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第7話:距離の哲学
カイは森の小道を歩きながら、昨日の戦いを思い返していた。
肩のクレイモア、腰のクロスボウ。体は自然に動く。
距離を測り、敵の動きに応じて踏み込み、引き――それが自分の戦闘スタイルになりつつある。
ふと茂みの奥に、昨日見た影の人物の姿が見えた。
短い槍を左に、投げ槍を背に構え、木々の間を滑るように歩く姿は、昨日と変わらない。
カイは足を止め、少し距離を取ってその動きを観察した。
踏み込みの幅、引きのタイミング、敵との間合いの取り方――すべてが無駄なく計算されている。
言葉はない。声もかからない。
ただ、体で示すだけで、戦う者としてのリズムや距離の感覚が伝わってくる。
カイは思う。
——距離を制することが、生き延びることにつながるのかもしれない。
影の動きは真似できないが、体で感じ取ったことを、自分の判断で使えるかもしれない。
夕暮れが森を染める中、カイは静かに歩き出した。
自分の間合い、自分のリズム、そして自分の判断。
少しずつだが、間合いを意識する冒険者としての感覚が、体に染み込み始めていた。




