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悪役転生でストーリー変わったので……本来の主人公に転生した俺はスローライフを満喫するために元悪役を全力で応援します  作者: 製本業者


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18. クラン セブン

魔物に囲まれた村――。

その話を耳にしたのは、図書室の奥で資料を漁っていたときだった。

隣の棚から聞こえた教員たちの小声。内容は緊急性の高いものだったが、どこか他人事のように冷静で、結論は「対応保留」。


理由は単純。戦力の再配置が難しく、優先順位が低いという。

……たとえ現場の村人たちの命が懸かっていたとしても、だ。


でも、理解できる部分もあった。

ここは現代のように車や飛行機で一気に移動できる世界じゃない。

徒歩や馬車が基本。移動するだけで、水や食料を携えなきゃならない。

物資の手配は貴族か軍部の仕事だ。庶民には到底届かない。

だが、いくら理解出来ても、納得はいかない。

そんなもんだ。


その日の夕方、訓練場の裏で俺は、地図を広げて黙々と補給表と睨めっこしているヴァルガスを見かけた。

魔石を確認しながら、慎重に準備を進めるその姿は――まるで、単独行動に備えているようだった。


「……行くつもりか?」

俺の問いに、ヴァルガスはわずかに肩を揺らしたが、否定はしなかった。


「知ってるだろ? あの村は、放っておけば数日もたない。だから……俺が行く」

「誰にも言わずに?」

「巻き込みたくないんだ。あの子たちは、大切だから」


らしいな、と思った。

人数が増えれば、それだけ補給の負担も重くなる。結局村への負担が増えたのでは、意味が無くなる。

彼の判断は正しい。

正しいけれど……俺は放っておけなかった。


その夜、寮の廊下を静かに歩く。

ノックもせず、ただ扉の下に、小さな紙片を滑り込ませていく。


『明朝、ヴァルガスが一人で村へ向かいます。

黙って行く理由は、あなたたちを守るためです。

ですが、彼を守れるのは、あなたたちです』


紙の端には、三日月のイラスト。

それぞれのヒロインの部屋へ――フィリア、リリィ、ミリア、セリナ、クロエ、ノエル。


翌朝、裏門に向かったヴァルガスは、そこに立ち並ぶ人影に、思わず言葉を失った。


「……なんで、ここに……?」


ミリアが一歩前に出る。

腕を組み、ジト目でじろりと睨みつけた。


「はぁ!? あんた、ほんっっきで一人で行くつもりだったの!? 馬鹿なの!? 無理しすぎでしょ!」

剣の柄を握る手が、微かに震えている。不安と怒りがないまぜになったような声だった。


セリナが本を閉じて歩み寄る。


「……合理的に考えて、あなた一人で行くのはリスクが高すぎるわ。支援もせずに背を向けるなんて……

らしいけど、腹立たしいわね」


クロエが荷馬車に大きな包みを放り込みながら叫んだ。


「兄貴、ほんと頼るの下手だなー! 

アタシが何のために鍛えてると思ってんの!? 

置いてくとか、絶対ナシだからね!」


リリィは涙をこらえながら、そっと荷馬車の端を握りしめていた。


「ひとりで行くなんて……わたしも行きたいのに。どうして言ってくれなかったの……? 

力になれるんだよ、わたしだって」


ノエルは黙っていたが、詩集をそっと閉じて一歩進み出る。


「……また、一人で背負おうとする。あなたはいつも、そう。けど……私たちは、そんなに脆くない。あなたの荷物の一部くらいなら、私たちにも持たせて」


最後に現れたのは、フィリア。


「愚か者です、まったく……」

一歩ずつ歩み寄り、ヴァルガスの前で立ち止まる。

「あなたは誰かを守ることばかり。でも、守られることを知らない。

この間、修行馬鹿……じゃなかった、レイにも言われたでしょう? 

そろそろ、覚えなさい。私たちが、あなたを守りたいと思ってるってことを」


その声には震えが混じっていた。

ヒロインたちの想いが、静かに、けれど確かに重なっていく。

その様子はまるで、各地から集まった七人の戦士が、今まさに再集結するような……

決して一人ではないと示す光景だった。


ヴァルガスはしばらく言葉を失い、そして静かに頭を下げた。

「……ありがとう。本当に……ありがとう」

その瞬間、彼は守られることを受け入れた。


そして――

屋上から、その光景を静かに見下ろす影が一つ。

まあ、要するに俺のことだ、


「よし……英雄パーティー、これで全員揃ったな。

七人の英雄ってとこか?」


俺はそう呟きながら、昨日のうちに準備しておいた書類を鞄に詰め込んでいた。

補給ルート、装備一覧、ポーション在庫。

全てあいつらのために、俺が整えたものだ。


学院の物資管理担当に書類を差し出しながら言う。


「目的? 自主訓練合宿です。物資補填は……全額、個人負担で」

ついでに卒業実績に加点できるよう、魔力補助の書類も提出しておく。


出発の日、荷馬車には俺の仕込んだ補給品と――なにも書かれていない手紙。

署名はない。

ただ、封の端に、控えめな三日月のマークが添えられていた。


『必要な時に、必要な人の背を押す。それが、俺のやり方』


誰にも気づかれず、俺は学院の屋上で剣を振る。

その刃は、戦場の中心には向かない。

だが、確かに誰かを守るための刃だった。


月下の守護者として、影から見守り、支える。

あいつらが無事に帰るまで。


俺は、ここで戦い続ける。


……地味に、前世でも苦手だった書類仕事が、きつかったが。



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