17.連続噴流攻撃!
数日後。
あの一件以来、三人組――グレイ、バルド、ノアは、まるで何かに取り憑かれたかのように訓練に打ち込み続けていた。
特に、俺との三対一の模擬戦での敗北が、相当こたえたらしい。
この日は、彼らの申し出で、再び俺が「模擬敵」として相手をすることになった。
「なあ、レイ。今日はちょっと見せたいもんがあるんだ」
グレイが開口一番、そんな台詞を口にした。
「見せたい?」
「そう、あんたの言葉をヒントにして、俺たち三人で連携技を作ってみたんだ!」
「その名も――三連衝陣ッ!」
キラキラと目を輝かせながら叫ぶノアに、俺は眉をひそめる。
「……どっかで聞いたような名前だな」
「気のせい気のせい。完全オリジナル、俺たち発祥!」
ドヤ顔で胸を張るノアの頭に、バルドの拳が小気味よく落ちた。
「ふざけんな、真面目にやるぞ」
そして模擬戦が始まった。
俺はあくまで「少数の賊」役として動くが、今回はただの遊びではない。
三人の目には、真剣な光が宿っていた。
「いくぞ、三連――」
「「「衝陣!!」」」
第一波。
グレイが、風を切るような速度で踏み込んでくる。
その動きはまさに矢の如く、寸分の無駄もなく俺の懐を狙ってきた。
ただ速いだけではない――刃筋の通った正確な斬撃。
「……来るか!」
俺は足を引いて体を捻り、ギリギリで剣を受け流す。
第二波。
一拍遅れて、バルドの豪腕が振り下ろす重い一撃。
その重量感は、一撃で地面に膝をつかせかねない迫力。
だが、振り下ろしと同時に、俺の左右の動きを封じるように軌道を工夫している。
(くっ……逃げ場を潰してる!)
第三波。
「おっせえぞ、ノア! 入れ!」
「わかってるっての!」
ノアが背後から高速で回り込み、地面スレスレから放つ突き技。
しかも、途中で軌道をずらしてフェイントを混ぜる高度な技術。
「っ――甘く見るなよ!」
俺は反射的に後方宙返りでノアの剣を回避。
だが、三人の動きはすでに連携という枠を超え、戦術になっていた。
以前の三人は、ただの勢い任せだった。
だが今は違う。
役割が明確に分かれ、各自が自分の特性を活かしつつ、全体の流れを崩さずに攻めてくる。
スピードのグレイ、重厚のバルド、撹乱のノア――
それぞれが役者として機能し、俺を舞台の中央に追い詰めようとする。
(……三人で一つの獣を演じるつもりかよ)
何度も繰り返される三連撃。
俺は防ぎ、躱し、時には攻撃を差し込む。
だが、彼らの技は確実に、成長していた。
「もう一回だ!」
「まだだ、立てノア!」
「これで終わりにさせるかよ、レイ!」
三人の気迫に、俺の血も少しだけ熱を帯びる。
思わず笑みがこぼれる。
「いいぞ、お前ら……
そうこなくちゃな!」
十数分後。
「はぁっ……はぁっ……」
三人は地面に膝をつき、肩で息をしていた。
俺も、額に汗を浮かべて木剣を肩に担ぎながら、一歩後ろに下がる。
「……あー……上達したな、お前ら」
「マジで!? やった!」
「ほんとに通用してたのか……!」
「完全とは言えないけど、十分戦術として使えるレベルだった。
連携は信頼から生まれる。そういう意味じゃ、お前ら……ちゃんと仲間になったな」
俺の言葉に、三人は顔を見合わせ、声もなく頷き合った。
「なあ、レイ」
グレイが一歩前に出る。
「今度、兄貴に見せてやろうぜ。この《トリニティ・ブレイク》を」
「ああ。俺たちが、ただの腰巾着じゃないってところ、見せてやる」
「ヴァルガスさんに胸張って言えるようにな……!」
なんだかんだで、熱くて真っ直ぐで、素直ないいやつらだ。
「よし、じゃあもう一回。次は俺が指揮官賊をやってやる。
連携だけじゃなく、臨機応変にも対応できるようにな」
「おう!」
「了解だ!」
「死ぬ気でいきます!」
「最後のやつは黙っとけ!」
笑い声が訓練場に響く。
──三人が織りなす連携は、確かに“技”としての域に達していた。
これからもっと鍛えれば、本物の戦場でも通用するかもしれない。
……なんだかんだで面倒な奴らだけど、こういう青春――嫌いじゃない。
俺たちはまた木剣を構え直し、次の訓練へと踏み出した。




