第67話 悪魔姉妹を従え、俺は強敵に備える
そろそろか……陽菜美も用意できてるようだし俺も……あっ、こいつは外しとかないと。
戦いに備えて眼帯を外す。それを起動の合図にして義眼が連動し、スーツのステータスやレーダーのようなものが視界の端に映った。その前方表示装置《HMD》のような視界の中に打ち合わせをする二人の姿が見えた。
「初撃は任せましたよ、シアさん」
「うん。不死者召喚・骸骨鼠の大群」
ユリさんに頷くと、シアは静かに呪文を唱えた。シアの足元にいくつもの円形の光が輝き出し、そこから無数の小動物がせり上がってくる。
骨だ。皮も肉もついていない骨だけの鼠の大群。その目は、ぽっかりと黒い穴の開いた眼窩だが、眼球の代わりに赤い光が灯っている。
どうやら大まかに突入の段取りの確認を済ませていたらしい。シアが空間門の前に骸骨鼠たち整列させていく。
「凄い数だな。百、二百……いや、もっといるか……」
「ふふん♪ 凄いっしょ? アタシたちアシュウェル家の悪魔は代々死霊術師で、特にスケルトン系のモンスターを召喚して戦うんすよ」
「へー、そりゃ頼もしいな。いくら淫魔のエロ魔法でもさすがに骨まで犯せるわけねぇし、でもさレヴィ。お前も死霊術師なんだろ?」
「そうですけど」
「お前がアンデットを召喚するところなんて見たことないんだが……」
「その……上手く召喚できなくて。それに殴った方が強いし……一応魔法は、火炎の豪腕とかが使えるっすけど、アタシって魔法の命中精度がいまいちなんで、味方を巻き込まないときにしか使えないんすよね……」
それもまた個性というものか。疑似的にドラゴンの血が入っているから色々大変なこともあるんだろうな。なんか魔法の命中精度がいまいちって言ってるし、そりゃ殴った方が早いだろうな。まぁ敵がうじゃうじゃいたらその火炎の豪腕とやらが活躍しそうだけど。
そんなことを思っていると、陽菜美が武器ラックから三丁のライフルを持ってきた。
「お兄、ほら大漁。日本じゃ絶対手に入らないような銃がこんなにいっぱい」
「そんなもん持ってきたって仕方ないだろ。俺たち素人だし、どうせ撃っても当たらねぇよ」
「いやぁそうでもないんだよね。なんかこのスーツに近距離だと照準補正があるらしくて、初心者の私たちにはその機能オンにしてるって。だからちゃんと敵に向ければある程度当たるって」
「そこはFPS仕様なんだ……でも俺、基本クソエイムだからな」
「わかってるよ。一緒にゲームするときお兄は即デスだからね。でもショットガンならワンチャンあるでしょ」
ずっしりとした銃を押し付けられる。陽菜美が渡してきたのはゴツイ銃で、見た目はアサルトライフル。だが銃口もマガジンも大きくて、どれも散弾を発射する機構になっていた。
デザインも近未来的で壁に向けて構えてみると凄く身体にフィットする。これならやれるかもしれないな。
二人してガスマスク越しに、ふふふ、と笑う。鼻から上はガスマスクで覆われてないから、目でわかる。陽菜美のその強気な目が。
普段チキンなくせに強武器を手に入れた途端、強気に出るとかホントいい性格してなぁ。
陽菜美は予備のライフルを背中に引っかけ、それから手に持ったアサルトライフルを点検した。俺と陽菜美が装備を整えると、ユリさんが空間門の前から振り向いた。
「では突入しますよ」
俺たちは頷き合う。そして最後にシアが骸骨鼠たちに手をかざし、
「付与術発動・麻痺毒」
と魔法をかけた。鼠たちの牙が毒々しく染まった。その瞬間、空間門が開いた。
二〇メートルほどの奥行がある広い通路の先に階段が見える。その階段は十数段上がったところで左右に分かれ、吹き抜けの二階部分の通路が続いていた。
その空間に茶褐色の肌をした小人が何人かいる。小悪魔級だ。階段や壁の照明に照らされて見える。
(次回に続く)3




