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第9話 人生の再設計と職業適性

 こんなコスプレ美女が俺んにいるはずがない。やっぱりこれは夢だ。火事のときから俺はずっと夢を見てるんだ。じゃあ……夢なら、舐め回すように見てもいいよな。


 というわけで観察だ。

 自分を示すように胸に手を当てている。すごい。ブレザー越しでも膨らみが分かるほど大きい。何カップだ?


「突然、私が押しかけて驚いていることでしょう。ですがこれも何かの縁、先の爆発で失ったもの、あなたの人生と引き換えに現れたこの私、戦乙女ワルキューレが――」


 服の上からでも胸のふくらみが分かる女なんて、大抵デブって決まってるが、この人はちゃんと出るところは出て締まるところは締まっている。


「あなたの人生を再設計します。それに伴ってまずはこのコンビニマンションを再建し、ここを起点にあなたにあった職業を選定します」


 腰は細そうだし、手も足も細いのにほどよく筋肉質で引き締まっているようだ。こんな完璧美女なんて今まで見たことないぞ。


「不安に思うこともあるでしょう。当然です。これまでの生活から離れ、人生のレールすら他者に決められるのですから……しかしこれだけは信じてください」


 ユリさんが胸に当てていた手を下ろしながらこちらに歩み寄ってくる。

 一歩、また一歩と近づいてくるごとにその豊満な胸から目が離せなくなる。何カップだ?


 そんな俺の思念が届いたのか、ユリさんが再び自分の胸に手を置いた。


「私ジ――」

「ジ、Gカップか……!?」

「はぁ? 一体なんの話をしているんですか?」

乳学ちちがくですかな。聞くまで何カップかわからない。いやそもそも天然の生乳かシリコンの偽乳か、それともパッドを入れただけの育乳かもしれない……そのもどかしさを想像力に変え、脳のシナプルを活性化させる学問のことです。シュレディンガーの乳ともいいますね」

「さっきからジロジロ私の胸を見ていたかと思えばこの男、人が真面目な話をしているのに胸の話ばかり……本当にくだらないですね」

「え、ちょっと酷くないですか? そっちがGカップだって言ったから話が盛り上がったんですよ?」

「あなた会話できてますか? どのあたりが盛り上がってました?」

「ユリさんが私はGだって言った辺りからですよ」

「言ってません。あなたが途中で割って入ったからです。私自身が最大限、あなたの生活をサポートしますって言おうとしたんです」


 クールだ。下ネタを振られても平常心。慌てる素振りすらない。

 完璧なタイミングでGだと自己申告するミラクルを起こしたわりにつまらない女だ。こうタイプの女は仕事が人生の堅物系女子。真面目すぎて冗談が通じないやつだ。

 だから生活をサポートするってところは、真面目だからこそ裏切らないだろう。


「な、なんのサービスだ、これ……こんな美女がいろいろ面倒見てくれるなんて……えっと、ちなみにどこまでしてくれるんですか?」

「と、いいますと?」

「それはもちろん朝は優しく起こしてもらって、それからユリさんが用意した朝食をいただき、大学に行くときは行ってらっしゃいと見送ってもらう。あ、ちなみに俺の呼び方は、ご主人様、でよろしくお願いします」

「調子に乗らないでください。なんで私がそんなことまで……」

「生活のサポートって言ったらメイドさんでしょ?」

「勘違いされているようなのであらためて言いますが、私はあなたに職を斡旋し、あなたを見守るのが主な仕事です。朝起こしたり、食事の用意をしたり、ましてご主人様なんて呼んであげる筋合いはありません」

「サポートが冷たい……! 職の斡旋だけってただのハロワじゃん、どこが最大限のサポートだよ。普通だろ、当たり前のサポートだろ、これじゃあ……」

「では、これよりあなたの職業適性を調べます」


 がっかりして肩を落とした俺をよそに、ユリさんが手をかざしてきた。

 それだけでパソコンのウインドウのようなものが俺の目の前に開いた。



(次回に続く)


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