表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生でストーリー変わったので……本来の主人公に転生した俺はスローライフを満喫するために元悪役を全力で応援します  作者: 製本業者


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/43

12. 裏から支える支援者って、強者感あるよね

実を言うと、俺はヒロインたちに、そこまで執着があるわけじゃなかった。


いや、転生してすぐの頃は、そりゃあったよ。

「主人公=ヒロインとイチャイチャするもの」って思ってたし、むしろそれが醍醐味だとすら思ってた。

でも、異世界の生活にも慣れて、日々の訓練と学院生活に没頭するようになってくると、そういう感情は次第に薄れていった。


前世の俺は、グレーな会社で息を詰めながら働いてた。

定時退社は都市伝説、サービス残業は日常茶飯事。

夜中のコンビニで冷えた唐揚げ弁当を食べながら、「これが大人か……」とぼんやり呟いたこともある。


それに比べりゃ、今はマシだ。

生活水準こそ低いけど、空は広く、飯は意外とうまい(たまに外すけど)。

何より、自由な時間がある。


剣と魔法の学院生活――

のんびりしてて、そこそこ刺激もあって、案外気に入ってる。


ヒロイン級こそヴァルガスの独壇場だが、俺だってそれなりに女子と話すくらいはできる。

一番親しいのはティナ。気さくに話せる間柄だが、恋愛感情があるかと言われると……正直、会社の庶務の子と仲が良い、みたいな感じに近い。

……まぁ、前世からモテた試しなんて一度もなかったしな。


「……まあ、悪役が良いヤツなら、それはそれで平和でいいか」


中庭のベンチに腰を下ろして、青い空を見上げながら独りごちる。

気持ちいい風が頬をなでていく。

誰が誰とくっつこうが、もう俺にはどうでもいい話だ。


たぶん、あのとき――ヴァルガスと出会ってすぐ、

彼に無理に敵対したり、張り合おうとしたら、今ごろ俺はただの当て馬か、早期リタイア枠になってた。

早めに“あいつは本物だ”と気づいてよかったと思う。


ヴァルガスは、悪役の運命に抗って生きている。

強く、まっすぐで、そして優しい。

周囲の信頼も厚く、自然体でヒロインたちと接して、結果的に好かれている。


……だからこそ、余計に面倒なんだよ。あいつ。


けれど、もういい。俺は俺だ。


俺は傍観者ポジで、気楽に生きていくって決めたんだ。


そんな風に考えていたそのとき――


「レイ、こんなところで昼寝か?」


「うおっ……って、ヴァルガスかよ。心臓に悪いわ!」


「いやいや、足音は消してないぞ? 鈍いのは君のほうだ」


「お前が忍びみたいに近づいてくるのが悪いんだっての」


苦笑しながら肩をすくめると、ヴァルガスはにやりと笑いながら俺の隣に腰を下ろした。


その様子を少し離れたところからヒロインたちが眺めていた。


クロエは「ここは私の席」と言わんばかりにぴたりとヴァルガスの隣をキープし、

フィリアはその横で姿勢を正せだの目線が甘いだの、謎の指導モードに入っている。


リリィはいつも通りお菓子を配って、「みんなで仲良くね〜」と場を和ませ、

ノエルは少し離れた木陰で静かに詩を書いていた。たぶん「絆と距離感」みたいなテーマだ。


……どう見ても、主人公だよなぁ、あいつ。


「何をしていたの?」

セリナが涼しい声で問いかけてくる。


「昼寝……というか、サボりって感じ?」

ミリアは腰に手を当てて、半分呆れたような顔で俺を見下ろしていた。


「お日さまぽかぽかで気持ちいいよね〜」

リリィだけは、今日も変わらぬ癒し担当だ。ありがたい。


「いいじゃん、休み時間くらいゴロゴロしたってさ」


俺はそう言って肩をすくめた。


ヴァルガスがふと笑って言った。


「君は、本当に自然体だよな。そういうところ、ちょっと羨ましい」


「……それ、皮肉?」


「いや、本音だよ。

案外、ヒロインたちが君に目を向けるのって、そういうところなんじゃないか?」


「やめろよ、そういう無責任なこと言うの。期待したら困るからさ。

……そもそも、お前のガールフレンドたちでしょ?」


俺が冗談めかして笑うと、ヒロインたちがそれぞれに反応した。


ミリアは真っ赤な顔で「べ、別に私は……!」とそっぽを向き、

セリナは「……期待するだけ無駄だと思うけど」と言いつつ、口元はわずかに緩んでいた。


リリィは「私はレイくんのそういうとこ、好きだけどね〜」とマイペースに微笑み、

フィリアは「そんな気の抜けた態度で好かれるなんて、100年早いわよ」とキッパリ言い放ったが、頬はうっすら赤い。


クロエは「私は認めない」と一言。けれど耳は赤く染まっていた。

ノエルは何も言わなかったが、詩のタイトルが『無自覚』だった。……おい、やめてくれ。


……いや、なんで俺がフラグ立ってんだよ。


俺はあくまで、脇役・傍観者ポジ。

そう言い聞かせて、空を見上げる。

あ、ヴァルガスのガールフレンドって言われて照れてたのか、とその時になってようやく気がついた。


とはいえ、こうして笑い合って、冗談を交わして――

気づけば、俺はこの輪の中にいる。


きっと、もう外にはいないんだ。


俺は今日も、この世界の片隅で、少しだけ温かい空気に包まれながら――

本来の主人公から一歩引いた場所で、俺なりのスローライフを送っている。


……たぶん、それが俺にとっての物語なんだろうな。


とはいえ――


「ラスボス戦だけはスルーできないだろうな」

「ん? 何か言ったか?」

「いや、こっちの話」


そう。

この物語に修正力が働くなら、最後の戦いだけはきっと避けられない。


でもいいさ。

そのときが来たら、脇役なりに、俺の役目を果たしてやる。

誰にも知られず、誰にも気づかれず、

それでも確かに――仲間たちの背中を守る、影の助っ人として。


……そういうポジションも、案外、悪くない。


よろしければ、ポイント評価や感想・コメントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ