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第一話

俺の名前は大川寅雄


父は公務員、母は専業主婦、年の離れた姉の極めて普通の家庭に生まれた。


姉とは10歳離れていたので、俺にとってはもう一人の母みたいな存在だった。


中学生になった頃、親にこっそり深夜番組を見ようとリビングに行ってテレビを付けた。


もちろん、エロエロな世界を見る為に普通の健全な男子なら一度はしているはずだ。


俺はテレビを付けた瞬間、体にビビビって電撃が走った。


画面に移されているのは、確かに上半身裸でパンツ1枚だった。


俺はプロレス番組を見てしまっていた。


お互いの全力の技の掛け合い、一瞬の駆け引き…


今までの平和な世界に無かった、まさに『男の世界』がそこにあった。単純な中学生はそれに憧れた。


深夜なのに興奮して叫んでしまって怒られたのも良い思い出。


それから毎月の小遣いでプロレス雑誌を買い、3か月に一度の頻度で父親に連れられプロレス興行に連れて行ってもらったりしていた。


…おっと、話しが外れたな。


そんなこんなで高校では自主的に筋トレをして将来はプロレスラーを目指していたんだが、大学のプロレス同好会で膝を壊してその道を諦めた。


まぁ、それでも筋トレはしてるし社会人になってからは外国のショープロレスも見るようになった。



そして、俺はアメリカにある世界一の規模のプロレス大会の会場に来ていた。


ド派手なパフォーマンス、判り易いヒール軍団。まさしく超一流のレスラーがリングの上で熱い戦いをしていた。


来てよかった!有給を使って、ここまで見にこれてよかった!高い金払って最前席を買ってよかった。


一緒に来た大学時代の先輩とその子供も大きな声を上げて声援を送っている。


この素晴らしい時間が永遠に続けばと思ってしまった。


そして、事件は起きた。


突然リングが爆発した。


静かになる場内だったが、2回3回と爆発が起きると観客はパニックになり狭い出入口に殺到した。


俺達も周りに押されるように出入口に向かった…が、最後に俺が見たのは爆発して崩れ落ちる2階席の瓦礫だった。





「あれ?俺は・・・?」


気が付くと白い世界にいた。


俺は立っているのか横になっているのか、浮いているかもわからない状態だった。


すると目の前に緑色の光が集まって人の形を作った。


髪の毛は無いのか分らないけど胸は出て腰はキュッとしていてヒップもなかなか…。これは間違いなく女。しかもDの巨乳だ。


「私はDーヴァニス。地球の少年よ、私の世界を救って欲し…、あれ?なんで?」


最初は物々しいオーラを放っていた光の女ヴァニスは俺を見るなり、慌て出した。


「何が、なんでなのさ?」


「いや、おかしいな、確か子供を連れてきたと思ったんだけど…、ちょっと待って!」


ヴァニスはポケット?から何かを取り出すと耳元に持ってきた。


「あ、もしもし。L-ドラン?なんか、違うのが送られてきたんだけど?…うん、うん…、はぁ!?ふざけんじゃないわよ!そっちで使うからこっちには別のを寄こしたって言うの!?何?心は少年だから大丈夫?って馬鹿!?あんたバカでしょ!あ、もしもし?!…切られたっ!!」


ヴァニスは携帯をポケットに仕舞うとコホンと咳をして俺を見つめ再び物々しいオーラを出してきた。


「…私はDーヴァニス。地球の少年の心を持った人よ、私の世界を救って欲しい」


「仕切り直しかよ!それにさっきの電話は何さ!?俺間違いでここに来ちゃったの?!一から説明してよ!」


「あ、あぅ…。ご、ゴメンなさい。私の世界が滅亡の危機なの。それで同郷のよしみでL-ドランに地球の少年を1人送ってくれるように頼んだの。そうしたら貴方がここに来たのよ」


「…とりあえず、突っ込み所がいくつかあるけど、後にしようか、先を続けて?」


「ええ、それでL-ドランに携帯で確認したら、地球でも使うからこっちに寄こせないって言うの…」


「まぁ、だいたい事情はわかりました。んで、ここはどこなの?」


「ここは生と死の挟間よ」


生と死の挟間…


「やっぱり俺死んだのか?」


「ええ、グシャッとね」


「グシャッですか…」


「なんなら死体見る?だれか分からないほどミンチになってるけど?」


「…いや、自分の死体を見ても面白くないし…」


「そう、それじゃあ、これからの話をしましょう。あなたはこれから選択肢が2つあります。ひとつはこのまま死んで再び転生を迎えるか、それとも私の世界を救う勇者になるか?さぁ、今の気持ち、どっち?」


なんだか軽い感じで今後の事を言われているけど…


「答えは判ってるでしょう?もちろん勇者になりますよ!」


男なら誰でも一度はあこがれる職業だ!


「本当に?よかった!ありがとう!」


そういってヴァニスは俺に抱きついてきた…が、あれ?この胸…虚乳か?


「じゃあ、さっそく行ってみようか?!」


テンションの高いヴァニスを止める。


「待って、このままそっちの世界に行っても何にも出来ずに死んじゃうよ!?」


「あ、大丈夫よ。ソレが目的だから」


「ゑ?」


「そうね、説明してなかったわね。私の世界はあと一万年で枯れちゃうの。それでこっちの世界でも神の加護もない地球人を私の世界に連れて行て死んでもらえば、あなたの存在の力が補充されて再び世界は活力を取り戻すわ」


ヴァニスは大きく頷くけど、おれは頷けなった。


「それで、その存在の力だけど判り易く言うと魔力って言われるてるの。地球ではその力は禁忌だけど、私の世界では十分使えるわ。」


存在の力が魔力?


「…そうね、生き返ってすぐに死んじゃ面白くな…いえ、可愛そうね?私からこの力を授けます」


ヴァニスに抱きつかれたまま頬にキスをされた。えへ、えへへへ…


「これで身体強化と肉体再生を得ました。それじゃあ、ガンバって」


「待って、聞きたい事いっぱいあるけど!」


「えー!時間無いのよ!」


「じゃあ、ひとつだけ!俺の魔力ってどれくらいあるの?」


「うーん…そうね、あの星にいる全ての生物の魔力の総量が貴方の魔力の1%以下ってところかな?さぁ、時間が無いわ!いってらっしゃーい!」


俺はヴァニスの胸に抱かれながら光に包まれた。




「あ!魔力多すぎて世界からペナルティ受けるって言い忘れてたわ!…まぁ、手紙でいいか?」




俺は眼が覚めると草の中で横になっていた。立ち上がり周囲を確認する。


どこからか聞こえる鳥の声、高く青い空そして、ヒラヒラと落ちてくる1枚の紙…


顔の上に着地した紙を見るとヴァニスからの手紙だった。


なになに?ふんふん、ほほう…なるほどなるほど。


要約すると、


①ここは剣と魔法の世界で魔物に注意、倒すと宝石になるから回収すると換金できる


②世界の修正力である一定以上の魔力行使はペナルティを受ける。それはどんな形で表れるか分からないから注意


③今の体は少年用だったけど、大人の魂である俺が入ったから少し成長している事


④魔力を一定以上使うと世界の修正力で一時的に元の姿に戻るから注意


⑤長生きしても大丈夫、あと5000年くらいは持ちそう。それまで幸せな生活をしてね。


…以上の事から、普段はガキの姿だけど、魔力を一定以上使うと元の姿に戻った上で世界からペナルティを貰うってことか…分かりやすい。って最後のはどう反応したらいんだ?


ん?裏面にも何か書いてある。


なになに、この手紙は読み終わると自動で焼却される…?


その瞬間、あっと言う間に手紙が燃え上がり灰になった。


まぁ、いいや。とりあえず、能力の確認かな?


体から湧き出る力を意識して念じる。


「身体強化!」


その瞬間、俺は大人の姿に戻った。服もサイズが変わった。


破けなくてよかった。最初から裸ってどんな羞恥プレイだよ。


「…これが、身体強化か!」


体が羽のように軽い!そして、体中に力が湧きあがっている!


そのまま10分ほど身体強化を使っていると、急にお腹の調子が悪くなってきた。


キュグルルルって変な音鳴ってるし!トイレ、トイレ、トイレはいずこに?!ダメだ!間に合わない!!!


そして俺はその場でズボンを脱ぎ…








危なかった!漏らすところだった!こんな危険な能力なんて使えるか!


さっきズボンを脱いだ時、ベルトに挟んであっただろう皮の袋の中身を見るが、カラッポだった。


今の俺の状態は



装備


布の服、皮の靴


持ち物


皮の袋



コレではマズイ、非常にマズイ!早く町で装備を整えないと!


しばらく草原を彷徨うと街道らしき道に出た。


どちらに進めば町に着くか分からない。これは危険だ。


道の片方は森へ続き、もう片方は草原の先へ続いていた。


これは森と反対側に進むのが正解だろう。それに丸腰で森に入るのは危険だと、異世界開始2時間の俺でもわかる事だ。


街道を少し進むと突然草むらから2人の男が飛び出した。


2人とも鬚面で服も汚れている。見るからに汚らしい。2人とも腰に剣をぶら下げている。


「へっへっへ、ここを通りたければ有り金置いて行きな!」


…なんというテンプレ的発言!


2人とも腰の剣を抜かずにナイフを突き付けて脅すという訳のわからんおまけ付き!


「…なんていうか、あんたら盗賊かなんか?」


「見てわからねぇのか!命が惜しければ有り金置いてけ!」


俺の目の前にナイフを突き付けるとはいい度胸だ。


俺は何も言わずに目の前の男の股間を蹴り上げた。


「っあああああああああ!!!!!!!!!!」


男は股間を抑え蹲ると、もう1人がナイフで切りつけてきた。


俺はそのナイフを持った腕を掴み巻き込むように投げた。


変形のアームホイップとでも思ってほしい。


「!ック!」


男は受け身を取らずに背中を強打したが、すぐに振り向き起き上がろうとした。


これはチャンス!と、俺は男に駆けより男の膝に左足を駆け右の膝で男の顔面を強打した。


尊敬する武藤の必殺技シャイニング・ウィザードをプロレス仕様ではなく、ガチ仕様で使った。


男はそのまま後ろに倒れ気を失った。もちろん、俺はプロレスラブのポーズは忘れない。


残る男は股間を押さえながら逃げようとしていたので、後ろからがっちりと腰をホールドし、引きぬくように後ろに投げた。


古い神話の時代から使われたジャーマン・スープレックスを俺は男に対して使った。


が、失敗!


俺は自分の身長が低くなっていて感覚が少し違ったのか、後頭部を強打した。


山賊はもちろん後頭部を俺以上に強打して失神している。


倒れる盗賊を放置して俺は街道を進んだ。



それからは暫く何も起きずに、遠足気分で歩いていた。30分ほど歩いていると草原の草が不自然に動いた。


ん?何かいるのか?


草をかき分けて現れたのは可愛らしいウサギだった。ただし、見るからに凶悪そうな角を生やしている事を除けばの話だが。


しばらく見つめあう俺とウサギ。しかし、ウサギはものすごい脚力で俺の心臓目掛け飛んできた。


俺は慌てて飛んでくるウサギの角を掴むことが出来た。両手でしっかりと掴んでいるとウサギが暴れ出したので、俺はウサギの角をつい離してしまった。


ウサギは何度か首を振ると再び俺の心臓目掛け飛んできた。


…仕方ない。本当は殺したくないけど…


俺は飛んでくるウサギの角を再び掴み、そのスピードを受け止めると大きく振り上げてから地面にウサギの本体を叩きつけた。


ウサギは白く光ると小さな宝石を残し姿を消した。俺はその小さな宝石を取ると光にかざしてみた。


紅いルビーのように光る宝石


きっと指輪にすると素敵なんだろうな…ルビーの指環とかね。寺尾聰的な感じで。


俺は宝石を皮の袋に入れると再び街道を歩きだした。


その後も角ウサギに4回ほど絡まれたが、全て同じように地面に叩きつけると宝石を残して消えて行った。


そして、太陽がだいぶ傾いた頃に街に到着した。


街は石壁で囲まれていて、中に入るには門からしか手段はないみたいだ。


門の前には4人の西洋鎧を着た人が入場審査をしていた。それを待つ列に俺は並ぶと10分もしないで俺の番になった。


「ギルドカードを提示して?」


「え?ないですけど…」


「それなら入場料として100ゴールド(G)掛かるけど?」


「あの…お金もないです」


「…そうか、君は荷物が無いようですが盗賊に襲われたのかな?」


「あ、はい」


「それなら何も持ってないのも納得だな。とりあえず、身体検査して不審な物が無ければそのまま入場出来るから、一度詰所まで着てもらえるかな?」


「わ、わかりました」


俺はその衛兵と門の脇に立っている建物に入った。建物は壁は石で屋根と扉、窓にある雨戸が木製で中は6畳の部屋で奥へ続く扉があった。その部屋の中心には机が置いてあっただけで他には何もなかった。


「それじゃあ、荷物を出してもらっていいかい?」


「はい、これで全部です」


俺は言われるままに腰にぶら下げてある袋を机の上に置いた。


「荷物はこれだけのようだね?中を確認してもいいかな?」


「はい」


兵士は袋を逆さまにして中身を机の上に落とした。


「ふむ、この大きさだとホーンラビットだね。…この程度しかないと1晩の宿代で無くなるけど、何か当てはあるのかな?」


兵士は宝石を袋に入れながら俺に聞いてきた。


「いえ、何にもないです…」


「そうか、冒険者ギルドで登録するとギルド内で無料でベットを貸してもらえる。登録するならそこがいいかもな」


「そうですか、このあと直ぐに行かせてもらいます。それと、この宝石を換金できるような場所はありませんか?」


「それなら、ここの隣の建物だ。だけど、先にギルドで登録してカードを貰って来た方がいいな。現金を持ち歩くと落とすかもしてないからな」


「?わかりました。先にギルドへ行きます」


「ああ、冒険者ギルドは建物の正面にある。しばらくは簡単な以来で生活費を稼ぐのがいいだろう」


「わかりました。ありがとうございます」


俺は一礼すると詰所を出て正面にある建物、冒険者ギルドへ入った。入口の直ぐ脇に受付があり奥は幾つかの衝立があってそこには多くの紙が張り付けられていた。


「あの、登録をお願いします」


受付で暇そうに本を読んでいた小太りの中年男性に声をかけると顔をこちらへ向け、本を閉じた。


「はい、それではこの紙に記入してください」


渡されたのは1枚の少しだけ厚い用紙だった。


「わかりました。…えっ?読める?」


「ん?どうされました?」


「いえ、文字が読めるで…」


そこには見たことが無いミミズが這ったような文字だったが、確かに俺はそれが理解できた。


「特別な魔法が掛かっていますので。登録が完了すると文字読みの魔法具を渡しますので、まずはご記入ください」


「はい」


俺は年齢を14歳、生まれを日本。そして、名前を…


俺の大学時代のリングネーム


『トラ・ミステリオ』


と記入した。


大川寅雄はあの時死んだ。俺は虚乳のヴァニスによって生まれ変わったんだ。


そうそう、ミステリオと言いながら小回りが得意とかロープ使いが上手いとかそんなんじゃなく、通販で安かったマスクが本家のマスクに似てたからと言う理由だけで先輩から名付けられたんだ。俺はどちらかというとパワーファイターだったからね。


「はい、書き終わりました」


「はい、それじゃこの紙に血を1滴でいいんで垂らしてください」


渡されたのはナイフだった。


「…えいッ」


俺は指先に小さな傷を付けると反対の手を使い血を絞り出すようにして紙にこすりつけた。紙は淡く輝くと1枚の黒いカードになった。大きさはクレジットカードよりも一回り大きいくらいか。


「はい、これがギルドカードです。再発行にはお金がかかりますから無くさない様にしてください。それと、これが文字読みの首飾りです」


渡されたのは銀色のチェーンだった。飾りも無ければ何もないただの輪のようだった。


「それを付けると文字が読めます。これも次回からは有料になります。それでは、ギルドの説明をします。」


それからが長かったから纏めようか。


①ギルドカードには名前とクレジットカードと同じようにお金の管理が出来る。これは血を垂らした人の意思をくみ取り使用できるので他の人に使われることはない。


②ギルドカードの表には倒した中で一番の強敵が自動で記入される。裏面は強い順に上から表示され、表示しきれなくなると弱い方から順に自動で消えていく。ギルドにランクは無いが、表の魔物の強さでそれぞれの能力の高さの目安になってる。


③パーティーを組み討伐すると通常では白い文字が赤く色つきで記入される。また、パーティーの有効範囲は500メートル。


④魔物を倒して現れる魔石は魔道具の原料になるので宝石商には売らずに換金所で交換してほしい。


⑤掲示板はそれぞれ種類ごとに分かれている。護衛、輸送、採取、討伐、その他。護衛は依頼主や依頼物を護衛、輸送は期限内に指定されたものを指定された場所へ持って行く。この2つは失敗するとペナルティがつく。主に罰金で連続で5回失敗すると除名される。


採集は依頼がない場合でもギルドで買い取ってくれるが、依頼と比べると安くなる。最後に討伐。これは主に国や領主が指定した強力な魔物を討伐すること。討伐する時は兵士1人が同行する。万が一失敗してもペナルティはない。討伐失敗は全滅を意味しているので討伐を受けるにはそれなりの覚悟が必要。


その説明だけで30分くらいかかったかな?疲れたよパトラッシュ。


文字読みの首輪を首に掛けて、受付を後にする。掲示板を眺めると討伐が数枚、護衛は十数枚、輸送は十枚くらい、採取は綺麗に並べられて9枚あった。


討伐は報酬が万G単位で護衛は1日数百G、輸送は最低が1000Gだったが、高いのは数万Gとかあった。その他の掲示板は庭の草むしりやお使い、模様替えの手伝い、仕事の手伝いなどで簡単なものは10Gから、1日掛かりだと400Gのようだった。


再び受付に戻りベットの話をするが、今晩は満員との事。ちなみに、連続で3日以上はギルドのベットを使えないらしい。


俺は宝石、魔石を換金する為にギルドを出て換金所へ向かった。空は赤く染まり綺麗な夕日が見えた。


換金所へ入ると3つの受付があり、その1つだけが担当者が座っていた。年齢は40歳過ぎだろうか?体格の良い女性だった。


「お願いします」


俺は袋をカウンターに置くと女性が中の魔石を受け皿に出した。


「はいよ、5つだね?それじゃギルドカードもいいかい?」


出来あがったばかりのカードを女性に手渡した。


宝石をカウンターの中にある昔の円柱状のミキサーに入れギルドカードを台座の正面の平らな所に置いた。ミキサーは低く唸るような音を立てたが、すぐに聞こえなくなりチーンと電子レンジが調理完了をしらせるベルのような音がなった。


「はい、これで終わりだ、また来ておくれ」


カードを手渡されて中身を確認すると名前の下の空欄だった場所に500Gと表示されていた。


ふと、魔石が気になりミキサーを見ると女性はミキサーから石を取り出しゴミ箱に捨てていた。


「あの、これで泊まれる宿知りませんか?」


「それならココを出て少し先の左手側にある洞穴亭が安いし綺麗だよ」


「ありがとうございます。行ってみます」


俺は女性に礼を言うと換金所を出た。予想外に時間がかかったのか外は真っ暗だった。


道には多くの人が歩いていた。それぞれの腰にはランタンのようなものを腰につけ歩いていた。そのランタンの光は揺らめくこと無く一定の明るさのままのようだった。ランタンどころか、荷物も無い俺は月明かりを頼りに宿へ向かった。


目的の宿は直ぐにわかった。ミミズのような文字だが、はっきりと洞穴亭と読めてしまった。


中に入ると受付には大柄な女性が座っていた。まるでマツコDXのようだった。


「朝、夜の食事つきで400Gだよ」


「お願いします」


俺はギルドカードを渡すと受付の中にある宿泊名簿の上に置いてある水晶にかざした。すると、その宿泊名簿に俺の名前が浮かび上がった。


「はい、カードを返すわ。あと、コレが鍵、部屋は3階の中央ね。もう食事の時間だから早めに来ておくれよ」


「それなら先に食事にします」


「食道はこの先。直ぐにわかるわ」


通路を進むと食堂へと続いていた。半分ほど席が埋まっていたが、入口から少し離れた4人掛け用のテーブルに座った。すぐにウエイトレスのお姉さんが注文を聞きにきた。金髪でポニーテールという何か俺の好みどストライクだったが、どこか顔つきが受付のDXに似ていた。メニューは日本と変わらなかった。から揚げやステーキなど肉料理が中心だった。


俺って悩むと結構時間かかるんだよね。その時は必殺技だ。


「…お勧めをお願いします」


「はい、すぐに持ってくるね」


待つこと5分、食事する前に出したのが悪かったのか、お腹が空き過ぎて周りの人の料理を見ているだけで涎が止まらなかった。


「はい、おまたせー」


テーブルの上には丸いパンとステーキが並んだ。


俺はガツガツと詰め込むように食べた。空腹だからなのか普通に美味しかった。食後は満腹感と疲れからベットに倒れる様に寝てしまった。これが俺の異世界1日目だった。


翌日、宿で朝食を食べながら考えた。この後の生活をどうすればいいか?昨日調べた限りでは毎日を生きるだけの分しか稼げない。だったら、俺は魔石の換金で生きていく冒険者になるんだ。


しかし、残った100Gで武器は買えるのか?まぁ、いいや。とりあえず行ってみよう。


はい、やって来ました武器屋さん。奥からカンカンと武器を作っている音がする。


俺はここで衝撃の事実を見てしまった!


ショートソード500G


か、買えない…


100Gで変えたのはナイフ1本だけだった。


いいさ…、いつか、いつの日かでっけぇ剣を買ってやる!そんな事よりぃ!討伐しないと今夜は野宿になってしまうぞ!とりあえず町を出る前にギルドでこのあたりにいる魔物を事前調査をしなければ!魔力がある限り肉体再生するって言っても痛いのは勘弁だからな!


そして、ギルドに到着。受付には昨日の男性はいなかった。しかし、しかし!しかしぃ!若くて美人でボインボインな女性がそこに座っていた!受付の窓口は4つあるのにその人の場所だけは列を作っていた!


俺は空いている受付で周囲の魔物を聞くとホーンラビットとワッドウルフがいて少し離れるとゴブリンがいるって教えてくれた。


んじゃ、早速行きますか。早くお金貯めてカッコイイ剣を買いたいぜ!




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