第83話 敵のエネルギーフィールドを突破するにはこれしかない!
「なに? ご主人、その銃でしつけるぞっていうの?」
「ああそうだ。お前、ちょっと撃たれたぐらいじゃ死なないだろ」
「ひどいなー。愛犬を撃つなんて……でも意味ないよ。これだけ淫力があれば、そんなものなんて――」
「試してみるか!?」
狙いをすましたまま素早く引き金を絞った。クロコは一歩も動かなかったから当てるのは容易だった。散弾が着物にめり込み、小柄な肢体が衝撃でわずかに揺れる。
だがそれだけだ。クロコは顔色一つ変えずに佇んでいる。
「まだ、試してみる?」
「効いてない、だと……いや、そんなはずない実弾は有効なはずだ!」
ユリさんの戦闘記録ではクロコに実弾は効いていたし、アスモデウス戦の直後だって実弾に撃たれてクロコは行動不能になっていた。だからマガジンが空になるまで連射した。だがどれだけ撃っても苦悶の一つも上げない。いたずらっ子な笑みを浮かべたクロコにはまったくダメージが無いようだった。
「この濃密な淫力フィールドはねぇ、私の能力下にあるプローディオの市民から吸い上げた淫力で形成されてるの。だからこの中だと私は無敵。苦手な実弾だって撃たれた瞬間に再生する」
「だったらその中から押し出せばいいってことっすよね!」
床を蹴り、コウモリの羽を広げ、物凄いスピードでレヴィが突撃する。トップスピードのまま飛び蹴りを浴びせる。
ゴンッ、と蹴りと思えないような音が響く。だがその足は淫力フィールドに阻まれ、あっけなく弾かれた。
「くっ、これでもダメっすか……! なら――」
「レヴィ下がれ! クロコに近づくのは危険だ!」
「でもそれじゃあ!」
「俺が隙を作るって言っただろ!」
「――っ!」
レヴィがはっと息を呑む。俺になにか考えがあると悟ったようだ。
ばっと後ろに下がる赤白の軍服ワンピースを尻目に、俺はショットガンを背中の武器ラックに引っかけてから腕の端末を操作し、装甲服をメンテナンスモードにする。腹部の装甲プレートをスライドさせ、コンビニ制服のポケットに手を突っ込んだ。
そこには切り札があった。ゴムバンドに小さな機械がくっついたもの。
時止めヘッドバンドだ。俺のもつ唯一にして絶対の力を誇るアイテム。安易な考えかもしれないが、時を止めてしまえば何とかなるだろ。というかこれしかない。
装甲服の装甲プレートを元に戻し、ヘッドバンドを頭に引っ付けた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
このスーツのパワーアシストをフルに使ってタックルする。それも首を左右にブンブンと振りながら。完全に異常者だろう。だが時を止めるには必要なことだ。
「あ、レヴィちゃんが止まった。もしかして、それってあのアイテム?」
やっぱりレヴィが動けなくなってもクロコは動くか。時間停止モノのA〇みたいに犬は動くもんなコレ。
だが問題ない。わかっていたことだ。止めるのは他にある。
「余裕でいられるのも今のうちだ!」
両手を伸ばすと淫力フィールドを通過した。クロコの息を呑む声が聞こえる。
「えっ、嘘……ッ!?」
「時間を止めれるってことはよォ! お前の淫力の流れも止めれるってことだよな!」
強大な力をもつ淫力といっても、供給されなければただの怪しい光だ。これなら突破できる。
(次回に続く)3




