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悪役転生でストーリー変わったので……本来の主人公に転生した俺はスローライフを満喫するために元悪役を全力で応援します  作者: 製本業者


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10. 主人公は誰だ!

「……でもさ、俺はわかってるんだ」


昼休みの訓練場の木陰。

その日は、剣術指南として、俺とヴァルガスの模擬戦が組まれていた同学年の動きを観察することで、えられるモノがあると言う建前だが、どう考えても同学年で突出している二人……俺とヴァルガスを使って、同級生のレベルアップを図りたいって言う魂胆だ。

学院の思惑にのるのも癪だが、なんだかんだでヴァルガスと全力で当たるのは楽しい。なので、お互いについついヒートアップして、結局二人ともオーバヒートで倒れてしまい、急速として木陰に運び込まれていた。

涼しい風が吹き抜ける中、少し復活したヴァルガスがぽつりと呟いた。

いつもの爽やかさを少しだけ抑えた、どこか静かな声音で。


「この世界の本当の主人公は、君なんだろうなって」

「……は?」


あまりに唐突な一言に、思わず間の抜けた声が漏れた。


「ボクには……無理だと思う。どれだけ努力しても、きっと最後にはヒロインたちは君のもとへ行く。

そういう流れっていうのかな。

物語の中心は、自然と君に向いてる気がするんだ」

「……それ、思い込みだろ?」

「そうかもしれない。

いや、そう思ってるだけかもしれないけどね。

出来れば、ボクの方に向いてくれたらうれしいけど」


ヴァルガスはそう言って、頭上の木の枝を見上げる。

揺れる葉の隙間から、柔らかな陽が差し込んでいた。


「でもさ、君って――ほっとけないタイプじゃないか」

「なんだよ、いきなり」

「困ってる人がいれば絶対に見捨てないし、自分が損しても助けようとする。

しかも、それで感謝されなくても怒らない」

「……褒めてんの? けなしてんの?」

「……両方だよ」


ヴァルガスは肩をすくめながらも、くすりと笑った。


「まったく、ハーレム野郎のくせに。

てかさ、その自己分析、むしろお前にこそ当てはまってるんだけど?

自画自賛してんじゃねえよ」

「それなら光栄だな。君と似てるって言われるのは、少しだけ誇らしい」

その返しに、俺も笑うしかなかった。

でも、ふと見上げた彼の表情――その目の奥に、ほんのわずかに影が差していたように見えた。


たぶん、ヴァルガスの中ではすでに答えが出ているんだ。

自分は本当の主人公じゃない。

悪役として生まれ、運命に抗いながら、誰かの背中を支える立場でいるべきだと。

でも――それって、俺から見れば、まさに主人公の器にしか見えない。

悪役に生まれながら、誰よりも努力して、

誰も見下さず、誰かを笑顔にして、

それでいて、自分が選ばれなくても文句を言わない。


……逆転ざまぁ系のテンプレ、まさにここにあり、って感じじゃないか。


それに比べて俺はというと――

ゲーム知識に頼り、必死に訓練して、魔法の理論書を読みあさって……

気づけば、地味な善良モブ男子として頑張ってる日々だ。


「いやいや、どう見ても主人公はお前だろ……って思ってるの、こっちなんだけどな」


もちろん、俺が転生者だってことは口には出さない。

当然、彼にはまだ言ってない。


たぶん――このままでいい。


この世界に生きて、この世界を変えようとしている彼を、俺は心から尊敬している。

そしてきっと、彼もまた、俺という存在を認めてくれている。


少しずつ、でも確かに重なり合っているのに、微妙にズレてる――

そんな俺たちの関係は、なんだか心地いい。


言葉にしなくても通じるものが、そこにはある。


「……ま、好敵手ライバルってことでいいか」

「……うん。悪くないな、それ」


俺たちは、肩を並べて笑い合った。

互いの真実には触れず、けれど確かに“本音の一部”だけを交わしながら。

それは、きっと本物の友情に近いものだった。

――いや、思い込みじゃないと、信じてる。


しばらく風の音だけが心地よく流れていたが、ふと、ぽつりと俺の口から言葉が漏れた。


「……でもさ」

「ん? 何かな?」


すかさずヴァルガスが反応してくる。

独り言のつもりだったが、聞かれたからには答えないわけにもいかない。


「……彼女については、下駄履かせろ。いや、ハンデよこせ!」

「はっ!? なに言ってんの!?」

「フィリア様だけに飽き足らず、何人彼女作れば気が済むんだ、おまえは!」

「作ってないからね!? 

勝手に増やさないでくれる!?

それにフィリアとだって……」

「おいおい、どの口が言うんだよ。笑顔で差し入れもらって、昼食一緒に食って、講義中に隣の席で耳打ちしてる奴が、何を清廉潔白ぶってんだよ!」

「それは、たまたま! たまたま、だからね!? 君だって、あの……ティナさん? なんだかんだで仲良くしてるじゃないか」

「うるせぇ! おまえにだけは言われたくない!」

「なんでさ! こっちはただ日々誠実に人間関係を築いてるだけなのに!」

「その誠実ってやつが、天然で全方位に好感度ばら撒いてんだよ! 

分かってんのか、罪深いぞお前!」

「……ごめん、よく分かんないけど怒られてることは分かる」

「正解だ! そして反省しろ!」

「えぇ……」


ヴァルガスが苦笑混じりに肩をすくめ、俺もやれやれとため息をついた。

言い合いながらも、どこか居心地が良いこの空気。

軽口の裏には、きっと信頼がある。


本気で殴り合ったわけでもないのに、なぜか拳を交わした後のような、奇妙な安心感が残っていた。


――これが、友達ってやつなんだろうな。


お互いに秘密を抱えたまま、それでも気を許して、笑い合える。

たぶん、こういうのを“絆”って言うんだと思う。


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