第76話 不思議な部屋で待ち受けていた者とは……
ここは、なんの部屋なんだ?
俺――勇夜はそう思いながら周囲を見渡した。
短い橋を通った先の中央にクリスタルの柱があり、それを囲むように制御コンソールがある。それ以外は、周囲を囲むように伸びた手すりに計器パネルが二つあるだけで他に何もない。
橋のところから下を覗き込むと、深い堀のようになった先に光のパネルが見て取れる。
足元がくらっとしてくるほど高いな、この下……ホントになんの部屋なんだ?
この部屋はさっき通った通路と同じで、相変わらず四方を金属の壁に囲まれているが、
「気をつけて……さっき通路の壁が下りてきたのに、この部屋の通路に続く道は塞がれなかったから、きっと何かあるはずだよ」
そうシアが言うと、不思議がってもいられなくなる。俺は慎重にコンソールに近づいた。
「なんにせよ。ちょっと見ていこう。他に行くあてもないし」
「うわ、結構高い。それに下からふわふわした光が……ううっ、ずっと見てると頭がくらくらしてくるっすね」
「ですよね。なんか高いところから下を見ると引き込まれそうな感覚がありますし」
「わかるー。アタシも小さい頃は怖かったなー。落ちたら死ぬから視覚的な恐怖っすよ」
陽菜美と一緒に橋のところで話すレヴィ。思わず俺が「お前飛べるんだからこのくらいの高さでくらくらしてんじゃねぇよ」と言ったらやれやれと首を振られた。
「小さい頃って言ったでしょ。羽が小さくてまともに飛べないから。というか、初めからびゅーびゅー飛べたら苦労しないっすよ。あ、先輩飛んだことないからわかんないかー」
なんだか馬鹿にされた気がする。別に飛びたくないが、レヴィのくせに生意気だ。俺は子馬鹿にするようにふっと笑ってみせる。
「今さっきくらくらしてた奴が何言ってんだ」
「いや、ただ光で目がくらくらしただけで――あー、あれっすよ。不思議な光だなーって思って意識が引き込まれてですね」
「言い訳してるけど、注意散漫なだけだからな。それか、視覚がクソザコかの二択」
「アタシ、これでも飛べるから機動力を活かした斥候なんすけど! 先輩と関わる前は偵察部隊だったんすけど! 注意散漫とか視覚がクソザコとかもう、自信なくなっちゃうすよ……!」
レヴィは橋を渡って詰め寄ると、不愉快そうに眉根を寄せてぎゃーぎゃーと俺に絡んできた。面倒だ。今はそんな場合じゃないのに――
そこで中央のクリスタルが淡く輝いた。
『みんな揃った?』
静かな声が聞こえた方向に視線を向けると、白い着物に長い白髪が見て取れた。頭にはふわふわした犬耳があって人間離れした容姿だ。
ユキメだった。あの映像で見た姿と同じだ。
そう理解した俺は咄嗟にショットガンを構えた。他の皆もざっと周囲を警戒するように腰を落とした。
『待って。別に危害を加えるつもりはない』
両手を胸のところまで上げ、敵意がないことを示すユキメ。その姿はぼんやりしていて、立体映像のように揺らめいている。
『むしろ逆。ある意味、私はあなたたちの味方』
何を言い出すかと思えば味方とか、全然信用できないぞ、この淫魔。映像じゃクロコとセットでいた印象だが、こんなところで会うなんて……絶対に何かあるはずだ。
(次回に続く)1




