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第三話

祝賀会翌日


俺達3人はギルドへ来ていた。掲示板で依頼を受けるのを決めるのはジョンの役目で俺とログは椅子に座り周囲を眺めていた。と、思ったらログは酒を飲んでいた。


「うーん、今日も良いのないな。またゴブリンでも狩るか?」


ジョンの提案に頷いた俺達だったが、突然掲示板から女の子の声が聞こえた。


「あら、こんな田舎にオーガが出るなんて、私たちが倒して見せますわよ!」


先日会ったお嬢様がいた。正直言って関わりたくない。


俺達はお嬢様が受付をしている間にゴブリンを狩りに北の森へ向かった。


今日もゴブリンの餌としてアル中が威力を発揮するかと思ったが、中々ゴブリンと遭遇することはなかった。


「…今日は様子がおかしいな」


「ああ、ゴブリンどころかワッドドッグさえ見てないぞ」


ジョンの言葉に俺が同意した。ログは2本目を開け始めた。


「もう少し奥に行こうか?」


ジョンの言葉に頷き俺達は森の奥へと進んで行った。


森の奥でもゴブリンとは会うことはなかったが、豚頭のオークを発見した。こちらには気づいていないようで背中に鹿を担いでどこかへ向かって歩いていた。


「格上だが、やるか?」


「…ああ」


「そろそろツマミが欲しい頃だ。鹿肉も悪くない」


ジョンの言葉に俺とログは同意した。


「俺が仕掛ける。ログは援護、トラが引き付けて俺が後ろ方止めを刺す」


俺は頷くとオークに気が付かれないように茂みを利用し接近した。オークとの距離が3メートルまで来た所でオークは立ち止まり周囲を警戒し始めた。


ジョンはオークの真後ろから静かに矢を放つとオークの背に担いでいた鹿に刺さった。


「ッチ!外したか!」


オークは鹿越しに感じた衝撃とジョンの声で振り返ると獲物を見つけた喜びからか雄たけびを上げながらジョンへ駆け寄った。


「パラライズ!」


ジョンの近くにいて隠れていたログが立ち上がりオークへ杖を向け麻痺の魔法を唱えた。一瞬動きが止まると動きが見るからに悪くなった。


俺は茂みから出てオークの背中から切りつけた。


「ブオオオオオ!!」


オークは背中を切られると直ぐに振り向き持っていた鹿を振り回した。オークの力と鹿の重量から楯で防ぐのは危険と判断し後方へ飛びのいた。


オークは顔を赤く染め怒りの表情で俺に迫ってきた。が、その体は直ぐに光に包まれた。


光の向こう側、1メートルの所にはジョンが矢を放ったままの姿勢で立っていた。


「よし、上手く行った」


「バッチリだな」


「鹿肉、鹿肉」


ジョンと俺、ログは格上の相手でも連携を取れば安全に魔物をかれることができるとわかった。


「俺は今ので試練を超えたぞ」


「あ、俺も」


ジョンは魔石を拾いながら、ログは鹿を捌きながら言った。


「俺はまだだな。鹿を捌いたら単体のオークでも狩らないか?」


「いいね、単体なら楽勝だな」


俺の言葉にジョンは頷いた。ログは…鹿を捌きながら切り取った肉を道具袋に入れていた。


「…じゃ、次行こうか」


ジョンの言葉に頷き次の獲物を探しに向かった。ログも最後の肉を袋に入れると後から続いた。



「これで何匹目だ?」


「えーっと12匹目」


ジョンの言葉にカードを取り出して数を確認する。怪我すること無く単体のオークを12匹狩ることができた。もちろん俺も試練を超えたし、ジョンとログはさらにもう1回ずつ超える事ができた。


「そろそろ、帰るか?」


「そうだな、結構奥まできたしな。それに」


俺はログに視線を向けた。


「酒、酒が無いと…」


ログは指先を震わせながら夢遊病のように酒を求めていた。ダメだこいつ、何とかしないと…


ジョンと俺は何度も倒れそうになるログの手を引きながら街へ向かった。


「…近くで誰かが闘っている」


「ホントかジョン!」


「ああ、行ってみよう」


ジョンは感覚が鋭いのか耳が良いのか少し離れた場所にいる人が判るようだった。


ジョンに先導され300メートルほど進むと6人組のパーティーが4メートルもある魔物と戦っていた。


「あれはオーガ?…いや、レッドオーガか!」


「レッドオーガ?」


「トラは知らないか?オーガの中でも戦闘に特化した魔物だ。見ろ、オーガなら棍棒だけど、レッドオーガは剣を持ってるんだ」


確かに皮膚は赤く魔物は剣を持っているが、剣の刃だけでも2メートルはあるぞ。誰があんなの作るんだよ。


「あのパーティーなら勝てそうか?」


楯ファイターが注意を逸らし、双剣のファイター、シーフが縦横無尽に翻弄。アーチャーも援護しながら頭部に攻撃、メイジはファイヤーボールで攻撃、ヒーラーは麻痺や毒などの異常魔法で援護していた。


「…いや、厳しいな。今は均衡しているが、いつかは押し負かされる」


ジョンの人を見る目は確かで冷静な判断も出来るナイスガイだ。だから俺達のリーダーなのだ。


その時、レッドオーガの前で注意を引いていた大きな縦を持ったファイターが剣の柄で殴られ飛ばされた。


「ヤバいな…どうする?」


俺達が加勢するか悩んでいる時、双剣の女戦士が俺達に向かって叫んだ。


「貴方達!早く逃げなさい!足手まといの加勢は要りません!」


よく見ると、あの五月蝿いお嬢様だった。


「トラ、引くぞ」


「ああ、わかった」


お嬢様に言われた通り俺達はその戦場を後にした。数十メートル進むと後ろからあのお嬢様の声が聞こえた。


「…ジョン、先に行っててくれ」


「トラ、俺たちでは足手まといだ」


「別に倒そうって訳じゃない。あいつらが逃げるのに時間を稼ぐだけだ」


「…わかった。死ぬんじゃないぞ」


「もちろんだ。せっかくのオークの戦利品をログの酒代で終わらせるのは勿体ないからな」


俺は手を引いていた青白い顔をしたログをジョンに任せると道を戻った。


戦場に戻り最初に見たのは倒れるお嬢様をヒーラーが魔法で癒し楯ファイターがレッドオーガの注意を引いていた。


「助太刀する!」


「あなたは!」


俺の言葉でこちらを見たお嬢様の足は折れて歩けないようだった。それをヒーラーが何とか治そうと必死に魔法を唱えていた。


「下がりなさい!死にたいのですか!」


お嬢様の声を無視しながらレッドオーガの足を切りつけた。


「グオオオオオ!」


傷は浅いがこっちに注意を向ける事が出来た。


俺と楯ファイターはレッドオーガの正面と後ろを取るように注意しながら攻撃しはじめた。


レッドオーガの正面は楯ファイターが取ってくれたので周囲を確認しながらたまにくる剣の攻撃をかわしていた。


お嬢様の反対側で倒れているのは男のシーフで彼に向かって治そうとしてるのが男のメイジだった。慣れないヒールなのか本職のヒーラー程効果は高くないがそれでも必死に直そうとしていた。


そして、レッドオーガに飛ばされたのか森の奥から足を引きずってこちらに向かってくる女アーチャーがいたが、右腕が腫れあがっていた。恐らくは骨折しているのだろうか。


俺が周囲を見れいると不意にレッドオーガが今までにない攻撃、蹴りを放った。


俺は咄嗟に楯で防ぐも木の楯では守ることも出来ずに砕け俺はその衝撃に森まで飛ばされた。


森の中まで蹴り飛ばされ地面を何度か転がると大木に当たった。超痛い。


「グフッ!」


内臓がやられたのか吐血してしまった。数秒で吐血はおさまったが、装備がダメになっていた。


楯は砕けショートソードはナイフよりも短くなっていた。そして、革の鎧も繋ぎ目が切れ鎧としての性能はほぼ0になっていた。


「畜生!初めて買った装備なのに!」


俺はレッドオーガに初めて殺意を抱いた。今までは逃げるための時間稼ぎだったが、ここであいつを殺さないと気が済まない。


鎧を引き千切りシャツになると身体強化をおこなった。体は14歳の150センチに満たない身長から地球にいた180センチの背まで伸びた。


「覚悟しろ!」


俺は叫ぶと森の中を駆けだした。レッドオーガを確認すると楯ファイターがけん制していた。レッドオーガ向かい地面を強く蹴り飛びあがるとレッドオーガの後頭部を掴むとそのまま地面に向かい叩きつけた。


「グオオオオオオオ!」


地面に叩きつけられた衝撃で悲鳴を上げたレッドオーガだったが、俺はその叫びを無視してレッドオーガの右足を掴むと体ごと回転した。そう、ジャイアントスイングである。


「うおおおおおおお!」


何度も何度も回転させる。何故か俺は眼が回らなかった。これは便利。


レッドオーガを遠心力を使いながら真上に飛ばすと落ちていたレッドオーガの剣を掴み上空のレッドオーガに向かって投げるつけた。


見事に上空でレッドオーガの腹に命中し突き刺さった。レッドオーガはまだ生きているのか消える気配は無く、腹に剣を突き刺したまま地面に落下した。


ドシンと大きな音と土埃が舞うが、俺は警戒しながらレッドオーガの出方を待った。1分経つと俺の体にドクンと衝撃が走った。土煙りが消えるとそこには巨大な魔石が残っていた。


「す、すげぇ…」


楯ファイターは俺を見ながら呟いた。俺はそっちの気はないからあんまり見るな。


「あ、あの、お名前を…」



その言葉に振り向くとあのお嬢さまが頬を紅く染め上目使いに俺に聞いてきた。これがギャップ萌えか!可愛いなこんちくしょう!


「俺の名前はト、いや…タイガーだ」


「タイガー様…、あの、私はメリル・マスベルです。かの有名なマスベル家の娘です。もしよろしければこの後お食事でもいかがですか?」


「気持ちは嬉しいが、こちらも予定がある。すまないな」


主に下痢ですけど。


「そうですか…、あの、また会えますか?」


「ああ、また会えるさ」


俺はお嬢様の頭をやさしく撫でると森へ入って行った。早く身体強化を解けば間に合うかもしれない!制限時間内なら腹痛は来ないかも?そう思った!


森へ入りレッドオーガに投げ出された地点へ戻り身体強化を解いた瞬間、腹痛が遣って来た。


こ、これは前回ほどじゃないけどキツイな…


俺は茂みに入り…



装備を回収し道具袋に入れた俺はお嬢様に会いに彼女の元へ向かった。あのまま帰るのも変だし、レッドオーガを倒したのを確認してから戻らなきゃ辻褄が合わないもんね。


「あら、生きてたの?」


「…生きてちゃまずいのかよ」


「フン、そんなにボロボロなのに怪我が無いのは装備のおかげかしら?見た目以上に良いものだったようね?」


「…」


俺は呆れた物が言えなかった。


「すみません。あれでもお嬢様は褒めているんで…」


俺の耳元でヒーラーの女性がそっと囁いた。彼女、ローブ姿だから胸の形がはっきり判るな、あのロケットのような巨乳素晴らしい。それにアーチャーの女性もレッドオーガにやられたのか胸の鎧所か破けメロンが2つ見えている。これもポイントは高い!


お嬢様は…まぁ、将来に期待かな?


「…まあ、いいや。全員無事なら俺はイカせてもらう」


主に帰り道に性的な意味で。


「ええ、どうぞ。タイガー様なら引き留めるけど、あなたはどうでもいいわ」


俺はムカムカしながらも一人で街へ向かった。そのムカムカがストレスなのか性的欲求なのか分からないけど、とりあえず発散しておいた。



宿へ着くとジョンが入り口で待っていた。


「トラ!無事だったか!」


「ああ、もちろん!帰りもゴブリンやワッドドッグもいなかったしな」


「恐らくはあのレッドオーガがやってきて魔物の縄張りが一時的に変化したからじゃないかと俺は思ったんだ」


「どういう事?」


「レッドオーガがいた場所は元々オークの縄張りだったんだ。それで、元々そこにいたオークがゴブリンの縄張りまで押しだされる形で移動、それに気が付いたゴブリンは一時的に巣に避難、ワッドドッグも異変を感じて大人しくしてたんだと思う」


なるほど、筋は通るな。


「流石はジョンだ!物知りだな」


「いや、魔物の知識ぐらい知っておかないと生きていけないだろう…」


そうか?俺もログも全く知らないぞ?


「そういえば、ログは?」


「…部屋で吐いてる」


今日もログは通常営業だな。


「…トラ、装備はどうした?」


「命と引き換えなら安いもんさ」


「そうだな。明日は休みにしてゆっくりしようか」


「ああ、済まない。明日中には装備を整え得るよ」


俺の言葉に頷くジョンだった。


「あの、すみません」


その声に振り向くとお嬢様のパーティーのヒーラーさんが立っていた。


「なんでしょうか?」


「先ほどはありがとうございました。私たちもあんな所でレッドオーガに遭遇するなんて思いませんでした。」


そういえば、お嬢様達はオーガの討伐だったよな?


「そうでしょうね、そもそもオーガですらオーク、トロルの向こう側にいるはずですし、レッドオーガなんて話しの中でしか知りませんからね」


ジョンがそういうならそうなんだろう。


「それで、今回の失った装備と謝礼を込めてこちらをお納めください」


渡されたのはズッシリとした袋だった。中を開けると金貨が入っていた。


「1000G入っています」


ショートソードと革の鎧、木の楯の値段を考えると赤字だが、レッドオーガでレベルアップしたことを考えると黒字だろう。


「わかりました。ありがたく頂戴します」


俺は袋を受け取ると道具袋に入れた。


「それでは失礼します」


ヒーラーさんは俺にお時儀をすると帰って行った。お辞儀をする時に胸元に視線が行くのは仕方ないだろう?


「俺も疲れたから部屋に戻るよ。食事する時に呼んで」


「わかったよ、トラ」


俺は部屋に行きベットに倒れた。ギルドカードを見ると白字でレッドオーガと書かれていた事が誇らしかった。



「トラ、起きてるか?」


「うー…ん?なにー?」


いつの間にか寝てしまったようだ。


「食事だぞ。ログも生き返ったし、行こう」


「わかった」


部屋を出て3人揃って1階の食堂で丸テーブルに座った。


直ぐにウェイトレスの女性が来て注文をする。3人とも酒と肉料理が中心だ。


すぐに料理と酒が運ばれてきた。どれも美味しそうだ。


「「かんぱーい!」」


って言う前に今日もアル中は先に飲んでた。



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