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第87話 最幸のプレゼント

『これは、今まで頑張って生きてきたシグメへのプレゼント』

「私の、狂気の淫力フィールドを幸福エネルギーに転換したの……?」

『うん。転換した。ビーム砲を利用して狂気のエネルギーを発射するって予想できたから、ずっと昔に細工していた。そしたら思った通り。しかもさっき打ったシリンダーの幸福エネルギーが中心になって集まってくるから効果てきめん』

「でもそれじゃ! ユキメが、淫力がないとユキメも復活できないじゃん……っ!」


 悲しそうに表情を歪め、必死に訴えるクロコに、ユキメがなだめるように言葉を返す。


『それでいい。もう淫魔になんてなりたくない。ただ、私はこのままあなたを見守っていたいから……もう頑張らなくていい。一人で、悩んだり寂しい思いをしたりしなくていい』

「でも……でも……ぅうっ」


 ついにクロコの瞳に涙が浮かぶ。

 ユキメがいなくなってずっと一人でクロコは今まで生きてきた。思えば最初見た時も土埃にまみれた野良犬だったし、くぅんくぅん鳴いてよく甘えてきたっけ……寂しがり屋で甘えん坊な犬だな、こいつは……こいつ、は……。


 目頭が熱くなる。馬乗りになった俺の股下で泣いている子は、もう淫魔じゃなくてただのか弱い少女だから……短い間だったけど、こいつと一緒に過ごしてきたから。

 俺ですらここまで心に突き刺さっているんだ。レヴィに至っては、


「辛かったすよね……今までアタシの知らないところでずっと、苦しんで。もううちの子ってば変なところで意地っ張りなんすから……」


 感極まってお母さんみたいになっていた。


『それに、今の家族は私だけじゃない。この人たちがいるんでしょう?』

「うん……うん……」

『よしよし、今までよく頑張った頑張った』

「……よしよし、えらいえらい。素直になれてえらい。えらい、えらいっすよ。よしよし」


 レヴィがクロコの頭を撫でていた。なんという最高のタイミングだろうか。通信機をつけてないからユキメの言葉は聞こえていないはずなのに、クロコの感情を察知してちょうどいいタイミングで『よしよし』をしている。


 その慰めが効いたのか、やがてクロコは目を閉じてすーすーと寝息を立て始めた。

 安らかな表情で、幸福を感じながら、眠っている姿は本当にただの少女だった。


「まだ子供なんすよね……クロコって……」


 よしよしと撫でながら優しい表情で呟くレヴィ。そのどこか母のような包容力に俺も安心して、クロコから腰を上げる。



(次回に続く)7


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