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夜宙舞う光の彼方

作者: 宵影
掲載日:2026/03/12

昔々、誰かが語る夜のこと。

夜宙に舞う光の彼方に、一人の少年が現れる――その話だ。

語る者は、遠くから少年を見た者の記憶だけ。

主人公は誰でもない。けれど、彼の存在は、夜空の中で確かに輝く。

昔々、ある夜のこと。誰が語るのかは分からない。夜宙に舞う光の彼方に、一人の少年が現れる――そんな話だ。


その少年は、人と会うことがとても少なかった。これまでの人生で、たった三人しか会ったことがない。名前も年齢も分からない。生まれた環境はあまり良くなかったが、ある日、誰かに出会って世界の色が変わった。その人から指輪を貰ったらしい。形も意味も、本人は分からないままだ。でもなんとなくその少年は左中指にはめた─


最初に会ったのは、夏の森で虫取りをしていた少年だ。日が沈み、迷った林の奥で彼を見つけた。普通の少年のように見えたが、その瞳は月明かりに吸い込まれるように輝いていた。「空を見ると、心がフワフワするんだ」と小さな声で言った。安心のような不安のような、得体の知れない感覚に引き込まれる―。それが、彼を見つめる者の心に残った。


次は、春の夜桜の下。夜行性の女性が、人影の少ない花見の場所に向かうと、傘もささずに雨の中を駆け回る彼の姿があった。濡れた髪と衣服に夜雨の光が反射し、幻想的だった。名前を尋ねても答えず、仕方なく彼女はその子に名前をつけたが、今では思い出せない。


三つ目は、秋の裏山で肝試しをしていた少年。ゴール直前に見つけたのは、闇の中にぽつりと立つ彼の姿だった。友達は怖がって近づけなかったが、会話を交わした少年だけが、その短い時間を鮮やかに記憶した。「君、お化け?」と尋ねると、首を横に振るだけだった。時が止まったかのように感じた数分間。それは確かに、日常とは違う時間だった。


どの日も、彼が現れるのは夜。満天の星空の下、月が主役の夜もあれば、雨粒が光る夜もある。出現場所はランダムで、会えるかどうかは運次第。夕日を見たのは人生で一度きり。小麦畑の向こうに沈むその光景は、彼の心に深く刻まれた。


少年は食べ物を食べることもある。会った人たちによると、人と一緒に食べるご飯は格別に美味しそうに見えるのだそうだ。名前も、時の感覚も、未来も――そのすべてが謎のまま。それでも、少年はこのまま自分のままで生きていくことを選ぶだろう。


夜宙に舞う光のかなたで、少年は星を見上げ、またどこかで現れる。誰かが見ても見なくても、その存在は変わらない。語り手も、主人公も、誰も特定されない。だけど、少年のことを覚えている者たちの記憶の隙間で、彼は確かに生きているのだ―

まずは読んでくださり、ありがとうございます☺️

初めての宵影として作品を出させて頂きました✨️

この作品は世界観や、あの子の不思議感を消さないように微調節して作りました。

私自身もこの物語を書きながら、宵影の謎や星空の景色に何度も心を奪われました。

気に入ってくれると幸いです。


もし「夜宙舞う光の彼方」を読んでくださった方がいたら、続編として、この子の過去や、ある人との出会いを描いた作品も書こうと思っています。

どうぞ楽しみにしていただければ嬉しいです✨

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― 新着の感想 ―
初投稿おめでとうございます! 「主人公は誰でもない」という語り口から始まり、断片的な目撃証言を通して一人の少年の輪郭が浮かび上がる構成が、まるで夜空の星座を繋いでいくようでとても幻想的でした。 特に…
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