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7話目

気のない路地を歩く。今までいた街では顔が知られていたのか、治安が良かったのか分らないが襲われることはなかった。


「へっへっへ、坊主。有り金置い来な」


俺の目の前には17、8歳の素行の悪そうな2人組がいた。2人とも武器は持っていないが身なりは良く高そうな服を着て、その顔と頭の悪さは十分に凶器に等しく感じる。


「えっと…」


俺はポケットから換金忘れの魔石を取り出した。


「へえ!魔石か!」


「これなら十分に遊べそうだな!」


冒険者にとって端金に感じるホーンラビットの魔石でも街の中で暮らす人にとっては十分に魅力的な金額らしい。


「ほら、受けとりなっ!」


俺は魔石を片方の男の顔面目掛け投げつけた!


「!!目が!目がー!」


どこかの大佐がいいそうなセリフとアクションをしてくれるとは…ナイスセンスだ。


「てめぇ!」


残った1人が殴りかかってきたので腕を掴んで背負い投げ。


「ックァ!」


倒れた男の跨り顔面を殴りつけた。


「お前が!ちゃんと!謝るまで!殴るのを!やめない!!」


「ま!ッグ!ごめ!んが!やめ!で!」


殴りつける度に謝罪の言葉が止まるからダメなんだよ。最後まで謝らないと。


っと、気が付けば前歯が無くなったこの男は気を失ったようだな。残るは…


大佐(偽)がいた場所を振り向くが、そこにはだれもいなかった。…仲間を置いて行ったな…


まぁ、いいや。


俺は拳に着いた血を男の上着で拭うとそのまま路地を進んだ。


別に迷って何かいないんだからね!


その後も、何組かと肉体言語で熱い討論会をして宿まで辿り着く事ができた。


夜も遅い時間の宿では受付にいる男性に鍵を貰い部屋でゆっくりと休んだ。


翌日


昨日までの疲れを癒す為に今日と明日は休みになった。いつもより遅い時間に食堂に行くと見知った顔は無く一人で朝食を済ませた。


今日は何をしようか…


食後のお茶を飲みながら考えた結果、どこに何があるか全く把握していないことに気が付き街を散策する事に決めた。


ゲームだと、こういう時は宿の女の子の買い出しを手伝ったりするんだろうな。


食堂を見回すと年寄り夫婦とその子供夫婦(中年)で宿の経営をしているらしく若い女の子はいなかった。


一人さびしく宿を出て街の中を散策した。


武器屋と雑貨屋を覗き冷かしながら歩く。隣に女の子とかいれば最高なんだろうな。素敵な腹筋の彼女募集中。


昼になり、公園の中でホットドックを売る売店があったのでそれを2個買う。ついでに果実水も。


ベンチに座りホットドックを食べながら午後の予定を考える。


とりあえず、必要最低限の場所はわかったから宿で筋トレかな?


そんな事を考えているとコチラヘ10数人の集団がやってきた。


先頭にいるのは…大佐(偽)か。その後ろには冒険者なのかチンピラなのか区別が付かないような人種。それぞれの腰には剣や斧があった。


なんていうか、世紀末でアベシされる人っていえば分るかな?


「おい!おまえ!昨日はよくもやってくれたな!この俺様を舐めるとどうなるか教えてやる!お前たち!遊んでやれ!」


「へっへっへ、まかせてください。アンディ坊ちゃん」


なるほど、大佐(偽)はアンディというのか。覚える気はないけど。


「坊主に恨みはないが、これも仕事なんでね」


そういうと数人の男が殴りかかってきた。が、動きに無駄がありすぎ&遅い。こんなんじゃオーガと闘えないぞ?


俺は男たちの攻撃を避けながら一人ずつ丁寧に攻撃した。主に股間を蹴り上げて。


地面には股間を抑え悶える男たち。見ていて痛々しい。男にしか分らない痛みだ。


「おまえ!こんなことをしてただで済むと思うのか!」


「いや、多人数を相手に一人でやるなら仕方ないと思わないか?一撃必殺が基本だ」


そう、多くの魔物を相手にする時は一撃で仕留めないと大変な事になる。手負いの獣はこちらの予想外のパワーを発揮するんだ。


「ック!えーい、、全員剣を抜け!殺してしまえ!あとは俺様がもみ消す!」


アンデ―がそういうと残った男たちは腰の剣を抜いた。


「っへっへっへ、一度人を殺してみたかったんだ」


危険な言葉を言う者もいる。ヤメテ、獲物は俺じゃ無くエンデーにして。


…仕方ない。この手は使いたくなかったんだがな…


「剣を抜くということは命の取り合いなんだね?自分や仲間、後ろにいるエンデーがどうなっても文句言うなよ?」


「ふん、強がり言うね!おまえたち、コイツを殺せ!」


男たちは俺に向かって武器を振り上げ襲ってきた。


俺は…後ろを向き逃げだした。


「え?ま、待て!追いかけろ!」


エンズーの言葉で男たちが追いかけてきた。勘弁してほしい。公園から出ようとしたが数人の男たちが待ち構えていた。


クソ!これじゃあ逃げられない!


俺は円を描きながら公園内をひたすら走った。騒ぎを知った誰かが衛兵を呼んでくれると願いながら。


しかし、その願い叶うことはなかった。


何時までたっても衛兵は現れず、俺を追いかけていた男達のスタミナが切れ少しずつ人数を減らして行った。


これで逃げ切れると思ったら股間を蹴り上げた連中が復活し再び追いかけっこに熱が入った。


暫く走り続けるが、俺を追いかけている男たちも何人かのグループに分かれローテーションを組みながら休憩していた。


俺は一人で走り続けているにズルイ。


「トラ!何してるんだ?!」


公園の柵の向こうから見ていた観衆の中にいたのはジョンだった。


「ジョン!助けて!」


「待ってろ!衛兵を呼んでくる!」


ジョンは俺を追いかけている人数を見て直ぐに衛兵を呼びに行った。


それから暫く走り続けるとジョンは十数人の衛兵を連れて戻ってきた。


「アンディ様!これは一体何事ですか?!」


「ふん!この俺様に無礼行ったんだ。この程度当然だろう」


「ですが、街の中での抜刀はいけません。すぐにあの者達を引かせて下さい」


「…わかった。おい!おまえたち、引きあげるぞ!」


「…この事はお父上にご報告させていただきます」


「フン、好きにしろ」


その言葉を言うとウェンズ―は男を連れ帰っていった。


「助かったよ、ジョン」


「ああ、トラは何故追いかけられていたんだ?」


俺は昨日の夜の事をジョンに説明した。襲われて返り討ちにしたと。


「そうか、逆恨みか…。おそらく、この後も何度か襲われるかもしれないな。常に武器は持っていたほうがいいな」


「ああ、俺もそう思う」


「旅費が溜まり次の街を目指すまでの我慢だ。時期に慣れるさ」


「…人ごとだと思って」


「人ごとだからな」


俺達は話を切り上げて宿へ帰った。もう面倒は勘弁という事で直ぐにベットに直行した。


それから数週間、何度か絡まれたが冒険者としての格は俺の方が高く襲ってきたチンピラを尽く返り討ちにした。命は取らないが骨の一本くらいは我慢してほしい。


一か月もすれば、俺にチョッカイを出す人はいなくなった。さらに街の治安も良くなったと衛兵から感謝されてしまった。


まぁ、冒険者崩れの連中でも衛兵よりも強かったりするからな。手だし出来ない荒くれ者を退治したと言われても嬉しいのか嬉しくないのか微妙な感じだ。


俺達はヤ―クの街で半年過ごした。ここを拠点に付近の魔物退治&魔石稼ぎで過ごした。


その半年の間は変わった事は無く狩りと休みの繰り返しだった。


そんなある日


「みんな聞いてくれ、俺達4人で頑張ってきたがそろそろメンバーを追加しようと思う」


ジョンが全員そろっている朝食の席でそんな事を言いました。


「俺は何でもいいぜ?あ、女の子なら大歓迎だ」


カロンの頭の中はピンク一色だな。


「んー、酒が飲めれば何でもいいや」


これはアル中のログ。今日も朝から飲んでる。


「ジョン、メンバーの追加は大歓迎だが当てはあるのか?」


「トラ、そこは大丈夫だ。俺の知り合いとその弟子がこの街に来るらしいんだ。その弟子を鍛えるために仲間に入れてほしいと連絡が来たんだ」


「なるほど。その弟子はどんな人なんだ?」


「ああ、大楯のファイターだ。これで、前衛2人、後衛2人揃う。あとは時期を見て中衛か遊撃が出来る人を入れようか考えている」


さすがジョン、安全に安全を重ねたメンバー選びだな。


「それなら俺も賛成だ」


「そうか、全員賛成だな。その2人は来週にも来るらしい。俺達は俺達で実力を上げていこう」


「「「おう」」」


ジョンの言葉に俺達が返事をする。これぞ男の友情パワーだな。


「それじゃあ、今日は馬車で森の奥へいくぞ!」


ジョンの言葉で遠出、野営の準備も行いながら俺達は準備を始めた。


準備と言っても馬車を預けてある馬車屋までの間に干し肉や日持ちのする物を買っただけなんだけどね。


そのまま俺達は馬車に乗り森の奥へ入って行った。


このヤ―クの街から周辺にいるのはホーンラビット、ゴブリン、オーク、オーガと4種類が日帰りで討伐可能な地域にいて、キラービー、リザードマン、サーベルタイガーと続いている。


基本的にはそれぞれのいるテリトリーから出ることは無くホーンラビットの生息地にオークやオーガなどが現れることは確認されていない。


俺達はキラービーを狩りに来ていた。こいつは上等な蜂蜜を巣で造っているが、キラービーの凶暴性とリスクを考えるとまだ、リザードマンの方がマシと考える人が多かった。


俺達は一週間の内3日間だけ狩りを行い残りの4日はそれぞれ別行動をとっていた。


まぁ、カロンは娼館、ログは飲酒、ジョンは読書とそれぞれが有意義に過ごしていた。


俺か?俺はもちろん筋トレですよ。筋肉があれば大抵の事は解決できるといわれているからね。


おっと、話はずれた。狩りに行く3日の内、オークやオーガを狩るのが1日でキラービーを狩りながら蜂蜜採取を2日間に掛けて行っていた。


馬車があるから行きも帰りも楽なんだよ。


その日もいつも通りに全員無事に終わると思っていた。まさか、あんなことが起きるとは思っていなかった。


順調にキラービーを狩り蜂の巣の回収も順調だったが、俺達は気が付けば帰るべき時間を大幅に過ぎている事に気が付かなかった。


「すまない皆。今日はここでもう1泊だ」


ジョンの言葉に素直に従う俺達3人。


キラービーは夜は行動をしない為、オークやオーガのいるテリトリーよりも格段に安全な野営ができるのである。まぁ、それでも見張り番は付けるけどね。


見張りの純番は俺、ジョン、ログ、カロンだった。


俺は焚き火を常に一定も火力にしながら周囲を軽く警戒する。キラービーは肉食性で狼や他の動物はキラービーの餌になる。だから警戒は簡単な物になる。


俺の時間が過ぎジョンを起こす。


「ジョン、時間だ」


「…ん?ああ、分った…」


ジョンが馬車の荷台から降り俺がジョンがいた場所に入り睡眠をとる。一人2時間半ほどの時間だが、見張りは大切。敵は魔物だけとは限らない。


俺達は一度野営中に盗賊からの襲撃を受けている。盗賊も運が悪く見張りをしていたのはジョンだった。


盗賊が来るなり全員を起こして寝た振りで油断を誘う。奇襲していたつもりが奇襲されていては立て直すのには時間がかかる。俺達は山賊が立て直す前に全てを倒した。


そんな事を考えていたら寝ていた。


「…!…!トラ!」


「んーなんだよ?」


「起きろ!サーベルタイガーだ!」


俺はその言葉で跳ね起きた。枕もとに置いてあったショートソードと楯を装備し馬車から降りると2メートル程の大きさのサーベルタイガーが1匹此方を警戒しながらゆっくりと近づいてきた。


「グルルルルル」


「ジョン、勝算はあるか?」


「…全滅するほうが可能性は高いな」


「リーダー、どうする!?それに居眠りしていたログの野郎に制裁しなきゃ我慢ならねぇ」


「カロン、落ち着け。まずは無事に逃げてからログの事は考えよう。まずは生き残る事だ」


「わかった、リーダー。作戦はあるか?」


「…馬を囮にしてその隙に走って逃げる。蜂蜜や荷物を諦めれば命は助かるはずだ」


馬は馬車のそばにある木に紐で結ばれていて怯えているが逃げる事が出来ないでいた。


「全員、ゆっくりと馬車から離れろ。いいか、ゆっくりだぞ」


ジョンの言葉で俺達はサーベルタイガーを警戒しながらゆっくりと後退していった。


「あッ!」


カロンが木の根に躓き倒れてしまった。俺はカロンの声につい後ろを振り返り確認してしまったが、慌ててサーベルタイガーを見直すと目の前に大きな口と鋭い牙があった。


「ッグ、あぁ!」


俺の胸に大きな牙が刺さり空気が抜けて行く。この感覚は二度と体験したくないな。と思いながらジョンを見ると心配そうにみていた。


「ジョン!逃げろ!ゴハッ!」


俺が叫ぶとサーベルタイガーは顎に力を入れ俺の胸を潰すと同時に口から血が逆流した。


「済まない!トラ!」


ジョンはそういうと呆けているカロンとログを連れその場から遠ざかった。


俺はその後ろ姿を見ていたが、出血が酷く意識が遠のいていった。



俺は気が付くと天国にいた。


天国と言っても死んだのではなく、俺の周りには4頭の可愛いタイガーの赤ちゃんがヨチヨチ歩きしながら俺の周りを回っていた。


可愛いなーモフモフしたいなー


と、思ったら体中を噛みつかれた。いくら赤ちゃんとは言っても相手は魔物。肉が噛み切られ骨が折れる感覚がはっきりわかるし、逃げようにも小さいのにすごい力で逃げる事が出来なかった。


仕方ないと身体強化をしようとしたが、一瞬の集中もできない痛みで強化が出来ず本当に逃げらなかった。


俺は何度も喰われては再生し、再び喰われるという気が狂いそうになる無限とも思えるループに嵌まっていた。


再生する度に少しずつ大きくなるサーベルタイガーの赤ちゃんに対して可愛いとかいう思考は一切なかった。


あれから何度も何度も何度も何度も齧られ弄られた。森の中で餌にされ続けていたので青々していた木々はいつの間にか刈れ森は白い雪に覆われ、再び木々に青い葉が付き始めた。


4頭のサーベルタイガーの大きさが1メートル50センチほどになった頃、俺の骨をむき出しにした体に誰かが近づいて来るのがわかった。


眼球は無かったが鼓膜は大丈夫だったので会話が聞こえた。


「冒険者か村人か…」


「こうなっては助かりませんね」


「そりゃ見ればわかるさ」


「この人のお陰で俺達は小型だけどサーベルタイガーを一気に4匹仕留める事ができたんだ」


「そりゃ食事中に奇襲したんだ。いくら格上の相手でも頭を貫けば楽勝だ」


「…この人の遺品はあるかしら?」


「いえ、周りには見当たりませんでした」


「そうか、せめて亡骸だけは埋めてやろう」


彼らの会話は聞いていたが脳が理解していなかった。


痛みとシャットダウンするために自意識を深く心の中に閉じ込めていた。


土を掘り返す音が聞こえると俺の体は地面の穴に入れられ土が掛けられた。


地面越しに聞こえていた足音が遠ざかり半日もすると俺の体は再生された。


再生速度は自分である程度は調節でき、何度も齧られ続けていたので最低速度での再生をしていた。


考えて欲しい、再生されながら喰われる痛さ、怖さ。終わりのない苦痛。


俺は無意識のうちに再生速度を最低にし1日1回の痛さをどうにかする事だけを考えていた。


「俺☆復活っ!」


地中から飛び起き両腕を天に突き刺し叫ぶ。


やっとあの痛みから解放された!ヒャッホウー!!


…ってここドコだ?


森の中は判るが…、あ、俺全裸だ。


視線を下げると見慣れたジュニアが茂みの向こうでハローしていた。


こんなんで快感を感じるなんて…




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