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第四章 悪魔(1)

 深い霧に包まれたシンクレア大橋は、そこに一体いかなる効果が働いているのか、何人も対岸まで渡ること叶わない。

 しかし、その牢獄のような機能を持つ霧の向こうから現れる巨大な人影が一つ。

 灰色のアスファルトを踏みしめるのは、鋼鉄の如き光沢を宿す分厚い二つの蹄。馬の後ろ足に似た脚部だが、前脚は地面についていない、つまり、二足歩行。

 足から下腹部にかけて黒に近い茶色の毛皮に覆われているが、上半身は完全に人間の男の肉体である。

 分厚い胸板と割れた腹筋は、およそ日本では見かけることが出来ないほどに逞しく膨らみ、いっそ古代の英雄を象った彫像のようである。

 だが、首から先にあると思われた精悍な男の顔は無く、代わりに、下半身と同じ獣の頭部となっていた。

 その顔は、雄雄しい二本の角を生やした、山羊であった。

 山羊頭の半獣人、その姿は正しく悪魔(バフォメット)と呼ばれるものである。

 例えその名を知らずとも、一目見れば悪魔、化物、怪物、などなど、人外の異形であることを即座に認識するだろう。まして、その手には死を連想させる巨大な鎌が握られていれば尚更である。

 しかし、今はそれを恐怖と共に叫ぶ者はいなかった。

 無骨な大鎌を携えた悪魔がシンクレア大橋に姿を現した時、その路上には人どころか、この世界を闊歩するモンスターさえいなかった。

 そうして、誰に見られることもなく静かに出現した悪魔は、ひたすら真っ直ぐ歩みを進めて行く。何か、明確な目的地があるかのように。

 それが何処であるのかは、この悪魔自身の他に分かろうはずも無いが、一つの事実として、悪魔の行く先には、四人の小学生男女が集っているのだった。




 小夜子の絶交宣言から二日後、羽山たち四人は再び夢の世界へとやって来た。

 場所は変わらず一悶着あった道路の上。いや、その揉め事は今でも続いていると言うべきだろうか。

「なにグズグズしてんだ、今すぐ小夜子を探しに行くぞ!」

「会ってどうするのよ? 今度は槍、当たるかもしれないわよ」

 前回の顛末を今更思い返したのか、それとも単に思い出したくなかったのか。どちらにせよ、麻耶の一言で翔太は勢い込んで駆け出すのを止めざるを得なかった。

「じゃあ、どうしろって言うんだよ。小夜子をあのオッサンに任せるのかよ」

「それは……いえ、本当はあの時、私たちが黒乃さんを仲間に入れるべきだったんじゃないかしら」

 坂本麻耶は、その容姿に違わず小学生離れした頭脳でもって、この一件を冷静に省みていた。

 再びこの夢を見るまで現実では二日の時間が流れている。考える時間は十分に持てた。

 それと同時に、実生活の上で本当に小夜子は絶交状態になってしまったことを理解するのも、また十分であった。

 この二日間、小夜子とはついに教室で一言も言葉を交わすことは無かった。

 その癖、特に睨みつけるだとか、何かイジワルをされるだとか、そういった子供染みた恨みをぶつける行動は一切無く、彼ら四人がまるでそこに存在していないかのように扱う、自然なシカトぶりであった。

 それに少なからぬショックを覚えているのは、麻耶も翔太も同じであろう。

「ふざけんな、誰があんなヤツを仲間にできるかよ」

「確かに、怪しいことは怪しいけど、あの人が本当に悪い人なのかどうかは分からないじゃない。少なくとも、小夜子はあの人のことを凄く信頼している。そう、私たちよりも、ね」

 ちっ、とあからさまに不機嫌そうに舌打ちをする翔太。彼女の言葉を否定できない現れでもある。

「ねぇ、もし本当にあの人が小夜子の言うとおりの‘良い人’だったら、悪いのは見た目で遠ざけた私たちの方なんじゃない?」

 見た目で、というのは彼らにとって誰も否定しようも無い事実だ。

 突き詰めて考えれば、必ずしもそれが悪いとは言えない状況だが、見た目で半ば差別的に扱ってしまった事にたいしては、小学生でも罪悪感を覚えるに足るものだったようだ。

 麻耶の顔には後悔の念が浮かんでおり、特に口出しせず聞きに徹していた仲間の少年二人も、どこか決まりの悪そうな表情だった。

「なら、見た目通りアイツが悪いロリコン野郎だったらどうすんだよ」

 だが、翔太だけは頑なに黒乃を敵視するのを止めなかった。

 何故、彼がそこまで意固地になっているのか。ただの性分なのか、子供染みた思い込みなのか。そのどちらでも無いことを麻耶は察していたが、あえてそれを口に出すことはしなかった。

「その時は、アンタが守りなさいよ」

 故に、ここはより単純な説得の言葉を麻耶は選んだ。

「いつも言ってるみたいに、ね」

「い、いつもは言ってねぇよ!」

 翔太が慌てるように反論する。

 だが、結局のところ「小夜子は俺が守る」旨の発言をしたということは否定しなかった。

「小夜子だって、黒乃さんに謝れば許してくれるって言ってたし、ちゃんと非を認めて仲直りするべきよ。いいえ、私がそうしたいの」

「僕も、そうした方がいいと思うな」

「お、俺も……」

 真っ直ぐな謝意を表明する麻耶の言葉に追従するように、二人の少年も賛成の声を上げた。

「タカ、ヒロ、お前らもかよ……くそ、仕方ねぇな」

 参ったとばかりに頭をかきながら、翔太も渋々賛成せざるを得なかった。

 丸眼鏡の細身の少年タカ、本名佐藤(さとう)(たかし)と、ちょっと太めな丸顔の少年ヒロ、本名山田(やまだ)弘樹(ひろき)の二人は翔太の親友である。

 二人の意見を完全に無視してまで、自分の主張を押し通すほど翔太は傲慢では無かった。

「分かった、俺も謝るよ。けど、ホントにオッサンがヤバい奴だった時は、マジで俺の『セイバーナイト』でぶった斬るからな!」

「はいはい、頼りにしてるわよ」

 鼻で笑うんじゃねぇ! と怒る翔太をからかうように笑い声をあげる麻耶。

 この二日間、小夜子との事で思い悩んでいた彼らであったが、仲直りの目処も立ち、ようやく本来の小学生らしい明るさが戻っていた。

 しかし、そんな彼らのはしゃぐ声に導かれるように、

「ん、なんだ、アイツ?」

 悪魔が、現れた。




 俺と小夜子ちゃんは、賽銭箱の置かれている本殿の階段に腰掛けて、今日も逆向きに沈み行く夕陽を眺めていた。

 このワンシーンだけ切り取れば如何にもロマンチックに見えるかもしれないが、現実はそれほど気の利いたものではなかった。

「異常なんて、早々見つからない、か」

「そうですね……」

 今回この夢にやって来てから、俺は思い出した春風神社との関係をやや興奮気味に話したのだが、いざ、神社の秘密を探ろうという段階になると、やはり、それらしいものは何も無いという結論を突きつけられるに至った。

 この春風神社は以前に現実で見て回った時と全く同じ、これぞ夢の世界発生の原因、と見られるような分かりやすいファンタジーなアイテムやら不思議現象やらは見受けられなかった。

 おまけに神社そのものが小さいので、探す場所も限られている。あっという間に異常なしということが確認され、やや拍子抜けして小休止と相成った。

 俺は行き詰った思考を切り替えるように、別の話題を振ることにする。

「そういえば、あの四人のエクストラって、どんな能力なんだ?」

 別に誤解で襲われたことを気にしているわけではないが、この夢限定の特殊能力がどういうものなのかは純粋に興味がある。

 小夜子ちゃん曰く、彼らは強力なエクストラであるらしいし。

「えっと、それじゃあまずは麻耶の『ヒョウコ』から説明しますね」

 麻耶、ということは、あの水色の不思議な猛獣型のヤツか。しかし、まず気にするべきなのは、

「ヒョウコ? っていうか、エクストラって名前つけるものなの?」

「え、はい、そうですね、自分のエクストラの元になった名前をつけてますよ」

「……元になった?」

 小夜子ちゃんの説明に、さらなる疑問が深まる。

「あっ、すみません黒乃さん! 私、また説明するの忘れて――」

「いやっ、別に怒ってないから、気にしないで。でも、とりあえず順に教えてくれると嬉しいな」

 表情を曇らせる小夜子ちゃんへ素早いフォローをいれる。

 そこまで気に病むことは無いと思うのだが、うーむ、もしかしたら、未だに俺を怖がっている部分があるのかもしれない。

 小夜子ちゃんは俺を一人きりにさせまいと追いかけてきてくれた優しい子ではあるが、それがイコールで全幅の信頼というほどではないのだろう。

「えっと、エクストラは、アニメやゲームのキャラクターが元になっているみたいなんです」

「なるほど、だからどこかで見たようなデザインだったのか」

 しかし、そうなると俺の死神は何が元になっているのだろうか。

 いや、必ずしも特定のキャラクターが必要なのでは無く、脳内にあるイメージが適当にデザイン決定に関わっているだけなのかもしれないな。

 あの死神だって、一目でソレだと分かるようなモノだし、殊更にオリジナリティ溢れるデザインというワケでもない。

「はい、麻耶の『ヒョウコ』は『ガチャポンモンスター』っていうゲームのモンスターが元になってるみたいです」

「ああ、ガチャモンか、俺も昔やってたな」

『ガチャポンモンスター』略して『ガチャモン』は、俺が小夜子ちゃんと同じ小学五年生の時に発売された大ヒットゲームだ。ガチャポンのボールに色々なモンスターが入っていて、それを主人公が使役して戦う育成型RPG。俺も全部のモンスター(ガチャモン)をコンプリートしようと頑張った記憶がある。

 彼女の『ヒョウコ』というモンスターの姿を見ても即座にピンとこなかったのは、元々かなり子供向けにデフォルメされたデザインだったのが、現実に存在するにあたって生物的な特徴を持つ形になっていることだろう。

 それと、単純に俺が知らない『ガチャモン』の種類だったこともある。初代はプレイしたのだが、最近発売された『ガチャモン2』はプレイしていない。

「『ブリザドス』っていうガチャモンで、『ヒョウコ』っていうのはニックネームだって言ってました」

 おお、ちゃんとニックネームまでつけるとは、中々やるじゃないか。坂本は立派なガチャモントレーナーだな。

「名前と姿からいって、タイプは氷か?」

 はい、と肯定の言葉が返って来る。

 ガチャモンは分かりやすく、モンスターの色などで凡そのタイプ、使用する技の属性が判別できる。赤色だったら火を使い、黄色だったら電気を使う、というように。

「『ヒョウコ』の必殺技は口から吐く『氷結ビーム』です。当たったらどんなモンスターも氷漬けになります」




 突如として出現した山羊頭のモンスターを、最初に認識したのは翔太だった。

「ん、なんだ、アイツ?」

 悪魔としか言い様の無い容貌だが、ついこの間、恐ろしい死神にしか見えないヤツが同じエクストラ使いだったこともあり、即座に攻撃という判断を鈍らせた。

「止まりなさい、貴方は人間ですか?」

 それは麻耶も同じだったようで、すぐに誰何を問うた。

 答えは無言。

 悪魔は凶悪な鋼の光沢を秘めた大鎌を携えたまま、真っ直ぐ彼ら四人に向かって歩を進め続ける。

「コイツ、モンスターよっ!」

 危機感を全開にして叫ぶ麻耶。

 それを合図とばかりに、四人の少年少女はそれぞれが持ちえた戦う為の姿へと変化していく。

 真っ先に駆け出したのは、立ち位置が最も悪魔に近かった麻耶。

 その体は『ヒョウコ』と呼ぶ水色の猛獣へと姿を変えて、狼に似たシャープな口元を目一杯広げた。

 彼女が選択したのは、自身のエクストラが誇る必殺技『氷結ビーム』。

 それはゲームの中でも、この夢の中でも、彼女に勝利をもたらす最も信頼に足る攻撃だ。

 まして、相手は初めて遭遇するモンスター。しかも、スライムなどの雑魚と違って堂々と単独で現れたことを考慮すれば、いわゆる『ボス』とでも呼ぶべき格上の存在である可能性が高い。

 悠長に様子見や手加減など、出来るはずも無かった。

 ガアっ! と、甲高い咆哮と同時に、開かれた『ヒョウコ』の口腔から青く輝く光が迸った。

 オーロラのような煌きを伴いながら放たれた青い光の奔流は、無人の荒野を行くが如く悠然と歩き続ける悪魔の巨体へ迫る。

 悪魔は回避や防御といった行動をとる素振りを全く見せず、まるで自身に向けられた攻撃に気づいていないかのような反応であった。

 そして、ついに敵を氷結地獄へ叩き落す脅威の冷凍力を発揮する『氷結ビーム』は、狙い違わず悪魔へ直撃する。

「やった!」

 着弾の衝撃による乾いた爆発音と冷たい爆風が吹きぬける。

 爆心地たる悪魔の立っていた場所は、まるで大量の液体窒素でもぶちまけたかのように、白い蒸気のような煙が濛々と立ち上り、その場で完成したであろう‘氷像’の姿を隠していた。

 命中さえすれば、どんな相手でも体の芯まで氷漬けにできる『氷結ビーム』だ、すでに勝負はついた。

 そして、それを証明するかのように、白煙の晴れた爆心地には焦げ茶色の毛皮と浅黒い肌の悪魔が、全身真っ白い雪化粧を施された姿があった。

 いつも通り、見慣れた氷漬けの死体を確認し、誰もがエクストラを解除しようとした矢先、ギシリ、と不気味な音が鳴る。

「え?」

 氷像が、動いていた。

 先と全く同じ、その歩みに一切鈍ること無く、悪魔は再び一歩を踏み出していた。

「そんな、嘘でしょ――」

 麻耶の呟きを掻き消すように、悪魔からはバキバキと大きな音を立てて、全身に纏わりついていた‘だけ’の雪と氷が崩れ落ちていった。

 三歩も歩けば、そこには、何も変わらぬ不気味な姿の悪魔が復活していた。




「魔法使いとロボットは、それぞれ佐藤君と山田君のエクストラです」

 眼鏡の少年が佐藤崇、俺に火の玉をぶっ放してくれた赤い魔法使いで、太めの少年が山田弘樹、タックルをしかけたモノアイロボだ。

 アレも『ヒョウコ』と同じように元ネタがあると知った今となれば、凡その察しがついた。

「魔法使いは『ドラゴンファンタジー』の『ファイアーマージ』、ロボは『機動騎士ガンダイン』の『量産型ザリグ』か」 

「えっ、知ってたんですか?」

「どっちも有名な作品だからな。見た目だけなら知っている」

『ドラゴンファンタジー』と『機動騎士ガンダイン』は両方とも、俺が生まれる前からある超有名なゲームとアニメだ。

 RPGといえば『ドラファン』、ロボットアニメといえば『ガンダイン』、各ジャンルの代名詞と言っても過言ではない存在だ。

 古い作品なので一作目はプレイも視聴もしてはいないのだが、シリーズは今でも続いているので色々な折に目にする事がある。それこそ、小学生の彼らは『ドラファン』と『ガンダイン』の最新作をよく知っているだろう。

「佐藤君の『ファイアーマージ』は、えっと、黒乃さんはもう知っていると思いますけど、火の玉を撃ちます」

 まぁ、身をもって体験したからな。

「ゲーム通りの技が使えるなら、他にも色々あるんじゃないのか?」

 正式な技名までは分からないが、確か『ドラファン』の魔法使いはマップ移動用のテレポート、死んだ者まで蘇らせる治癒魔法、隕石を落とす必殺技、などなど、現実的に考えればとんでもない効果の魔法が使えるはずだ。

「今は『ファイアーボール』しか使えないはずです。メテオなんとかが使えるようにレベルアップを目指しているって言ってましたよ」

 メテオなんとか……どう考えても隕石を落とす魔法を習得したがっている。

 まぁ、この夢の世界に数字でカウントされるレベルアップシステムがあるのだとすれば、覚えるのは当分先の話になるだろう。

「『ザリグ』はどうなんだ? あれもアニメの中でマシンガンとかミサイルとかエナジーアックスとか、色々と武器があるはずだけど」

「まだ武器は出せないみたいです。その代わり『ザリグ』は大きいから、みんなの中で一番力が強いんですよ。背中からブワーって火を噴いて突進します」




「下がれ麻耶っ! ソイツに氷は効かねぇみたいだ!」

 必殺の『氷結ビーム』を難なく破られ動揺する麻耶だったが、翔太の呼びかけが聞こえないほど茫然自失になったわけではないようだった。

 水色の獣は素早く身を翻して、悪魔の接近から逃れるように下がる。

「奔れ、紅蓮の炎よっ! ファイアーボール!」

「ザリグ、行きまーすっ!」

 麻耶の『ヒョウコ』と入れ替わるように、背中に装備されたブースターを全開に噴かせて、その巨体に見合わぬ高速で突撃する弘樹の『ザリグ』。

 そして、さらにその先を追い越し悪魔に向かって撃ち出された火球が、緋色の尾を引きながら飛んでいく。

 スライムやゴブリンなどの「雑魚」と彼らが呼ぶモンスターを、群れごと吹き飛ばす爆発力を秘めた自慢のファイアーボールは、やはり、全く無防備に歩き続ける悪魔に向かって、寸分違わず着弾した。

 轟音、爆風、しかし先とは全く温度が逆転する灼熱地獄が悪魔を包む。

 未だ爆発の威力を物語る黒煙が晴れぬまま、『ザリグ』はミサイルのような勢いで爆心地へと飛び込んだ。そこには、未だ悪魔が立っていると予想して。

「うぉおおおお!」

 雄叫びを上げ、自慢のパワーをフルに生かしたタックルが炸裂する――はずだった。

 ガツン、という金属がぶつかる音。

 それこそ映画の中で車がクラッシュするシーンでしか聞いた事が無いような、不吉な破壊音が轟く。

 悪魔とロボットが激突した衝撃でその場を包んでいた黒煙は吹き飛び、そこが今どういう状況になっているのか一目瞭然となった。

「う、うわぁあああっ!?」

 勇ましい雄叫びから一転、悲痛な叫び声をあげるのは、紛れも無く弘樹。

 アメフトのタックルを決めるように肩を突き出す、しかも分厚い鋼鉄の装甲には大きな棘が生えており、それを突き刺すような形で突撃した『ザリグ』だったが、今やその勢いは完全に止まっていた。

 なぜなら、悪魔が己の腕で受け止めたからだ。左腕一本、事も無げに。右手に握られた大鎌は、そのまま肩に担いだまま。

 まるで、じゃれついてきた子犬を撫でるかのように、余裕に満ちた体勢。

 しかし、相手は自身の角の先まで含めた高さを超えるほどに大きな体格を持つ鋼鉄の人型。

 そして、そのロボットは今もブースターから青白いロケット噴射を全開にして、必死に悪魔を打ち倒そうとしている。

 その異様な膠着状態は、過ぎてしまえば数秒の事だった。

 悪魔はタックルの最先端である肩の装甲を抑えていた左手で掴んだまま、無造作に放り投げた。空き缶でも投げ捨てるように軽々と。

 『ザリグ』の鋼鉄の巨体が、空中で二転三転しながら放物線を描いて飛んでいく姿は、どこか出来の悪いギャグのようにさえ見えた。

 それほど現実感の無い光景。例え、ここが夢の中であると分かっていても。

 すでに、弘樹の叫び声すら聞こえなかった。

 耳に届いたのは、路面に不恰好な胴体着陸を決めるロボットが奏でる、鋼の悲鳴だけだった。




「でも、一番強いのは羽山君の『セイバーナイト』です」

 凄い殺気だったからなあの西洋鎧は。

 まぁ、それを無しにしても、光る剣で武装していたことを思えば、武器無しの『ザリグ』よりも一歩進んだ能力を持っていると言えるだろう。

「あれの元ネタはなんなんだ?」

「『セイバーナイト』は『エレメントマスター』に登場するキャラクターだって言ってました。私は見て無いので詳しい事は分からないですけど」

 うむ、俺も見てないから分からない。しかし、一つの予想はできる。

「もしかして『エクストラ』って言い出したのも羽山か?」

「はい」

 恐らく、先に『セイバーナイト』が覚醒して、そこから『エレメントマスター』というアニメ作品繋がりで命名したのだろう。

「『セイバーナイト』は『ライトニングカリバー』っていう剣を使うんですけど、光っている時は凄い切れ味です。コンクリートブロックも簡単に切れちゃいました」

 俺はそんな物騒なもので斬りつけられていたのか。死神でも防ぎきれたかどうか……まぁ、試してみる事は金輪際ないだろう。

「それと、黒乃さんを襲った時には使っていませんでしたけど、『リフレクションシールド』という盾も使えます。盾に当たった攻撃を、そのまま跳ね返すみたいです」

 その盾の効果が最も分かりやすく確認できたのはゴブリン戦だったという。

 ヤツらが投石攻撃をしかけた時に、その『リフレクションシールド』に当たった石は飛んできた勢いのまま跳ね返ったらしい。

 ただの頑丈な盾というだけでなく、やはり物理法則を超越した魔法の能力を、ここでは現実に出来るのだなとしみじみ感じる。

「それに『セイバーナイト』は武器が無くても普通に強いです。鎧を着ているのでとても硬いですし、力もあります。モンスターがどんなに沢山現れても『セイバーナイト』は倒せないと思います」




 三人は路面に打ち付けられて動かなくなった『ザリグ』へ視線を向けるだけで、その場から動くことも、何か言葉を発することも出来ないでいた。

 それも無理は無い。エクストラと呼ぶ特殊な能力を使うことで、これまでスライムやゴブリンなどのモンスターを簡単に蹴散らしてきた彼らにとって、仲間の一人があっさりとやられてしまうシーンを目にするのはどれほどの衝撃だっただろうか。

 現実ではありえない強い力、そして、その力をぶつけるに相応しい‘都合の良い’相手、夢という場所、どれをとっても彼らから危機感を奪い去るには十分過ぎる環境であったといえる。

 つまるところ、彼らはリアルなゲームでもしているかのような気分であった。

 しかしその意識はもう、エクストラ能力ごと倒しうる強力な‘モンスター’が現れたことで覆った。 もし、力及ばずこの悪魔に負けたら? いや、誤魔化さずよりハッキリと言うならば、殺されればどうなってしまうのか?

 小学生という子供にとって、どこまでもスリリングな夢の世界は今、自身の生命を脅かす悪夢へとその性質を変えていた。

「くそっ、テメぇ、よくもヒロをやりやがったなぁ!」

 だが、翔太の口をついて出たのは悲鳴でも泣き言でも無く、どこまでも勇ましい叫び声だった。

 果たして、それは脅威を認識しない現実逃避的な怒りなのか、それとも、己なら悪魔を打ち倒せると心の底から信じているからか。

 どうであれ、この場で戦う意思を見せるのは、もう翔太一人しか残っていなかった。

 硬直する『ヒョウコ』と『ファイアーマージ』を後ろに残し、自慢の剣と盾を携えた『セイバーナイト』は鎧の奏でる金属音と共に飛び出した。

 辿るのは『ザリグ』のブースターが路面に引いた黒い焦げ後。向かう先には勿論、悠然と歩みを進める悪魔の姿。

 その巨大な鎧姿に見合わず、存外に素早く駆ける『セイバーナイト』は赤いマントを翻しながら、瞬く間に悪魔へ肉薄する。

「うぉおおおおおっ!」

 振り上げるのは、斬れぬものは無いと断言する光の剣『ライトニングカリバー』。眩い白光を宿す刀身と、それを振るう白銀の騎士は、如何にも悪魔を討つに相応しい姿に見える。

 そして、そのイメージを現実のものとするべく、翔太は渾身の力で右腕に握る『ライトニングカリバー』を振り下ろした。

 一閃。虚空に描かれた白い軌跡は、ふいに途切れていた。

「――あ?」

 最初に気づいたのは、敵である悪魔の姿。肩に担いでいたはずの大きい鎌が、いつの間にか横に振り切った右腕の先に握られている。

 次に違和感、確実に悪魔を切り裂く間合いにいた、避けられることも、防がれることも無かった。

 ならば、吹き出しているはずの血、果たして悪魔の血の色が赤色であるのかは不明だが、とにかく、何らかのダメージを与えた反応と現象が起こって然るべき。

 だが、それが全くない事への違和感だった。

 その次は疑念、手には相手を切り裂いた感触は無く、まるで空振りでもしたかのような手ごたえであった。外したはずが無い、この近距離で。

 最後に、ようやく状況を認識するに至る。

 決め手は、横から聞こえてきた、鋭い刃が路面に突き刺さる甲高い音だった。

「あっ、あ……」

 手にする光の剣には、刀身の半ばから先が消えていた。その消失した切先は、自分の数メートル脇に突き立っている。

 悪魔が大鎌を振るって迫る刃を斬り飛ばした。言ってしまえば、ただそれだけのことだった。

 そして、その事実に対して翔太が何かを言う前に、悪魔は次のアクションを起こしていた。

 鎌を握る手とは逆の、つまり、無手の左腕が上がる。

 その動作がやけに遅く見えたのは、危機を覚える翔太の肉体がスローモーションに見せただけなのか、それとも、本当に遅かったのか。

 どちらにせよ、翔太はその間に何とか反応することができた。ほとんど反射的に、左手に握る盾、『リフレクションシールド』を体の前に掲げる。

 次の瞬間、悪魔の左腕が奔った。

 ゴウっ、という不吉な風切り音を響かせて、硬く握られた悪魔の拳が真っ直ぐ突き出される。ストレートパンチ。

「っ!?」

 巨大な鐘を二つ正面衝突させれば、そんな音が鳴ったかもしれない。二重に響く鈍い金属音。だが、どこかガラスの割れる甲高い響きにも思える。

 それは自身の鎧と同じ白銀の輝きで彩られた盾が木っ端微塵に砕けたからかもしれない。

 盾の中心に描かれた十字の文様に向かって、吸い込まれるように悪魔の拳が炸裂した瞬間、『リフレクションシールド』はその名の通り、叩き込まれた衝撃を反射した。

 しかし結果的には、まるで効果が発動しなかったように『セイバーナイト』が一方的に殴り飛ばされただけに見えた。

 悪魔は左腕を振りぬいた体勢のまま、泰然とその場に立っている。

 対する『セイバーナイト』は先の『ザリグ』と同じように宙を舞う。

 どれほどの重量があるか判らない全身金属鎧の巨体が冗談のような速さで吹き飛んでいく。滞空時間は一瞬で終わる。

 白銀の騎士を迎えたのは、厚い強化ガラスで作られた両開きの扉。イメージカラーである青と白で彩られたコンビエンスストアの出入り口である。

 居眠りやら酔っ払いやらが稀に引き起こす、交通事故と言う名のダイナミックな入店方法と同じ末路を『セイバーナイト』は辿る。

 超重量の鎧冑は易々とドアを粉砕し、店内に設置されたレジや棚を巻き込む盛大なガラガラ音をたて、店を崩さんばかりの勢いで壁にぶちあたり、ようやくその動きを止めた。

 日常の象徴ともいえるコンビニと、非日常の体現である白銀の鎧はどこまでもアンバランス。いっそシュールと呼べるほど。

 しかし、何かと格好をつけたがる翔太がそれを気にすることはできなかった。

 彼はとっくに気絶していた。

 同時に、『セイバーナイト』への変身が強制的に解除され、羽山翔太は知らぬうちに、本来の少年の姿に戻ってしまっていた。




「あの四人は全員、ゲームかアニメが元ネタになっているけど、小夜子ちゃんはどうなの?」

「え、私……ですか?」

 何故か言いづらそうな反応、ひょっとして地雷を踏んだか? 小夜子ちゃんは自分のエクストラが弱いことを気にしていたから、下手な事を聞くのは妙にコンプレックスを刺激して拙いのかもしれない。

「いや、言いたくなければ別に――」

「あっ、いえ、違うんです、私のは多分、言っても分からないと思って……その、人気のある作品じゃないので……」

 なるほど、元ネタがどマイナーな作品だから、言うのはちょっと恥かしいという事か。

「『聖天使サリエル』っていうアニメなんですけど、知らないですよね?」

「いや、見たことは無いけど、知ってるよ。『フェアリープリンセス・リリィ』の前にやってたアニメだよね?」

「ええっ、黒乃さん知ってるんですか!?」

 小夜子ちゃんの嬉しそうな笑顔がなければ、何で高校生男子が日曜朝の女児向けアニメなんて知ってるんだよ、というどん引きな台詞に聞こえただろう。

 まぁ、普通は知らないのだろうが、そこは一応、俺もオタクの部類に入る人間である。見た事は無くとも、アニメに関しての話題は色々と耳にしている。

「うん、あらすじくらいは聞いた事あるよ」

 そして、その評判も。

 小夜子ちゃんが自分で言ったように、この『聖天使サリエル』というアニメは人気があるとは言えない。いや、ぶっちゃけて言えば、女児アニメ史上ぶっちぎりNO1で人気が無い超絶不人気作なのである。

 作品の設定としては、童話のようなファンタジー世界で、主人公の少女サリエルが聖天使と呼ばれる魔法の戦士となり、悪の魔王が率いる魔族軍団に戦いを挑む、というどこかで聞いたことあるようなありがちなもの。

 絵柄も妙に個性的ということも無く、歴代の女児アニメヒロインと並べても違和感の無い、無難なキャラクターデザインだ。

 だがしかし、このアニメは致命的なまでにキャラ設定と演出と脚本が拙かった。

 まず主人公であるサリエルは無表情無感動の人形のような少女で、手にする槍で異形の魔族を淡々とターミネートし続けるのだ。しかも血がドバドバ出る、深夜アニメもビックリなグロ表現である。

 流石に非難が殺到したのか、中盤からモザイクが入るようになったのだが、それがかえってグロテスクさを増したりもした。

 そして何よりも問題なのは、サリエルは途中で魔王に恋して魔族の側へと寝返ることだ。一次的にではなく、最終回までそのまま。味方である人間と、敵である魔族の対立に思い悩む――ということもなく、酷くあっさり人間側を裏切るサリエル。

 物語後半はひたすらに魔王と一緒に人間を殺戮しまくり、その勢いのまま人間の国家を滅ぼしエンディングを迎えるのだ。女児アニメ史上、最も血生臭いFinのカットが見られる伝説のアニメだ。

 全く、最終回まで放送できたのが奇跡的である。よくPTAのクレームに屈しなかったものだ。

「えーと、小夜子ちゃんはアレが好きなの?」

「はい、大好きです!」

 もしかして、小夜子ちゃんはスプラッターなホラー映画を愛好するみたいな、そういう趣味の子なんだろうか。

 オタクの俺が人様の趣味にどうこう口出しはしないが、一緒にその趣味に付き合うのは、ちょっと勘弁願いたい。

「あー、それじゃあ小夜子ちゃんの槍は、サリエルが使ってた武器なんだ」

「はい、だからレベルアップすれば、色んな技が使えるようになったり、サリエルの衣装も着れるようになると思って、少し楽しみです」

 そう言ってはにかむ小夜子ちゃんはどこまでも可憐だが、エクストラを極めると元ネタ通りの殺人マシーンになるのかと思えば、ちょっと複雑な心境になる。

 いや、そんな悪い想像はやめよう。きっとコスプレを楽しむくらいの、軽い気持ちだろう。

 エクストラが強くなったからと言って、元ネタと同じ存在になるというワケではないのだから。

「何か、今回はほとんど話してただけで夢が終わりそうだ。ほら、もう陽が沈む」

 太陽は夕焼けと同じ不気味な赤色を海にもぶちまけながら、水平線の彼方へと消え行こうとしている。

「でも、黒乃さんと沢山お話できて、とっても楽しかったです」

 向きの狂った日没を背景に微笑む銀髪の少女は、ただひたすらに美しい。このまま時間が止まればいいのに。柄にも無く、そんなロマンチックな思考をしてしまうほど。

 俺は半ば見蕩れるように彼女を見つめながら、次の瞬間には、もうこの夢が醒めてしまうことを認識した。

 ついに太陽は消滅し、完全な闇が世界を覆いつくしていく。




 気がついて、最初に認識できたのは黒と赤のコントラスト。

「うっ……」

 ぼんやりとする頭と目の焦点が戻るにつれて、ここが電気の消えた薄暗いコンビニの中で、大破した入り口とガラスの壁面から見慣れた血色の夕焼け空の光が差し込んでいることが分かった。

 どれだけ気絶していたのだろうか、羽山翔太は疑問に思うが、未だ夢が続いていることを思えば、そんなに長い時間ではないだろうとすぐに察することが出来た。

「く、くそっ……あの悪魔野郎……」

 翔太は悪態をつきながら、生まれたての小鹿のようによろよろと立ち上がる。それだけ肉体が重く感じた。

 だが、立ち上がれないほどの重傷を負っていないのは幸いである。

 もっとも、それに気づけるほど今の翔太に余裕は無いのだが。

「ちくしょう……変身、解けてんのかよ」

 日用品と食料品と煙草が散乱する床を眺めながら、自分が悪魔に殴られてここまで吹き飛び、そのまま意識を失いエクストラも解除されてしまったのかと考えをめぐらせた。

 ならば、俺は負けたのか、という屈辱に身を震わせる。

 いいや、まだ、まだ俺は負けていない――敗北を受け入れない不屈の心を燃やす翔太だが、その気持ちに『セイバーナイト』は応えなかった。

「あっ、なんだよ、くそっ、エクストラが発動しねぇ……」

 手ごたえは感じるが、それに体がついていかない。

 頭ではどうすれば良いのか分かっているし、エクストラの存在も感じられる。しかし、体力と精神力の限界だった。

 まるで、マラソン大会でゴールした直後に、もう一度同じ距離を走って来いと言われるような感覚。ようするに、無理なのだ。

 一度エクストラの変身を破られると、すぐに再発動ができないという事実を、翔太はこの時初めて知った。

 当然と言えば当然、これまで『セイバーナイト』を打ち破る強敵など存在しなかったのだから。むしろ、このタイミングで知るに至ったのは必然とも言える。

 そして、今や完全に無力な子供に戻ってしまった翔太の前に、

「ま、マジ、かよ……」

 再び悪魔が現れる。

 これも考えてみれば当然とも言える。わざわざ向こうから襲い掛かってきたのだ、見逃してもらう道理などどこにもない。

 しかしながら、僅かとはいえ気を失っていた翔太がこうして目覚めるまで手を出されなかったのは如何にも不自然に思えるが、コンビニの崩れた扉の前に立つ悪魔の姿を見れば、それが何故なのかすぐに理解できた。

 悪魔は相変わらず大鎌を肩に担いでいるが、無手であった左腕には、三つの人影が抱えられていた。 死んでいるのか気絶しているのか、ぐったりした様子で動かず、まるで荷物のように脇に抱えられているのは、紛れも無く坂本麻耶、佐藤崇、山田弘樹の三人だ。

 つまり、悪魔は今の今まで三人の子供を回収していたから、翔太は放って置かれていたのだ。そして、今度は自分に順番が回ってきた。ただ、それだけのこと。

「く、来るな……」

 翔太の口からは「仲間を離せ」という勇ましい台詞はついに出てこなかった。

 事ここに至って、ようやく自分が抗う術など持たない弱者、それこそ、大人と子供ほどの差があるのだと気づく。

 そんな絶望的な状況は、翔太の心中などお構い無しに進行してゆく。

 悪魔は長い二角の生えた頭部が引っかからないように屈みながら、コンビニへと侵入してくる。硬い蹄が床を打ち鳴らすカツンという音が、妙に響いて聞こえてきた。

「う、うわぁああああっ!」

 悲鳴をあげ、反射的に悪魔から離れるように走り出す。

 だが、三歩目で転がっていたコーヒーの缶を踏んづけて、翔太は転倒する。

 それでも持ち前の運動神経と反射神経は、そのまま頭を打ちつけるような無様は許さず、素早く両手で受身をとらせた。床に散乱した商品を押し退けて、再び立ち上がる。

 しかし、そのタイムロスはあまりに致命的だった。

「ひっ!?」

 気づけば、悪魔は自分のすぐ前に立っている。

 不気味に輝く黄金の瞳がギョロリと動いて、己の腹部に届くかどうかといった背丈の翔太を睨みつける。

 かすかに漏れる鼻息、山羊の半身から漂う獣臭。圧倒的な存在感。

 翔太はもう、その場から一歩も動くことが出来なくなっていた。視界の端に映る動かない友人の姿が、未来の自分を暗示する。

「あっ……あ……」

 悪魔の右腕が動く、巨大な鎌を手にしたまま。

 差し込む夕陽に照らされた無骨な刃はどこまでも赤く、否応にも血染めを連想させる。

 そして次の瞬間には、本物の血で刃が真紅に染まるのだろうと、翔太は最後に思った。

 振り下ろされる凶刃。

 だが、その刃が身に届く直前に、翔太の視界は暗転した。悪夢からの目覚めだった。

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