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第80話 シグメの想い

 諦めない……! 絶対諦めない!


 もう一度ユキメに会うんだ。会って、また二人で淫魔として生きていくんだ。そのためなら誰が相手でも負けない。負けちゃいけない。

 だって覚えているから。私――シグメの淫力が枯渇して犬になった時のことを。


『バイバイ、シグメ。次会うときはきっと元通りになってるから。だから……』

『くぅんくぅん、くぅぅぅぅぅん! (待ってユキメ、私も一緒に探すよ!)』

『それまで……おやすみ』


 犬の姿になっているから私の声は届かない。けれど、吠えずにはいられなかった。


『ワンワン、ワンワンワン! (淫力なら、私だって探せる!)』

『ダメ。入って。この凍結ポッドなら延命できるから。こらっ、暴れないで……!』


 縦に置かれた棺みたいな装置に押し込まれそうになって、私は小さな身体を思いっきり捻った。


『ワンッ! ワン、ワンワンッ! (嫌っ! 放して、ユキメと一緒にいるのッ!)』

『じゃあ約束!』

『くぅん? (約束?)』


 ぎゅっとユキメに抱きしめられ、私は思わず聞き返すように鳴いた。


『うん。絶対に、何があっても、どんな手段をとってでも、私がシグメを元に戻すから。それまでこの中で待っていて』

『くぅん……(でも……)』

『なに? その反応は……ちょっとは信用してほしい? これでも私は幸福の淫魔。あなたひとりくらい幸福にすることなんて造作もない。だからちゃんと迎えに来る。絶対にシグメをひとりにしないから、私を信じて』

『くぅん……くぅん、くぅん……(わかった……約束だよ、ユキメ……)』


 約束したから。

 私は待ってなくちゃならない。誰にも負けないで待ってなくちゃならない。ユキメが戻って来られるように、私はこの施設で……まだ約束を守れてないから。きっとユキメが私を迎えに来るから。


 だって目が覚めた時、ユキメはいなかったし、まだ淫力を探してるかもしれない。それともユキメも淫力が枯渇して私みたいに凍結されているのかも――


 いや、だったら淫力をもっともっと溜めて呼び出せばいい。淫力は奇跡の力。なんだって私の望みを叶えてくれる。だったら……撃たなくちゃ。私はここにいるよって狂気のビームを。


 私は通路を駆けながら約束を思い出していた。

 そしてたどり着く。制御パネルを叩いて分厚い扉を開き、広間に入ると中央に赤いエネルギーの柱が数十メートルもある天井に向かって伸びていた。


 淫力フィールドだ。私の狂気の能力の影響を受けて流れ出たプローディオの悪魔たちの淫力。私の能力下にあるから吸いだした淫力が、発射した狂気ビーム砲に集まってきているようだ。


 これさえあればきっとユキメも……。


 私は微笑みながらその淫力フィールドに入った。

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