第74話 悪魔シスターの切り札とは……
「さっきはよくもやってくれたねぇ。お返しに私が直々にキミを気持ちよくさせちゃおっかな」
「させません!」
咄嗟にライフルを構えます。ですがその瞬間、高速で何かが動きました。
「うっ……!」
「え……」
シグメの腕が切り飛ばされ、宙を舞い、どさっと落ちました。
私じゃありません。私が引き金を引く前に、ルキナさんの影から鋭利なものが飛び出して、切り飛ばしたんです。
ばっと後方に飛び退き、シグメが距離を取りました。
「その子、ヤバいものを飼ってるねぇ……あー怖い怖い」
切られたところは血が止まっているようでほとんど出血していないようです。片腕を失っても全く動じてない様子で赤みがかった黒い瞳を向けるシグメ。その視線の先では、ルキナさんの影から不死者が染み出てきます。
宙を漂うボロボロのローブ。大柄ですが、下半身がない骨の身体。上半身だけでも二メートル以上はあります。そいつは大きな鎌持ち、骸骨の顎をカタカタと鳴らしていました。
死神。少なくとも私の目にはそう見えました。
すごいこの女……最大火力出して気絶するダメダメ悪魔かと思ったら、意識のないままこんな不死者を召喚するなんて。伊達に侯爵悪魔をしていませんね。
「不意打ちだから腕を持っていかれちゃったけど……次はそうはいかないよ。こわーい不死者さん?」
「…………」
死神が無言で大鎌を構えます。まったく隙のない構え、対して相手は着物姿の犬耳少女。その肉のない骨だけの顔ながら、眼窩に映る赤い瞳が強く輝きます。まるで死神が、シグメを強者と認めたような振る舞いです。
「ふッ――」
シグメが踏み込みました。物凄く早い。人間離れした脚力で一気に接近し、死神に触れようとします。ですがブンッと振られた大鎌に阻まれ、腕を引っ込めて回避。さらに横薙ぎに振るわれると、シグメは飛び退いて距離を取ります。
今がチャンスです。私はシグメが死神に気を取られている間にクリスタルモジュールに近づきました。そこには常夜の性域の人たちが怯えながらも怪しく笑っています。
「お前らは終わりだ。すぐにシグメ様の虜になる」
「そうよ、あんなアンデッドに淫魔が負けるわけないわ!」
「黙りなさい!」
「「ひ……っ」」
半裸の男女を銃で脅しながらアクセスパネルを操作します。クリスタルの基盤をスライドさせると、その精緻な模様が描かれた基盤に向かって銃弾を放ちました。全自動射撃で数発打ち込むと、破片が飛び散り、バチバチと火花が上がって白い煙が噴き出します。
これでジェネレーターを使うには修理が必要です。シグメが狂気ビームを発射するのは不可能になりました。
(次回に続く)3




