。
ウリエルは鼻先に突きつけられた魔殺しの赤槍を翼を噴射させて回避。
右頬を裂かれ、肩と翼を貫かれて態勢を大きく崩し、推力を失った。
局面は再び移り変わる。
第31部にて戦争終了予定です。




