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第88話 戦いの終わり……そして――

「一件落着か……よかったな。クロコも俺たちも大した怪我がなく終わって」

「当然すっよ。そもそも戦いに来たわけじゃないから。連れ戻しに来たんすよ」

「残念ですが、このままあなたに返すわけにはいきません」


 通路の方から声がした。

 反射的に俺たちが振り向くと、ユリさんが立っていた。ルキナさんを抱き抱えているが、二人とも目立った外傷はないように見える。そんな美人お姉さん組の後ろから駆け寄ってくる小柄な影が二つあった。


「お兄~よかった、無事で! クロコを止められたんだ……!」

「ああ、なんとかうまくいったよ……ってお前こそ、大丈夫だったのか?」

「めちゃくちゃ小悪魔級インプが雪崩れ込んできたけど、最後の方はユリさんも来てくれたし、なんとかね」


 陽菜美は得意げに、ふふん、と目を細めた。ガスマスク越しだから表情はわかりづらいけど気楽な調子だ。本物の戦闘を乗り越えて一皮むけたって感じか? すげぇーな俺の妹。

 それに引き替え、俺たちの最大戦力の侯爵悪魔様は、


「どうしたんだ? ルキナさん、ぐったりしてるけど……」

「気絶してるだけだよ。るき姉、強敵と戦ったあとはいつもこうだから」


 どうやらシアにとっては見慣れた光景らしい。ルキナさんっていつもギリギリの戦いでもしてるのか? まぁ、光魔法で自傷してたし、あり得る話だな。

 俺がそう思っていると、レヴィがユリさんに詰め寄っていた。


「返すわけにはいかないって、どういうことっすか?」

「そのままの意味です。シグメ――いえ、クロコの能力は非常に危険ですから、しかるべき処置が必要なんです」

「それじゃクロコは……」

「拘束し、神界に送ってから、そこで厳重な監視下に置きます。あ、それとルキナさんをお願いします」


 茫然と立ち尽くすレヴィにルキナさんを押し付けると、ユリさんはクロコに歩み寄ってその黒い着物をまとった小柄な体を持ち上げ、踵を返した。

 大丈夫かなクロコの奴、ひょっとして危険だからこのまま処分されるんじゃ……前に、神界を脅かしたから……。

 淫魔を巡る戦いは終わったが、俺の脳裏には嫌な想像がよぎったのだった。


 ここまでが五章です。

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