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0. ビギニング

以前作成した短編を基に長編かしました。

是非感想をお願いします。

「ちくしょう、血が、血が止まらないじゃないか。

誰か、誰でもいい!

早く、早く、回復を!」

声を上げるヴァルガスは流れる血で全身を染めげていた。

「ははは、君でも焦ることなんてあるんだ。

だが、もう遅い」

四天王に続いて魔王が倒れるのを確認すると、ヴァルガスに対して普段とは全く違う冷たい声で告げた。嘲笑と言って良いだろう。

「くそ、くそ、くそ。

何だってこんなことに!」

「もう流れには逆らえない。

いつだって、世界は残酷だよ」

もはや這うように動く事すら出来ないヴァルガスに対して言い放つ、冷酷な声が周囲に響き渡る。

「認めない、認めないぞ!

こんな結末、認めるものか!」

彼、ヴァルガスは焦燥を隠すこと無く絶叫した。

「ははは。時に諦めることも重要だよ」

「諦めるもんか!

諦めるも……

あきら……

ぎゃー!」

ディスプレイ越しに響き渡る絶叫とともに、俺は意識を失った。


目が覚めたとき、俺は――ふかふかのベッドの上にいた。


「……え? ここ、どこだ?」


寝ぼけ眼で見上げた天井には、白くて繊細な彫刻が刻まれ、横には金の房が垂れるカーテン、触れただけで沈みそうなシーツ、重厚な木製の家具たち。

壁には飾り物のように美しい剣と盾が並び、まるで中世の王侯貴族の部屋だ。


――いや、これ……どこかで見たことある。間違いなく。


「……ま、まさか……!」


頭がガンガンする。

それでも必死に、昨日の記憶をたぐり寄せる。


確か、営業先で――ようやく、大型案件の受注が決まったんだ。

それも、一度はコンペで負けたと思ってた案件だったから、逆転受注の報せを聞いた瞬間、思わず声が漏れたのを覚えている。

「……っしゃあ……!」


ちょっと自分にご褒美という意味もあり、翌日の金曜に有給をとることにする。まあ、こないだの健康診断結果が悪かったからと言うのもある。

意外にも、上司があっさり有給を認めてくれて、ほんの少しだけ報われた感はあったけど……


まあ結構診断の結果がかなり悪かったのは事実だし、数週間前から続いていた別件の大型プレゼン資料作成で、流石にこれ以上は限界と周囲も思っていたのかもしれない。

別件の資料作成に振り回され、日々の平均睡眠時間は4時間以下。

いや、ここ数日は4時間寝られたらまだマシだったかもしれない。実際には、目を閉じたら次の瞬間にはアラームが鳴ってる――そんな日々。

帰宅しても、PCの前には「報告書よろしく!」「ここの補足、追加で!」と社内LINE地獄が待ち構えていて、

「報連相ができる人間は信頼される」なんてスローガンのもと、深夜1時過ぎの返信も当たり前だった。


そして、ついに案件が決まったその夜――


家に帰って、久々に早めに布団に入れると思った俺は、

「これくらいはいいよな」とストロング系チューハイをプシュッと開けて、何か月も放置してたギャルゲー要素強めのRPGを立ち上げた。

大作では無いが良作として


久々に没入したゲームの世界。複雑だけど王道なストーリーに引き込まれて、気づけば終盤まで一気に進めていた。


――そして、エンディング。


満足感とともに、画面がフェードアウトしていく中、ほんの一瞬だけ――まぶたが重くなったのを覚えてる。


あの時、確かに俺は……座椅子に座ったまま、意識が……


「……で? そのあと……どうなった?」


頭がズキズキする。けれど必死に思い出そうとする。

意識が朦朧として――ゲームのエンディングの音楽が流れてて……

……あれ、俺、あのまま寝落ちたのか? でも、目覚めた場所が、なんでこんな――


「いや、いやいやいや……違う。なんか……おかしい」


体を起こしてもう一度、部屋を見渡す。

質素だが堅牢な作りのベッド。厚手の刺繍カーテン。木製の荘厳な家具に、飾り物みたいな剣と盾――


「ていうか、なんで俺、ファンタジーRPGの世界みたいな部屋で目覚めてるんだよ!?」


そもそも俺の部屋、万年床だけど布団だったしと思いながらあわてて足を下ろして、足元を確かめる。床は石畳のようにしっかりしていて、微かに冷たい。

これは、夢じゃない。少なくとも、五感がそう言ってる。


「落ち着け、俺……これは何かの……何かの……」


脳内で合理的な解釈を探そうとするが、

どう考えても、この空間は――


俺がプレイしていた、あのゲームの世界そのものだった。

思い出した。


この部屋。

この配置。

この家具とインテリア。


俺がプレイしてたゲームの――まさに、主人公のスタート地点だ!


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」


跳ね起きる。ベッドがふっと浮いたかと思うほどの勢いで。


「マジかよ!? これ……本当に、転生してるのか!?」

興奮で手が震える。

でも、ここにある感触、匂い、温度――どれもあまりにもリアルすぎる。

これは夢じゃない。間違いなく、ゲームの中だ。


「俺……レイ・アルグレアになってる!?」

ベッドの脇、豪奢な姿見に映った自分を見て、思わず息を呑んだ。


そこにいたのは、くたびれたサラリーマンじゃない。

黄金の瞳を持ち、整った顔立ちにすらりとした体躯の美少年――まさに“主人公”が、俺を見返していた。


「……勝ち確……!」

思わず拳を握る。


前世の俺は、社会の歯車だった。

そういや歯車は欠けると動かなくなるから、歯車以下って自虐ネタもあったな。

ブラック……とまでは言わないが、明らかに濃いグレーな職場環境。

改善しようと動けば動くほど、余計な仕事が増え、「やる気あるね」が「じゃあこっちもやって」と倍返し。

有給申請しても“仕事を理由に調整”という名目でなかなかとらしてくれない癖に、消化しろ消化しろと煩く騒ぐ。

それでも自分では「自分だけは大丈夫」って思ってた。思い込んでた。

だが、気づけば感情は摩耗し、寝落ちと起床の境界線が溶けていた。


将来? 夢? 結婚? そんなもん、報連相に埋もれて見えなくなってた。


でも今――俺の人生は、()()()()()()()んだ。

「仕事? ノルマ? 深夜アポ? あるかバーカ!!」


そう!

ここでは俺が主人公。

騎士学校で腕を磨き、ヒロインたちと出会い、悪役ヴァルガスと激突して、世界を救う運命を背負ってる。


その先に待ってるのは――

「モテる!!!!」


王道? テンプレ? 上等だ!!

王道のテンプレこそが、最高にして最強の勝ちルート!


「異世界転生、ありがとう……! テンプレ最高ォォォォ!!」


テンション爆上がり。思わず飛び跳ねた。

あの重苦しい現実は、もう遠い彼方。

今の俺には、ヒロイン、成長イベント、勝利フラグ――

さあ、ここから始めよう。俺だけの――本当の人生を!


「よし! 主人公、始めます!!!」


……あ、しまった。

「例の台詞、言い忘れた……」


最近、校正にAI使ってます。

ただ、それでも編集時のコピペミスで二重になってたりとか、誤変換等はあると思うのでご指摘頂ければ幸いです

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