00‐03「召喚:Citation」
そこは薄暗い正六角形の部屋。
その部屋の中心部には青白く発行する円が描かれている。そして、それはただの円ではない。
きれいな六芒星を描いていて、その周りに無数の文字が刻まれている。
それを囲むのは、六人の宮廷魔法師たち。
六芒星のそれぞれの頂点の延長線上に立っている。
そして、国王だろうか? それを見守る豪華絢爛な法衣をきた壮年の男性。
さらにその護衛の男が二人。片方はハルバードを肩に担ぎ、他方は弓を構えている。
合計で九名の人物が、この部屋に立っている。
そんな中で、六人の魔法師たちが天井に向け、各々の杖を掲げ詠唱する。
「J Xjti Csbwf Qfstpo Uptbwf Uifxpse.」
木霊するのは、何処の言葉とも判別つかない言葉。
この言葉は正統王国フレクリムの長い歴史の中で蓄積されてきた“意味ある言葉”。魔法に精通したもの以外には意味を理解することは不可能だろう。
呪文を唱え終わった後には、静寂が訪れた。
最後に、宮廷魔法師のうちの一人。もっとも
するとどうだろうか? 眩い光が室内を埋め尽くす。
暫く立って、その光が収まったとき、円の中央には一人の少女がたたずんでいた。
「ここは、一体どこ?」
その少女はそうつぶやいた。
と、そこでようやく自分を取り囲むものたちの存在に気付いたのだろう。
「だ、だれ?」
そう言って警戒するような声だが、その声は若干だが上擦っていた。
「ふむ…………。そなたの名は?」
その問いに対し、言葉を返したのは国王だった。
だがそれは、少女の問いの答えとはなっていない。
「…………先にこっちの質問に答えてくれる?」
少しは落ち着いてきたのか、さっきよりは力強い少女の声。
「それもそうであるか。わが名はレリック・ド・グランカニコス・アームストリークス。さて、次はそなたの番だぞ?」
レリックと名乗った男は、少女に無言の圧力をかける。
少女も少女で、自身の身になにが起きたかをだいたいは察しているのだろう。
ならばとるべき行動は一つ。ここは情報収集に努めるべきである。
「……私の名前は初月真緒。そうね、こっちの世界だとマオ・ウイヅキって言った方がいいのかしら?」
その少女――真緒は国王に向けてそう言った。
「ほう。マオ・ウイヅキよ。我が正統王国フレクリムに歓迎しよう」
国王のその言葉とともに、傍に立っていた護衛の二人が真緒の近くに移動した。
「そのものたちは、我が国の騎士団の者たちだ。ハルバードを持っている方が騎士団長を務めているラルズシャーチ・S・レオンハルトだ」
国王の紹介と同時にラルズシャーチは頭を掻きながら付け加えた。
「まあ、長ったらしいがろうから適当にラーズとでも呼んでくれ。んでこっちが弟のコーラルだ」
そうしてラーズは傍にいた弟の背中をたたく。
不意のことだったのでバランスを崩したコーラルだったが、体勢を立て直し手から会釈し、自己紹介をした。
「えっと、コーラル・R・レオンハルトです」
二人は己の得物を地面に置き、膝を立ててしゃがみこんだ。
「えっと……二人とも一体何をしているんですか?」
若干動揺しながらも真緒が二人にそう訊く。
「二人はマオに忠誠を誓ったんだよ」
だが答えはその二人ではなく、別の人物から帰ってきた。
「えっと、誰?」
声のした方を振り向き、真緒は先程声を発した魔法師の少女に話しかけた。
「私の名前はアリエス・フォン・アームストリークス。気軽にアリエスって呼んで?」
そう言ってにっこりとほほ笑むアリエス。
と、真緒はそこで何かに引っ掛かったようだった。
「え? そのアームなんとかってことは…………」
「そうだよ。一応私はこれでも第二王女ですから」
そう言って、あまり…………いや、年相応に育った胸を張るアリエス。
とはいっても、まだまだあどけなさが残る程度の年齢な訳だが。
「じゃあ、アリエス様って呼んだ方がいいのかな?」
「ん? あ、べつに様なんてつけなくていいよ。私ってそんなかたっくるしいのあんまり好きじゃないし」
にこにこと笑うアリエス。
「うん。わかったよ、アリエスちゃん」
真緒がそう言うとすぐさまアリエスが彼女に抱きついた。
「うん♪ これから長い旅になるかもだけどよろしくね、マオ?」
アリエスがしたから私の顔を覗き込む。
そうか……予想はしていたけど、やっぱり長い旅になるのか……。
「こっちこそよろしくね、アリエスちゃん」
そう言ってお互いに見つめあっていたら、唐突に咳ばらいが聞こえた。
あわてて視線を咳払いした張本人である国王に移す。
「さて、マオ・ウイヅキよ。そなたには勇者として魔界に住まう魔王を倒してほしい」
国王からの願いは、その、何というかありきたりなものであった。
もっとも、この世界に生きる人たちにとっては大変なことなんだろうけど。
「わかりました」
さてと、国名もこの間風音から聞いた世界の国名とも違っていたし、この世界に勇志がいるかもしれないしちょうどいいや。
そう思って真央はその任を二つ返事で引き受けた。
それがのちにどんな影響を与えるかを考えないで……。
いや、この時すでに影響は出始めていたのかもしれない…………。
皆さま、あけましておめでとうございます。
ほかの更新分を先に読んだ方には少しくどいかもしれませんね。
しかし、私が皆様の読む順番は操れません。
致し方のないことと、なにとぞご理解ください。
さて、前の話を書いたのが一昨年(2011年)の8月ごろ。
果たして当時の私が一体何を思ってこの小説を書いていたのか、私にも思い返すことができません。
しかも、今回の話につながる重要なパートはまだ描きあがってない(みうのき7話参照)。
そんなわけで長い間放置しましたがたぶんまた放置になるのかなと思います。
よし、次の話は15000字くらい書こう。
そして4月ごろあげよう。
うん、そうしよう。
そんなわけで、今日はこの辺で筆を置かせていだたきます。