第73話 最大戦力なはずの悪魔シスターが……
私が鋭い視線を送ると、死霊魔術師を従えたルキナさんが片手をシグメに向けました。
「魔法最大強化、破術・究極業光!」
彼女の手から極太のレーザーが発射されます。直径にして二メートルほど。艦載のプラズマ砲に匹敵する迫力です。その破壊の奔流は眩い光を発しながら空気を焼き、シグメに向かって伸び、クリスタルモジュールごと華奢な身体を焼き――
「えいっ!」
けれどそこで、目を疑うような現象が起きました。
シグメが可愛らしく両手を突き出した瞬間、極太レーザーが曲がり、斜め上にそらされたのです。そのまま壁にぶち当たり、装甲プレートを赤熱させ、ドロドロに溶かすと煙が噴き出し、跡形もなく蒸発させました。
その破壊力に驚いた常夜の性域の構成員たちは行為を中断し、慌てて中央に駆け寄ってクリスタルモジュールの影に隠れます。一方、シグメはというと、ぽっかりと穴をあけた壁を一瞥し「あちちっ」と手を振っていました。その両手は黒く焦げていて「あちちっ」なんてことで済む怪我ではないのに、今度はふーふーと息を噴きかけて両手を冷まそうとしています。するとそれだけで炭化した組織がはがれ、肌色が覗きました。やはり化け物。淫力による再生能力は驚異的です。
ですが体勢を崩すことには成功しました。今こそ好機です。
「効いてますよ、ルキナさん。もう一発お見舞いしてください」
「きゅ~~~……」
「え……えぇっ!?」
首を回してみると、ルキナさんが倒れていました。普通に気絶しています。
こ、この女! 一発撃っただけで気絶なんて! 侯爵級悪魔なのに、なんて欠陥品。よく見ると手袋が焦げてますし、自分の魔法でダメージを受けて倒れたようです……!
作戦変更。ここからは私だけで対処します。
完全に腕が治ってない今、奴の動きは限定されているはずです。
私はMR27アサルトライフルを構え、胴体を狙って容赦なく引き金を絞りました。
ですがシグメは、高速徹甲弾がヒュンと空を切る音よりも早く動き、並外れたフットワークで照準から外れます。両手をぶらぶらさせながら避けたかと思ったら、シグメがぐっと接近してきました。
ルキナさんを守ろうとしてか、死霊魔術師たちが杖を掲げ、稲妻、と唱えて電撃を放つ。
「無駄だよ、その程度の電撃なんて……!」
シグメの瞳が怪しく光る。それだけで稲妻は左右に逸れ、壁や床を虚しく焼きました。
「アンデッドに興味ないよッ!」
跳躍すると、一瞬で四体いた死霊魔術師に触れ、地に伏したルキナさんの真横に着地します。そしてシグメがこちらに振り向いたところで、空中に浮いた死霊魔術師たちがバタバタと落ちました。その直後、彼らは両手で頭を押さえてぶるぶると身体を震わせ、やがて光になって霧散しました。
「発狂した? アンデッドが……そんなの、あり得るんですか……?」
「ふふっ、淫力に不可能はないからね。精神系の魔法に完全耐性があるアンデッドでも狂気するの。淫魔の狂気はエッチなことをすれば和らぐけど、アンデッドには性器がないからね。自分で自分を慰めることもできないねぇ。だから自慰ができなくて自壊したってわけ」
そう言いながらシグメは倒れたルキナさんの横にしゃがみ込むと、シスター服に手を伸ばしました。
(次回に続く)2




