10.こういうのも、悪くないな
船に乗って市街地まで下る。こうやって乗船賃を払って移動することさえ、アシュリーには初めてのことであろう。もっともシャルたち軍人は無賃で乗れるという保障がされているのだが、今日は一市民として振る舞うつもりであったから、きちんと金を払った。
船に乗ってからどことなくそわそわしているアシュリーは、隣に座っているシャルにすすっと顔を寄せて囁いた。
「しゃ、シャル。なんだかすごく視線を感じます……気のせいでしょうか?」
「気のせいじゃないだろ。お前のこと見て、『可愛い子だな』と思ってるんだよ」
「そんなまさか……」
「目が合ったからって笑いかけたりするなよ。ああいう輩は、『もしかして自分に気があるのでは?』とか妄想して暴走することが得意だったりするからな」
「え、えぇ……?」
不安そうなアシュリーの声にシャルは笑い、背もたれに預けていた身体を起こした。
「そら、降りるぞ」
「あ、はい」
停留駅に停船する際に揺れるのを知っていたシャルは、寸前にアシュリーの手を掴んだ。案の定アシュリーはバランスを崩してよろめいたが、なんとか態勢を立て直す。
今までに何度か、アシュリーには剣の指南をしたことがある。幼いころから男として騎士として生きてきたアシュリーは、確かに剣の腕がたつ。教えたことの吸収も早いし、シャルとしては教えやすい。しかし、ならばあれほど安定した武芸を扱うアシュリーが、『船の揺れで倒れそうになる』とシャルはなぜ予想できたのだろうか。実は、シャル自身も分かっていなかったりする。
(服装が服装だけに、動作も女らしく戻るのかね)
内心でそんなことを考えながらふたりは船を降りた。降りて目の前は、もう商店街である。平日ではあるが、人通りは多い。それを見てアシュリーが目を輝かせた。
「人が多いですね!」
「ま、王都で一番の商店街だしな。気を抜くとはぐれるから、気をつけろよ」
「はい!」
シャルと手を繋ぎながら、ふたりは人混みの中を歩く。大通りの両脇に並んだ屋台からは、香ばしい匂いが漂ってくる。女性向けの小物を売っている店もあり、アシュリーは嬉しそうにそれらを眺めている。
「シャル」
「うん?」
「なんだか今日の外出のこと、宰相がいやにあっさり承諾してくれたんですけど。何か根回しでもしたんですか?」
おいおい、デート中にする話じゃないだろ、と突っ込みたくなったが、シャルは肩をすくめて見せた。
アシュリーが疑問に思うのも無理はない。インフェルシア王国の宰相は厳格で知られ、アシュリーにもかなり厳しい人物だ。アシュリーの正体がばれることを何よりも懸念していたはずなのだが、なぜか今日の外出を許してくれたのである。
「あの宰相、じいさんの義理の兄なんだぜ?」
「え!?」
「本人たちは秘密にしているけど、宰相はじいさんの姉の旦那なんだとか」
シュテーゲルの家族は昔、事故でみなが亡くなった。シュテーゲルだけが生き残り、亡くなった姉の夫であり、事故現場には偶然居合わせなかった宰相のみが、彼の親族として残ったのだ。
事故後に宰相はシュテーゲルを自分の庇護下に置こうとしたが、それをシュテーゲルは固辞したのだ。シュテーゲルは騎士の家系の人間。宰相の家系に名を連ねては、騎士としての未来はほぼ断たれる。そのためシュテーゲルは一人で生きることを決め、宰相との関係も伏せることにしたのだ。
「関係は伏せてても、宰相はよくじいさんに会いに来たからな。俺も、その繋がりで面識がある」
「……そう言えば、親衛隊設立でシャルを隊長に据えることを強く望んだのは、宰相だったらしいです。……信頼されているんですね、シャルは」
「体よく押し付けられただけさ。――そんなことより、この話はやめにしないか。せっかくの休日気分が潰れちまう」
その言葉でアシュリーは我に返り、次いで赤面した。
「すっ、すみません……! つい……」
「ふうむ。……いいだろ、俺がお前に羽根の伸ばし方をたっぷり教えてやる」
シャルはにやりと笑う。休日でも堅さが取れず仕事関係の話しかできないなど、彼にとっては息苦しくて仕方がない。「やるときはやれ、遊ぶときは遊べ」というのは真理だと信じているのだ。
商店街でもひときわ大きな建物がある。もはや屋敷、豪邸といった様相だが、これがインフェルシア王都レーヴェンで最も大きな劇場である。上映しているのは、インフェルシア国民なら幼児でも知っている有名な童話を演劇化したものだったり、最近名の売れてきた脚本家が作った騎士物語であったりする。子供のころからシャルは両親や兄、レオンハルトとよくここへ来たが、来るたびに新しい演劇が行われているので、見すぎて飽きた、ということにはならない。それだけこの国の脚本家たちは想像力が豊かで、ぽんぽん新しい劇を作り出してくれるのだ。
「ええと、今は何をやってるんだ……?」
ロビーフロアに張られた告知をシャルは眺める。アレックスが少し背伸びをする。
「『救国の騎士』……騎士物語なんでしょうか」
「だな。あと十五分で開演か……どうする?」
「私は、見られればなんでも」
微笑んだアシュリーに肩をすくめ、シャルは『救国の騎士』のチケットを買った。ついでに飲み物も購入し、ふたりは劇場の中へ入った。
薄暗いホールには大量の座席があり、ほぼ満席に近かった。手近な席に座ったシャルは、先ほど買った冷たい珈琲を持って呟く。
「この演劇は、俺も見たことがないな……」
「じゃあ、新しい劇なんですね」
「ああ」
騎士とは、子供の憧れの対象だ。特に男の子は、子供のころに一度は「騎士になりたい」と願うだろう。そういう憧れ意識を煽るための『騎士物語』であるから、こういう演劇に登場する騎士は正義の味方で、無敵の存在である。
――実際はそんなもんじゃねえのにな、と内心で思いつつ、シャルは長い脚を組んだ。
やがて会場内の照明が落とされた。伴って人の声も消えていき、完全に静寂が舞い降りたとき、舞台の幕が上がった。いよいよ演劇が始まる。
一言で言うならそれは、悪者にさらわれた姫君を助けよう! というものであった。しかし助けに行くのは、タイトルの『救国の騎士』ではない。姫君の侍従で、冴えない男子三人組だった。――普通、攫われた姫を侍従が助けに行くかよ、という突っ込みは置いておく。
冴えない三人組の前に立ちはだかるのは、悪者の部下。あっという間に三人組は追い込まれ、絶体絶命になる。
「くそっ、騎士さまがいればこんなことには……!」
「残念だったな、頼りの騎士はここにはいないぞ! さあ、くたばれ!」
「ひいっ!?」
『――待たせたな!』
威勢の良い声が響いた。シャルは珈琲を口の中に含む。
(成程、美味しいところを救国の騎士とやらがかっさらっていくわけか)
シャルの考え通り、舞台上にひとりの男が現れた。『救国の騎士』である。騎士は観客に向け、高らかに名乗りを上げる。
『我こそは、救国の騎士シャル・ハールディン! さあ悪党め、成敗してくれる!』
「ぶふっ!?」
シャルは口に含んでいた珈琲を吹き出した。アシュリーが慌てて身を乗り出す。
「だ、大丈夫ですかシャル!?」
「げほげほっ……い、いまなんつった……!?」
シャルとアシュリーのやりとりは、幸か不幸か、英雄の登場に沸き立った観客たちの声でかき消された。子供たちの中には「シャルー!」と舞台に手を振っている者もいる。
どうやら、この演劇の「救国の騎士」とはシャル・ハールディンのことであったようだ。確かに、シャルが【ローデルの英雄】と呼ばれていることは民衆も知っている。だが、まさか演劇にまで名前が使われているとは。
「勘弁しろよ……」
シャルはずるっと座席に沈み込んだ。アシュリーが苦笑いを浮かべる。
「で、でも、それだけシャルが愛されているって証拠ですよ」
「顔も知らねえ相手から愛されたくないよ。ったく、勝手に人の名前を使って……しかも割と事実交じってるし……」
単調なストーリーながらそれなりに楽しんでいたシャルは、一気に脱力してしまったのであった。しかしアシュリーは、シャルの無意識の呟きに小首をかしげた。
「事実、交じってるんですか? どこが?」
「……ああ、いや。なんでもねぇよ」
我に返ったシャルは、小さく首を振った。
演劇が終わり、ふたりは早々に劇場を出た。顔を見られてばれるということはないだろうが、用心に越したことはない。元々、この手の厄介ごとは御免なのである。
座席に座りっぱなしで凝ってしまった首をさすっていると、横合いから声がかけられた。
「これはハールディン准将。『救国の騎士』の演劇はいかがでしたでしょうかな?」
アシュリーが驚いて振り返る。シャルもそちらを見やり、眉根を寄せた。
「……犯人はてめぇか!」
「犯人だなんて、人聞きが悪い。私は准将の素晴らしさをもっと知って頂こうと――」
「余計なお世話だ!」
そこにいたのは、シャルの部下であるアンリ・フリュードルだった。騎士の制服ではなく、きっちり燕尾服を着ている。アシュリーが目を瞬いた。
「アンリ……!」
「こんにちは、アシュリー様。今日は良いデート日和ですな」
公衆の面前で殿下と呼ばなかったのは良いとしても、余計な一言を付け加えるのがアンリである。いまいち状況を把握できていないアシュリーに、シャルが溜息交じりに説明した。
「……この劇場の劇場主と、このアンリは昔から仲が良いんだとよ。で、脚本とかそっち系が好きなアンリは、時々自分で脚本を書いてこの劇場に納めているんだ」
「そ、そうだったんですか」
「これで俺の名前を平気で使えた訳が分かったぜ」
憎々しげなシャルに、アンリは自慢の顎鬚を撫でる。
「准将の名を入れれば、観客数が一気に増えるのですよ」
「俺を広告塔にするな!」
「ははは、失礼いたしました。過去十四度分のお詫びも込めて、こちらを差し上げますよ」
「俺がいない五年の間に、十四回も同じことしてやがったか……!」
アンリが差し出したのは、二人分の食事券だった。
「向こうの大通りの店で使えます。ささ、遠慮なさらずに」
「誰が遠慮なんかするかよ」
シャルは断言し、その食事券を受け取った。アシュリーが微笑む。
「有難う、アンリ」
「滅相もございません。では、どうぞ楽しんできてくださいませ」
食事券についている地図を見て場所を把握したシャルは、アンリに指を突きつける。
「アンリ、罰として明日、俺と組み手を組んでもらうからな。覚悟しろ」
「おおっと――こりゃまた、死を覚悟しなければなりませんなあ」
台詞ほど焦っている様子もなく、アンリはシャルとアシュリーに頭を下げてふたりを見送った。劇場の前から立ち去ったシャルは時刻を確認する。
「そろそろ昼だな。折角だし、これに行くか」
「はい。……あの、アンリをあまり叱らないであげてくださいね? 私、すごく楽しかったですから」
「分かってるよ。せいぜい峰打ちで勘弁してやる」
「だ、だから手加減を……」
アンリから渡された食事券の店は、劇場から少し離れた場所にあった。カフェテリア形式になっており、入り口にいた店員に食事券を見せるとすぐに通してくれた。あの券一枚で、一回分の食事が無料なのである。まったく、太っ腹である。
通されたのは室内ではなく、屋外のテラスだった。今日の気温は高いが、木の陰になっているので体感温度は低い。ベストポジションだ。とりあえず席に着いたシャルは、ちらりとアシュリーの後ろに視線を送った。それに気づいたアシュリーも後ろを振り返ったが、背後には同じように食事をしている人々しかいない。
「……先に飲み物でももらってくる。何が良い?」
「さっき飲んだばかりですから、水でいいですよ」
「タダなんだから贅沢すりゃいいのに。分かった、ちょっと待ってろよ」
シャルは店内に入っていった。その後ろ姿を見送っていると、不意に今の今までシャルが座っていた席にひとりの青年が座った。アシュリーが驚いて咄嗟に椅子を引く。が、アシュリーの背後にも別の男が立っていた。
それは先ほどまでアシュリーの後ろに座っていた客だった。
「お嬢ちゃん、今日は一人かい?」
目の前に座った青年がにやにやと笑みを浮かべる。アシュリーは気色悪さに身体を震えさせた。
「ちっ、違いますっ……!」
「一人なんだろ? ちょっと俺たちと一緒に来ないか?」
男がアシュリーの手を掴もうと腕を伸ばしてくる。アシュリーが逃げようとしても、後ろの男がいて逃げられない。どうしよう、とパニックに陥ったとき、どん、とテーブルの上に水の入ったコップがふたつ置かれた。男が驚いて手を引っ込める。
「彼氏がいなくなった瞬間に『ひとり?』って話しかけるのは、ナンパの常套手段だよなぁ」
「う、うげっ……」
「俺の女に手を出すな。で、とっとと失せてくれないかな。俺たち、腹減ってるんだよね」
飲み物を異常な速さで持って戻ってきたシャルは、むしろいつもより優しげな言葉遣いで男たちを圧倒する。アシュリーを連れ出すことを断念した青年は渋々立ち上がったが、去り際に捨て台詞を残すことは忘れていなかった。
「ちっ……ひ弱そうなナリして、偉そうに」
シャルは別に、この程度の台詞に腹を立てるほど器量は狭くない。平然と受け流そうと思ったのだが、上空から黒い塊が落下してきた。その黒い塊は立ち去ろうとした青年の顔の前でばっと広がり、ばさばさと男の顔をはたく。
「いてっ、うわ、うわっ!?」
青年たちは手でそれを追い払いながら、走って逃げ去った。ナンパ二人組を追い払った勇者は鷹のヴェルメであった。満足そうに旋回し、シャルが差し出した腕に留まる。
「まったく、美味しいところを持っていきやがって」
ヴェルメはつんと澄ました顔である。シャルはヴェルメを傍の木に移して、アシュリーを振り返った。
「大丈夫だったか?」
「は、はい……シャルは、分かっていたんですか?」
「ああ。だからわざと席を外したんだ。実行させてから蹴散らすってのが手っ取り早いからな」
シャルはそう言ってから、ぽんぽんとアシュリーの頭を撫でた。
「……怖い思いさせて、悪かったよ」
優しく微笑むシャルの顔を見上げて、アシュリーは真っ赤になった。そして首を振る。
「いえ……ところでその」
「ん?」
「『俺の女』って、どういう……」
「それも決まり文句なの」
シャルはそう言って、アシュリーを立たせる。
「料理を取りに行こうぜ。お前危なっかしいから、俺も一緒に行く」
「もう、不意打ちじゃなきゃあんな人、投げ倒せましたよ」
「やめろ、お嬢様がそんなことするな」
二人はそう言って、店内に入っていった。
★☆
午後もふたりは街を散策した。水の都と呼ばれるに相応しい巨大な水族館に入って涼み、美味しそうなお菓子を食べる。ぶらぶらと下町のあたりも散歩し、シャルの実家である薬舗にも行ってみた。見るものすべてがアシュリーには新鮮だったようで、絶えず楽しそうにしていた。
最後には商店街に戻り、女性向けの雑貨屋に寄った。こんな小物よりも美しい装飾品を、アシュリーは大量に見ているはずなのに、それでも心ときめいてしまっているのは、やはり女の子の性だろうか。女性向けの店に入るのを躊躇うような男ではなかったので、シャルものんびりと買い物に付き合ってやっている。事実店内には、そういう恋人が多いようだった。
アシュリーはおもむろに小さな髪留めを取り上げた。綺麗な赤い花の装飾が取りつけられている。しかし彼女はすぐにそれを棚に戻してしまった。
「戻しちまうのか?」
「え……? あ、はい。綺麗だとは思いましたけど、髪が短い私にはつけられませんから」
「そんなことないんじゃないか? いいワンポイントになると思うけど」
しかしアシュリーは苦笑した。
「普段の私が髪留めなんてつけていたら、おかしいじゃないですか」
「……」
確かに、王太子である「男」として振る舞っている常に髪留めをしているのは妙だろう。シャルには気に入らない考えだったが、こればかりはどうしようもない。
隣の棚に視線をやったシャルは、そこに陳列されている商品を手に取った。
「なあ、じゃあこれはどうだ?」
シャルの掌の上に乗っていたのは、赤い耳飾りだった。それほど派手ではなく、嵌めこまれた赤い宝石の中には、うっすらと先程アシュリーが持っていた髪留めの花と同じ模様が刻まれている。これならば一見すれば女物には見えない。
「わ、綺麗……シャルって、案外センス良いんですね」
「案外は余計だ」
じっと耳飾りを見つめるアシュリーに、シャルは尋ねる。
「気に入った?」
「はい!」
「じゃ、これは俺からのプレゼントってことで」
さっと踵を返して会計に向かおうとしたシャルを、アシュリーはぎょっとして引き止めた。
「えっ、ど、どういうことですか?」
「今日のデートの思い出」
あっさりと答えたシャルに、アシュリーは赤面する。それから思い出したようにまたシャルを追いかける。
「あのっ、値段見てなかったんですけど……!」
「お嬢様が値段なんか気にするんじゃねえよ。それに、俺はそこまでひもじい思いはしてないからな、おかげさまで」
結局シャルはその耳飾りを購入し、アシュリーに差し出したのだった。
「有難う御座います、シャル……! 私、これ大切にしますね」
その時のアシュリーの嬉しそうな顔といったら。シャルもつられて笑ってしまうように輝いていた。
明日からはまた、アシュリーは男としての生活に戻る。それでも、束の間の休息に今日という日がなったなら、シャルとしても良いことだ。
朝待ち合わせた場所と同じ、王城の城門前まで戻ってくる。既に太陽は赤く染まり、地面に長い影を作り出していた。アシュリーは何度もシャルにお礼を言い、笑顔で城の中へ戻っていった。その姿を見送り、彼女の姿が完全に見えなくなってから、シャルはポケットに突っ込んでいた左手を出し、その掌に視線を落とした。
アシュリーとずっと繋いでいた手。最初こそ控えめだったが、午後にもなればごく自然に繋いでいた。本当の恋人のように。
「――今日だけの恋人、今日だけのデート、か。大それたことを平気で言ったもんだ」
シャルはやれやれと首を緩く振った。
先日のパーティーでアシュリーがぽつりと呟いた「レオンは渡せない」という言葉。それをレオンハルトに打ち明けたら、彼は大笑いして「そういう意味じゃない」と言った。まったく不愉快だ。
――ああそうか。俺はレオンハルトに妬いたのか。
ぼんやりとそれを自覚しつつあったが、あえてシャルはその気持ちを否定した。アシュリーはこの国の姫君で、後々は王となる。――身に過ぎる欲望は己を滅ぼすと、シャルは知っていた。あくまでもシャルは彼女の臣下であり続けなければならない。それをシャルは己に課し、その場を去った。




