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第六話

俺達が商隊の護衛を開始して、えーっと何日経ったかな?3日目までは数えてたんだけどな…


護衛の方は順調だ。魔物や盗賊が現れたが暴風旅団が始末してくれていたらしい。


野営はジョンとカロンが率先してやってくれた。ログは新しく買った道具袋から何本も酒を取り出していた。


ジョンも呆れ果てていた。今までの報酬は全て酒代に消えたと思われる。明日の生活費を考えない漢らしい生活だ。


俺は夜の見張りを率先して行いパーティー、商団に貢献している。見張りをしながら筋トレをする事は忘れない。昼間の移動中は寝ていても仕方がない。昼間は寝てるか筋トレをしているかのどちらかだった。


そんなこんなで、多分10日くらい進んだ頃の昼間にヤ―クの街まで半分の所にある街が見えた。名前は聞いたが忘れてしまった。


「みんな、今日はあの街で一泊だ。出発は明日の昼ごろを予定している」


「了解、リーダー」


「わかった、ジョン」


「…」


ログは…寝ていた。ダメだこいつ。


今までいたアリアスの街と比べると門は少しボロイ感じがする。暴風旅団を先頭にして商団、俺達と続いた。


そのまま商団に着いて行くと1軒の宿に辿り着いた。周りの宿に比べると建物は大きく歴史を感じさせる佇まいだ。簡単に言うとボロいんだよ。


馬車を中庭に止め皆と一緒に宿に入った。割り当ては暴風旅団で1部屋、商人たちは個室、俺達は20個ベットが並んである大部屋だった。


「まぁ、仕方ないな。俺達は何も仕事してないからな」


「だけど、リーダー!」


カロンがジョンに言うが、他の部屋が満室なら仕方ないと思う。


「カロン…晩飯は商団持ちなんだ。いっぱい飲もうぜ?」


珍しくログがカロンを慰めたと思ったら飲むことしか考えてなかったのか…


「全員、日が暮れるまで自由行動だ。日が暮れる前にこの宿の1階食堂に集合だ」


全員が頷くと部屋を出て行った。


ジョンは本屋に行くようで宿の人に場所を聞いていた。


ログはカロンを連れて足早に宿を出て行った。ログが先に歩くなら行き先は酒屋だな。カロンなら娼館だ。


俺は、一人冒険者ギルドへ来ていた。


ここのギルドはアリアスの街のギルドと大きさは変わらず建物の中のレイアウトも同じだった。


受付で近くの魔物の状態を聞くが、ホーンラビット、ワッドドックは同じだったけど、ゴブリンが大型のホブゴブリンになっていた。大きさは1メートル50センチくらいと今までの大きさの倍になっていた。


俺はこの移動している間、まったく戦闘をしていなかったので単純に体を動かしたかった。


街を出て街道を離れ森へ向かう。すぐにお目当てのホブゴブリンに遭遇した。


汚れた緑色の皮膚で鉄っぽい何かの鎧を着ていて錆びてはいないがあんまり切れなさそうな剣を持っていた。


「ギャッギャッギャーー!!」


「うるせぇ!日本語でしゃべれ!」


俺は騒ぐホブゴブリンに向かって走りながら剣を投げつけると、しゃがんで俺の剣を避けた。


うむ、予想通りの避け方だ。


俺は屈むホブゴブリンの顔面に膝蹴りを当て、そのままホブゴブリンの背中に足を掛け上空に飛びあがった。


身体強化をせずに2メートル以上跳んだこと驚いたが、俺を見失っているホブゴブリンの頭を向かって踵を落とした。


いわゆる前方宙返りをしながら踵落としになったが、上手く決まりホブゴブリンは光になって消えて行った。


投げた剣を回収しホブゴブリンの魔石を拾う。ゴブリンよりは大きく、オークよりは小さいってところかな?


…よし!ホブゴブリンは楽勝だったな。…ん?あれは…?


森の奥に人影が…。目を凝らしてよく見るとボロボロになった服を着た血だらけの男だった。


「おい!あんた大丈夫か?!」


俺は叫びながら男に近づいて行った。


「あ~う~」


唸り声を上げながらフラフラして歩く血だらけの姿。初めてゾンビを見た。


「あ~」


右腕と半分しかない左腕を伸ばし俺を掴もうとしてきた。


俺は腰に挿したショートソードを抜きゾンビの両腕を切り落とした。が、ゾンビはそれでも歩みを止めなかった。


今度は首を狙い力を込めて振り抜いた。肉と骨を切る感覚…。ゾンビの首は宙を舞った。そして、その首は地面に落ちる前に光になって消えた。


「う~あ~」


森の奥から2体のゾンビがこちらに歩いてきていた。


俺はそいつらに駆けよりそれぞれの首を一太刀で切り落とした。


「あ~」


さらに4体のゾンビが現れた。またかよ!


「クソッ!あと何体いるんだ?」


4体のゾンビと距離を取り森の奥をよく見てみると、数十もしかすると百に近い数のゾンビが彷徨っていた。


「どこのゾンビ映画だよ!」


多勢に無勢、このままでは噛まれてゾンビになってしまう!


俺は身体強化を使い街へ走って逃げ…報告の為に街に向かった。


風のように森、草原と走り街道に出た。後ろを振り返ってみるが、ゾンビは付いてきていなかった。


よし、あのゾンビは一部の映画みたいに走るタイプじゃないのか…


暫く街道を歩くと門が見えてきた。門には数人の衛兵が暇そうに立っていた。


「すみません、森の奥でゾンビが大量にいたのでとりあえず報告を」


「そうか、たしかに時期的にそろそろだな。誰か、ギルドに依頼を出しに行ってくれ」


衛兵の1人がそういうと若そうな衛兵が冒険者ギルドに向かって走って行った。なんだか、対応が慣れてる感じがする。


「あの、どういう事でしょうか?」


「ああ、君はこの街の者じゃないのか。…君が見た森の中に死者の迷宮という洞窟がある。その洞窟からゾンビが発生している。なんどか洞窟を調査したが、ゾンビが発生している原因がわからず、洞窟から溢れたゾンビをギルドに依頼して合同パーティーの討伐しているんだ。まぁ、そんなに強くないが大きな魔石が取れるから結構割の良い仕事といわれているぞ」


ふむ。話からすると、ゾンビだけど死者が生き返ったわけではなく、魔物的な感じか。


「そうですか、ありがとうございました」


俺は換金所へ向かいカードに入金してから宿へ向かった。空を見上げると太陽はまだ高く、2時か3時といったところだろう。約束の夕方にはまだ少し早いな。


宿の食堂には人はほとんど居なかった。…いや、すでに出来あがっているログと商団の人たちがいた。


少し離れた所でジョンが読書をしていた。ウルサイ、いや、賑やかな連中とは少し離れてジョンの対面にすわった。


「トラか…」


「ジョン、森の奥にある死者の迷宮は知ってるか?」


「ああ、話には聞いたことがある。ゾンビが発生する洞窟だろ?」


「そこからゾンビが溢れて森を徘徊してた。衛兵に伝えたら、合同パーティーでの討伐依頼を出すらしい。戦った感じでは俺が余裕で勝てたから個別に闘っても問題ないと思う」


「…それで?」


「それだけだ。参加するかしないかはジョンに任せる。俺では判断できない」


リーダーはジョンだ。俺はジョンの指示に従うだけだ。


「…参加はしない。今は護衛の最中だ。出発も明日と決まっていてゾンビの討伐で怪我でもしたら信用問題になる」


「了解だ。ジョン」


俺はジョンが的確な判断をして、理由も話してくれたので素直に納得出来た。


すると、ドタドタと誰かが走ってくる音が聞こえた。


「おい!うまい話があるぞ!」


その正体はカロンだった。


「カロン、落ち着け。その話はトラから聞いたが、俺達は不参加だ。今は護衛中だし、ログが泥酔していては危なすぎる」


ジョンはログを指さすと、真赤な顔をしたログが商人たちと仲良く飲んでいた。こいつ酒に溺れて死ぬんじゃないか?


「リーダー!ログを置いて行けば何とかなるんじゃないのか?!」


カロンも引き下がらないな…


「いいか、カロン。俺達は護衛の依頼でここにいるんだ。依頼の途中で別件で動くと信用問題になる。街の中が安全とはいえ、護衛に集中するべきじゃないのか?」


「うゥ…。わかったよリーダー…」


カロンは説得に応じてくれたみたいだな。その後、暴風旅団がやってきて全員で食事を終えるとそれぞれが部屋に戻り朝までぐっすり眠った。


ヤ―クの街まであと半分。俺達は暴風旅団と位置を変え先頭を行くことになった。


ヤ―クの街までは一本道で迷うことはないらしい。


今度は俺達が魔物や山賊を蹴散らす番だ。


街を出て数日は何にもなかった。本当に魔物の襲来もなく進めた。


俺達の気が抜けていた所にそれが現れた。


前方50メートル先に10人ほどの人が列をなして道をふさいでいた。


「山賊か?」


「そうだな。カロン」


俺の言葉にジョンは頷くとカロンを呼んだ。カロンは馬車の荷台から顔を出すと頷き、魔法を唱えた。


「カロンは右側を狙え。俺は左側だ」


ジョンはそう言って弓を構えた。カロンの詠唱が終わると魔法は発動した。


「ファイヤーボール!」


「フン!」


カロンのファイヤーボールは山賊に当たると爆発した。3人が巻き込まれ馬から落ちて動かなくなった。


ジョンの放った矢は山賊の頭部に命中した。これで4人。


山賊は何やら叫びながら接近してきた。が、カロンのファイヤーボールでさらに2人、ジョンの弓で1人を倒した。


「トラ!」


「任せろ!」


やっと俺の番になった。俺は馬車を飛び降りのこり3人になった山賊へ向かった。


1人目にショートソードを投げると見事に喉に命中した。2人目には楯を投げつけ落馬させた。問題はここから。


3人目には何も投げる物が無いので一瞬だけ身体強化を行い飛び膝蹴りを放った。


「!!」


山賊の顔面に当たり地面に倒れた。俺はその山賊に止めを刺すべく山賊の喉に着地した。これで残り1人。


と、思ったらジョンの放った矢で山賊は死んでいた。


「よし、周囲を確認しろ!トラ、ログ、カロンは山賊の乗っていた馬を確保しろ」


俺は近くにいた馬を確保出来た。カロンもログも確保できていた。


「3頭か、他は逃げたか…」


俺は周囲を見回すが、死体以外に何もなかった。俺はゆっくり進む馬車を待つ間に死んだ山賊を道の脇に寄せた。


「死体を退かさせてすまないな、トラ」


「気にするなジョン」


俺は馬に跨ると歩みを止めない馬車に並び進んだ。カロンもログも馬に跨ったまま進むことになった。


ジョンが言うには馬は需要があるから街で売り払うとの事だ。世話の問題もあるから俺はそれに賛成だ。


その後、ヤ―クの街まで何度かの戦闘を行ったが、馬車の歩みを止めることなく順調に進む事ができた。


そして、やっとヤ―クの街に到着した。今は門の前で衛兵に審査を受ける為に並んでいるところだ。


このヤ―クの街は今までの街よりも大きく、街の中心にある丘には立派な建物、領主の館が立っていた。


「やっと到着だな」


「ああ、長かったな…」


俺の言葉にカロンも頷いた。


「ジョン、到着したら…」


「ああ、判っているログだな」


ログは途中で酒が尽き今は禁断症状と戦っているために馬車の中にいた。


「ログの事は俺に任せてくれ」


「任せたぞカロン。明日、冒険者ギルドで会おう」


俺達の審査も終わり街に入るなり、カロンはログを連れて酒場へむかった。


「トラ、俺は商人から護衛終了の証を貰ってくる。その間に山賊から奪った3頭の馬を売ってきてくれ」


「了解だ」


俺は門の脇にある馬屋に行くと馬を売り払うとジョンの元へ向かった。


「トラ、こっちだ」


門へ向かう途中にジョンと合流できた。


「ジョン、今日はどうするんだ?」


「ああ、時間も時間だからな。今日は宿を決めてゆっくりしよう」


「そうだな、10日とはいえ結構疲れたからな」


俺達は夕日を見ながら門の近くにある宿へ向かい部屋を取るとそれぞれゆっくり過ごした。


ジョンは部屋で本を読んでいるらしく動く気配はなかった。


俺は街を見て回りたかったが、10日ぶりの風呂を楽しんだあとベットに飛び込んだ。


部屋をノックする音に起され、ジョンと共に夕食を済ました。


食事前に少し寝た為に全く眠くならなくなった俺は夜の街の散策へむかった。


…考えてくれ。


夜、人気の無い路地、武器を持たない少年。


これだけ揃っていて襲わない人間はいない。俺だって街の荒くれ者だったら襲っているさ。


そして案の定、襲われることになった。






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