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第91話 異世界のコンビニは経営が苦しいようです

 淫魔との戦闘が終わったが、俺――勇夜の戦いもすでに終わりを迎えようとしていた。

 コンビニの売り上げの集計だ。最近は淫魔関連でバタバタしていてまともに営業できない日もあったし、そもそも開店初期なんて売り上げがほぼゼロだった。こんな状態で経営が上手くいくわけがなかった。


「普通に赤字だな……なぁ妹よ。俺たち、どうなるんだろうな……」

「まだワンチャンあるよ。ほら、借金して運転資金を調達しよ? 金が回れば大丈夫だって」

「それ借金地獄になるパターンだろ。嫌だぞ、この歳で債務者は……」


 これじゃあ異世界コンビニじゃなくて異世界債務者じゃん。夢も希望もねぇぞ……なんで異世界に来てまで借金生活なんだよ。


「マジねぇわ……もっと夢のある生活がしてぇーよ」

「わかるわー、今のお兄の気持ち、めっちゃわかるわー」


 スタッフルームの作業デスクに突っ伏した俺の耳に、ソファーの方から怠そうな陽菜美の声が聞こえてきた。ちらっと振り向くと、ツインテールを背もたれに流し、だらしなくクッションに沈んでいる妹の姿があった。

 俺の視線に気づいたのか、陽菜美はクッションをぎぎっと鳴らしてこちらを向く。


「でもさぁ、お兄。落ち込んでる場合じゃないんじゃない?」

「懐は寒くても落ち込むなって? お金はないけど愛はありますよ、的な? そりゃハッピーだろうよ。ふっ……金が無くてもな」

「家族愛でも金なしハッピーでもないよ。ほら、レヴィさんのこと」


 ああ……あいつも落ち込んでたな。クロコをユリさんに持っていかれてからずっと元気なかったし。シアが行方不明になった時も暗い表情だったけど、その時と同じような感じだったな。


「励ましてあげなよ。店長でしょ。店長ならバイトに『どうしたの? レヴィちゃん、おじさんでよければ話きくよ?』って感じに油でテカテカの笑顔とか向けなよ」

「気の良いんおっさん作戦か? 残念だったな、俺はまだ二〇歳だ。おじさんじゃない」

「じゃあどうするの?」

「そんなのは……そういえば、前に落ち込んでた時に軽くセクハラしたら呆れて悩みを全部ぶちまけたっけ」

「うわっ、クズだなぁ。次それやったら私、お兄の妹やめるわ」

「言っとくけどな、前はそれで上手くいったんだから――」

「お疲れっす。先輩、陽菜美ちゃん……」


 言ったそばからレヴィがスタッフルームに入ってきた。

 相変わらず表情も暗いし、声も萎むようで覇気がない。こいつホント言動に出るというか、わかりやすく落ち込んでるよ……こんなの見てたらこっちまで暗い気分になんだよなぁ。

 そこで俺は気さくに笑いかけた。


「どうしたの? レヴィ、お兄さんで良ければ話聞くよ?」

「私の案モロパクリじゃん。しかもちゃっかりお兄さんバージョン」


 うっせぇぞ陽菜美。黙ってねぇとツインテール片方だけ解くぞ。解いて髪型アンバランスにしてやるぞ。いいのか? あっ? 結びなおすのが面倒くせぇぞ。

 うわっこれマジの目だ……黙っとこ、と陽菜美が言いながらソファーに縮こまった。無言の圧力が効いたようだ。



(次回に続く)


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