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第五話

ジョン、ログ、俺の3人がパーティーを組んで3か月が経った。


俺達3人組はこのアリアスの街で若手ナンバー1のパーティーとして期待をされている。


的確な判断と騎士にも優る知識量のジョン、格上の相手でも怯む事無くジョンの策を信じ行動する俺、ヒーラーなのに前衛で殴り続けるログ。


この街を中心に活動している他の冒険者からも評判は良かった。


俺はこの3か月で身体強化を調べた。変身する強化はおよそ10分で、変身しない強化は3時間の使用時間がある事がわかった。


これは断続的に使用しても可能でその合計時間で腹痛&下痢になる事がわかった。ちなみにこれを調べるのに下着6枚が犠牲になった。


ある日、俺達は冒険者ギルドに呼び出された。予定よりも少しだけ早い時間にギルドに行くと多くの冒険者で溢れていた。


ジョンが受付で何かを話している間、俺とログは邪魔にならないように少し離れた壁際の椅子に座って待っていた。


「あら?ヘナチョコじゃありませんか?こんな朝に珍しいですわね?」


「おはよう…」


朝からメンドクサイ女、金髪縦ロールの双剣士のお嬢様に捕まってしまったな。


「ところで、タイガー様を見ませんでしたか?」


「だから、俺は見てないって言ってるだろ?」


この女、直感か超能力か分からないが俺とタイガーに何か関連があると俺に纏わり始めたんだ。


「ふん、どうだか。ああ、タイガー様の素晴らしさを語るには万の言葉でも表せませんわ!」


2回しか会ってないのに美化しすぎだろう…


「はいはい、そうですねー」


もう、棒読みで返事してても気が付かないくらい自分の世界に入っているな…


その後もお嬢様との会話を超適当に流しているとジョンが帰ってきた。


「メリルか、おはよう」


「あら?ジョンいたのね?」


「ああ、トラとログ。紹介したい人がいる。こっちに来てくれ」


「わかった」


「…」


俺は返事をするが、ログは酒を飲みながら頷いた。


ジョンに連れられて来たのは冒険者ギルドの奥にある個室だった。ジョンがノックし扉を開け中に入る。俺とログも続いた。


個室の中央にあるテーブルの向い側に2人の男が座っていた。


「よく来てくれた、座ってくれ」


俺達は反対側の椅子に座り2人を眺めた。先ほど声をかけた人物は白い鬚を生やし黒いローブを長い杖を持った老人で、隣にはジョンくらいの年齢の赤髪のローブの男が座っていた。


「おまえらが今話題パーティーか?俺様がそのパーティーに入ってよる。ありがたく思え?」


…なるほど。話しは理解できた。この俺様男が新メンバーなんだな?


「言葉使いを直せと言っておるだろうが!」


老人は怒りながら赤髪の頭を杖で殴った。


殴った音は聞こえなかったがあれは地味に痛い。


「ック!ですが師匠!」


「パーティーメンバーから不評を買えばどうなるか教えただろう!」


老人が赤髪の鼻を拳で殴るとそのまま髪を掴みテーブルに叩きつけた。


ナニこのお爺さん超怖いんですけど。


「弟子の不埒な態度済まなかった」


お爺さんも頭を下げてるけど…赤髪を中心に赤い水たまりが広がってるんですけど大丈夫か?


「いえ、お気になさらずに。これから一緒に冒険をするメンバーですから、普段と同じようにお願いします」


さすが、ジョン!大人の対応だ!


「ああ、ありがとう。それで、こいつが『カロン』だ。ワシの最後の弟子だ」


「最後とは?」


「ああ、ワシ結婚して引退するんだ」


寿引退ですね、どう見ても60歳超えてるお爺さんが結婚引退ですか、相手いるんですか?


「家族亭という食堂知っておるか?」


家族亭、あそこは50代のおばさんとその娘マキさんがやってたな。確かおばさん未亡人とか言ってたし。


「あそこのマキちゃんがお嫁さんだ」


ちょっと待ったー!マキさんまだ20代だろう!


「そ、それはおめでとうございます」


ジョンは珍しく動揺した顔しているが…こいつ片思いだったか?


「では、こちらもメンバーを紹介します。私がリーダーのジョン、アーチャーです。隣がトラでファイターです。で、あそこで…」


「ログだろ?飲み仲間だからしってるぞ?よろしく頼むぜ?」


ログの仲間か…何か不安だな…


「それじゃ、師匠。お世話になりました」


カロンはお爺さんに頭を深く下げ部屋を後にした。俺たちもお爺さんに軽く頭を下げカロンの所へ向かった。


カロンはギルドの入口にいた。


「さて、リーダー達は何所の宿に泊まっているだ?そこで部屋取ったら魔物退治にいこうぜ?」


カロンはやる気があるようだ。何所かのアル中とは大違いだ。


「ああ、魔物退治には行くがその前にミーティングだ。確認事項が色々ある」


「わかったぜりーダー」


俺達は宿に戻りカロンの部屋を取ると1階の食堂でカロンのメイジとして何が出来るか確認した。


カロンは火系が得意ということなので後衛かつ、ログのお守にした。いくら前衛が得意なヒーラーでも万が一怪我されるとパーティー全滅もあるからな。


…まぁ、類は友を呼ぶというやつか、カロンは女癖がわるかった。


ウェイトレスのお尻を触ったり、他の冒険者をナンパしたりと俺とジョンは溜息をつくこともできなかった。


カロンを強制的に椅子に座らせフォメーションと1匹の時と多数の時の戦い方を相談した。


感の鋭いジョンが索敵し、カロンが奇襲。向かってくる間にログが麻痺にさせジョンが急所を狙いながら俺が止めを刺す。相手が途中で逃げってもカロンが追い打ちできるし、魔物が麻痺していればジョン、俺でも追いつく事が出来る。


4人でいろんな場合を想定し動きを確認していると昼になった。俺達は昼食を取ると北の森へ馬を借り向かった。


森の奥に入り豚頭のオークを相手に再度フォーメーションを確認する。俺達はこの3か月で十分強くなった。


最近ではオークよりも森の深い所にいるトロル、オーガを余裕で狩れるようになった。


まぁ、基本的に日帰りの狩りしかしていない。以前ゴブリンがいる当たりでキャンプしてが、ログが泥酔して見張り中に寝やがった。


あれはピンチだったな。


それからは日帰りの狩りをメインに行っている。


「トラ!行ったぞ!」


おっと、ジョンが叫んでいるな。さっさとオークでも狩り尽くすか…


結局その日はオーク、トロル、オーガが余裕で狩ることが出来た。


うん、良い調子だ。


だが、これ以上森に入るにはキャンプする必要があるんだよな…


そんな事を考えながら狩りが終わり、宿に戻り反省会と歓迎会をする。


「「「乾杯!」」」


ジョン、俺、カロンがグラスを持ち上げてお互いの労をねぎらうが…ログはすでに飲んでいた。


ログに協調性を求めるのが間違っているのか…。


「みんな、食べながらで良いから聞いてくれ。俺達はオーガを狩るのも十分余裕になるくらい強くなった。オーガよりも森の奥へ行かないと俺達はこれ以上強くならないし、他の冒険者から不評を買うかもしてない」


考えてみると、後輩冒険者の成長阻害で先輩冒険者から目を付けられるかもしれない。それにここ1か月は誰も試練を超えてないな。


「それで、輸送や護衛の依頼をしながら別の町を目指したいと思うんだ」


ジョンの言葉に俺達は頷いた。


「ああ、俺はジョンに賛成だ」


「俺様もそれで構わない」


「…」


ログは酒を飲みながら頷いた…。最近ログの声を聞いていない気がするのは気のせいか?


「そうか、一応次の街の候補はあるんだ。ヤ―クの街は知ってるか?」


ヤ―ク…知らないなー。ってか、考えたらこの世界の事全然しらないや。まぁいいけど。


「俺様は知ってるぜ?あの街の娼館で病気貰ったからな。たしかココから馬で20日くらいか?」


…最低だ、この男。


「ああ、それで明日からギルドで護衛か輸送の依頼を調べる。3日以内に依頼が無ければそのまま出発しよう」


さすが、ジョン!いろいと考えてるんだな。


「移動は馬車を購入しようと思っている。全員分の馬を買うよりは高くなるがテントや薪、その他雑貨を乗せるには丁度いいし世話も簡単だ」


「俺様はそれに賛成だな」


…たしかに馬車ならログが酒に酔って落馬する事はないな。


「俺も賛成だ、ログは?」


「…」


相変わらず酒を飲みながら頷いている。…それ2杯目か?


「それじゃ、出発まで自由行動だ。いつでも出れるように準備だけはしっかりしておいてくれ」


俺達はジョンの言葉に頷くと食事を再開した。食後はログとカロンが外に飲みに行くと言って何所かへ消えて行った。


翌日


部屋を出ると廊下で寝ているログがいた。こいつ、飲み過ぎて部屋まで帰れなかったのか…。宿の人がログに毛布を掛けているのをみると有難くて涙がでそうだ。


1階の食堂ではヤケにすっきりとしたカロンが食事をしていた。…こいつ娼館でもいったのか?ジョンがいないということはギルドへいったのか?


「おはよう、カロン」


「おい―っす」


水素よりも軽い挨拶をされたが、気にしない。俺はクールな男だ。


食事が運ばれそれを胃に押し込む。今日の朝食はあんまり美味しくない。


「トラは今日どうすんの?」


「んー…考えてないな」


「それなら良い所いかないか?」


「良い所?」


「ああ、奇麗な女がイッパイいてすっごく気持ちよくなる場所」


娼館ですね、ヒントが分り易いです。


「…娼館だろ?俺はパス」


俺にはまだ早い、せめてもう少し大きくなってからにしたい。もちろん、身長の事だよ?


食事が終わるとカロンは娼館へ、俺は町の外へ特訓をしにいった。最近は剣を持ってしか動いていなかったから素手で動きたかったんだ。


南門を出て草原へ行く。しばらく行くとワッドドックと遭遇した。ワッドドックは俺をみるなり駆けだしてきた。俺もワッドドックを見て向かって駆けだした。


ワッドドックが飛びかかってきたので腰を落し俺の頭上を飛んで行く。ワッドドックの片足を掴み立ち上がった瞬間、俺の体を捻りながら横に回転する。


ドラゴンスクリュー。かつて古代中国の近衛兵が編み出したとされる技の一つだ。嘘だけど。


地面に叩きつけられたワッドドックは小さな悲鳴を上げたが、まだその目は死んでいなかった。


俺は立ち上がりワッドドックの上空へジャンプするとワッドドックの喉へ片膝を落とした。


ワッドドックは光を放ち消えて行った。流石、悪魔の将軍様の技だ。必ず殺すと書いて必殺と言うだけの事はある。


魔石を拾い森の中へ入る。すると森の中にいたゴブリンと目が合った。


外せない視線、高鳴る鼓動…これは、恋の始まりか?


そんな事を考えていると落ちていた石を拾いこちらに駆け寄ってきた。


俺もゴブリンに向かって駆けよる。俺は右腕を横に出し、その腕でゴブリンの喉を強打しながら振り抜いた。


不沈艦スタン・ハンセンの得意技ラリアートだ。ゴブリンはそのまま後ろへ1回転しながら地面に叩きつけられると光になり消えて行った。


俺は人刺し指と小指だけを立てた腕を振り回しながらポーズを決めた。


その後も何度かプロレス技を試し夕方になったので宿へ帰った。


宿の食堂ではカロンとログが酒を飲んでいた。ログは飲み過ぎたのか酒瓶に埋もれ伏していた。


「また飲んでるのか?」


「ログがな。おれはまだ2杯目さ」


「ふーん、所でジョンは?」


「さっき戻ってきたところ。部屋に荷物置いたら戻って来るって」


カロンの言葉を聞きながらウェイトレスに夕食を注文する。ログもジョンも食事にはうるさくないので適当に頼んでも量さえあれば大丈夫。


「カロンは?」


「ああ、俺はお勧めのステーキと、あとお姉さんね?」


「うふふ、うれしいわ。すぐに料理持ってくるわね」


ウェイトレスはカロンのナンパを笑顔でスルーした。この女性って結構人気あるんだよね。


「トラ、帰って来たのか」


「ジョン、良い依頼あったのか?」


「ああ、商団の護衛があった。出発は明日早朝。他のパーティーと合同での依頼だ」


ジョンの話を聞きながら俺達は頷いた。


「すでに他のパーティーのリーダーとは打ち合わせを終えてある。俺達は初めての護衛なので最後尾にしてもらった。移動は2頭仕立の馬車を購入してこの宿に預けてある」


「リーダー質問」


「なんだカロン?」


「他のパーティーに可愛い子いました?」


「会ったのはリーダーのみだ」


カロンの頭の中は予想通りピンクの一色に染まってるな。


「質問がなければ、今日は早く寝ること。カロンは娼館禁止、ログも明日の事を考えるとこれ以上飲むな」


「了解リーダー」


「ああ、これ以上飲まないよ」


カロンはともかく、ログはジョンの言葉には素直に聞くんだよな。


俺達は食事を終えるとそれぞれが部屋に戻り早々にベットへ入った。


翌朝


俺達はジョンが用意した馬車に乗りながら商団との集合場所の北門に来ていた。従者としてジョンが馬車を操り他のメンバーは荷台で座っていた。


…珍しく二日酔いではないログを見た気がする。


そんな視線をモノともせず、早起きした記念とか言いながら酒を飲んでいた。


すぐに商団と他のパーティーはやってきた。商団は幾つかの商人が合同で依頼を出したようで馬車は3つと、冒険者が6人それぞれ馬に乗っていた。


「よう、ジョン!早いな!」


冒険者の1人、鬚を生やした40歳前後の男が遣って来た。


「ええ、遅刻しないようにがんばりました。みんな、こちらが暴風旅団のリーダー、ザイガさんだ」


「おう、よろしくな坊主ども」


豪快に笑うザイガさん、背中に大楯を背負っている。


「んじゃあ、こっちのメンバーを紹介しよう。全員こっちに集合!」


ザイガさんの豪令で馬に乗った冒険者が遣って来た。


「一気に紹介するぜ?アーチャーのメノ、メイジのユッコ、ヒーラーのスウェン、シーフのウェンズ、ファイターのジーナだ」


女女男男女でリーダーが男か、男女半々か。


「ちなみに俺達は全員パーティー中で結婚してるぞ」


その言葉でパートナー同士が視線を合わせた。アーチャーとシーフ、ヒーラーとファイター、メイジと鬚ね。


「それでは此方も紹介します。私がアーチャーでリーダーのジョン、ファイターのトラ、ヒーラーのログ、メイジのカロンです」


「よろしくね、坊や達」


ユッコさんがウィンクしてくる。鬚以外がみんな若いんだよね。20代半ばくらいかな?素敵な年上のお姉さんって感じだ。


「お、そろそろ行く見たいだな。俺達は商団の前につくぞ」


鬚たちは馬を走らせ商団の前に着くと馬車を先導して歩きだした。


「それじゃあ、俺たちも続くぞ」


俺達の馬車は3台目の馬車の後ろをゆっくりと歩き出した。


「そういえば、ジョン」


「何だトラ?」


「ザイガさんたちのパーティーって『暴風旅団』って言ってたけど、俺達のパーティーにも名前はあるの?」


「ああ」


「なんて名前?」


「知りたいか?」


「ああ知りたいね」


「前もって言っておくが、これはログが勝手に書いて出してしまったものだから文句いうなよ?」


しつこいぞ、ジョン。


「だから教えてくれよ」


「…『ジョンと愉快な仲間たち』だ」


「…済まなかった。俺は何も聞かなかったことにするよ」



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