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第77話 遺跡の傍観者

「お前、クロコと一緒にいた淫魔だよな? 一体何を企んでるんだ?」

『クロコ? ……ああ、シグメのこと。たしか、アスモデウスと戦ってたときにあの子のことそう呼んでいた覚えがある』

「見てたのか……」


 思わず愕然としてしまう。あの場にまさか、クロコ以外に淫魔がいたなんて……でもじゃあなんであの時襲ってこなかったんだ?


 などと思っていると、ユキメはあっさりと言う。


『そう、見てた。けれど見てただけ。この施設の監視システムを通して』


 監視してるだと……。

 どこだ、と周囲を見回す俺に向かって、ユキメは冷静な調子で続ける。


『探しても意味はない。それより本題に入ろう。せっかく通路に壁を下ろしてここまで誘導したんだから』

「く……っ。俺たちは、まんまとおびき出されたってことか……」

「なんかお兄が、偽の情報をつかまされてのこのこ来た主人公みたいな顔つきだけど、それドカンって爆破されるか待ち伏せされて袋叩きかの二択だからね――ってそれじゃ今ピンチじゃん……!?」


 あ、ホントだ。この状況って絶対ろくなことじゃないだろうし、マジで襲われる五秒前だ。

 すっかり最大警戒モードになった陽菜美と背中合わせになって油断なく周囲を見渡す俺の心でも読んだのか、シアが呆れたようなジト目を向けながら俺の肩をつんつんと突いてきた。


「お兄さん、よく見て。彼女の目には敵意がないよ」

「そうっすよ。ある意味、味方って言ってるし、こっちを油断させるにしては馬鹿正直すぎるっていうか、話だけでもきいてみません?」


 それもそうか。襲うなら、もう襲ってるはずだし。わざわざホログラムで出てきたのも気になる。

 だが、話を聞こうか、と俺が促したらユキメはとんでもない事実をぶち込んできた。


『まず初めに、私はアナタたちに危害を加えることはできない。私の身体はすでに消滅してるから。だから安心してほしい』

「どういうことだ?」

『これから説明する。順を追って話すと……』


 ユキメがそう言った直後、クリスタルの柱の端にウインドウが開いた。そこに映し出されていたのは、赤熱する空気と青い空。どうやら大気圏に降下している映像のようだ。


『今から数千年前、私たち淫魔は神界を攻めた。でも神界攻略は、神界の一部を切り離し、下界に落とすことで阻止された』


 数千年前って……いきなり話が壮大になったぞ。それがユキメの身体が消滅してるって話とどう繋がってくるんだ?


 ウインドウの映像が切り替わり、半分土砂に埋まった施設の入り口が見て取れた。そこに黒髪の少女と白髪の少女が立っている。


『私とシグメは土に埋もれたこの施設からどうにか外に出ると、そこは別の世界だった。周囲には人里がない未開の土地。これは淫魔にとって命にかかわること。淫魔は人間の性を食らって生きてるから、人がいないと実体を維持できない。取り残された戦乙女から淫力を補給する方法もあったけど、彼女たちは逃げ出すか、それが無理ならスーツの自爆を使って自決した』


 ウインドウがさらに切り替わり、黒い方の少女が黒いポメラニアンに姿を変えた。その犬をユキメが抱きかかえ、金属の通路を歩む映像が流れる。


『やがてシグメの方が先に淫力が枯渇して犬の姿に戻った。このまま人間から淫力を補給できなければ私たちは消滅してしまう。私は焦った。早く淫魔界に戻らなければ、淫魔界で淫力を補給しなければ……でも、この世界の座標がわからない私たちには空間門ゲートでここと淫魔界を繋ぐことはできない』



(次回に続く)2


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