第65話 神との対話を見てるんだが、話してる内容が……
もう迷っている場合も、コンビニに引きこもって手をこまねいている場合でもなかった。
俺の目線の先では、コンビニに戻ったユリさんが司令部に掛け合っていた。しばらくすると、険しい表情で通信ウインドウの先に映る精悍な顔の男に噛みつきはじめた。
「ですからテュール様、もう一刻の猶予もないんです。あの淫魔は、軌道防衛全方位収束ビーム砲と自らの能力を掛け合わせて攻撃してきました」
『軌道防衛のビーム砲を、か? だがあれは中継ステーションがなければ上空しか撃てないはずだろ。ビームは直線でしか飛ばんのだからな』
綺麗に切りそろえられた髭を撫で、うーむ、と唸るテュール様。もうこんな問答は時間の無駄だと思ってるんだろう。ユリさんは眉をひそめた。
「その中継ステーションを使ったとしか思えません。実際に城塞都市プローディオを攻撃されたんですから。中継ステーションの歪曲磁場を使って曲げ、狂気ビームを地上に落としたんです」
『じゃあアレか? やつらは、我々の技術を利用して中継ステーションを打ち上げたのか?』
「いえ、その可能性はないかと。シグメが犬から淫魔の姿になったのはついさっきですから、おそらく第一神界域が、この世界に落下しているときに中継ステーションを切り離して周回軌道上に設置したんでしょう」
『……奴ら、セッ〇スしか脳がない連中ではないようだな』
テュール様は頷き、では淫魔討伐の志願者を募ろう、と言った。だがそう言うことは予想したいたようだ。ユリさんは即座に首を横に振る。
「その必要はありません。今この場にいるメンバーだけで対処可能です」
『ほう、随分な自信だな』
「はい。いくら戦力を投入してもシグメを仕留めるのは難しいでしょう。戦乙女を送り込めば、奴に餌を与えることにもなります。ならば、悪魔の手を借り、少数精鋭で攻めるのがよいかと」
『悪魔の娘たちと共闘するのはわかるが、そこの兄妹も一緒か?』
「彼らも必要です。勇夜さんはアスモデウスを倒した実績があり、陽菜美さんはそのサポートをしました。きっと役に立ちます」
「お兄、なんか戦場に送り込まれそうだよ……! ねぇ、どうにかして私怖い……!」
「俺だって怖ぇよ。でも、クロコは俺らの問題でもあるんだ。一度飼うって決めたら途中で投げ出したりしない。そうだよな、レヴィ」
「せ、先輩……」
うるんだ瞳でレヴィが見てくる。
それだけクロコが大切だということなのだとはわかる。わかるが、そのペットへの愛に水を差す奴が約二名いた。
「今『ズキュン!』って音が聞こえそうな顔をレヴィさんがしました。それに熱い視線で見つめ合ったりして、これは禁書ではそのままベッドインしそうな雰囲気……わたくし、今後の展開が気になります……!」
「レヴィってチョロいからね。人間の男が好きだし、もう落ちちゃてるのかな?」
まったく何を言い出すかと思えばこの恋愛脳どもめ。このくらいでヒロインゲットできたら誰も苦労しないっての。ルキナさんの熱心な視線もウザいし、シアのジト目もウザいし、ねぇねぇと俺のコンビニ制服を不安げに引っ張ってくる陽菜美も面倒だが、特にルキナさん。アンタ興奮してるだけだろ。このエロ本マニア。
と、そうこうしていると話はまとまったようで、投影ウインドウを閉じてユリさんが向き直ってきた。
「ではついて来てください。装備を整えますので」
イートインスペースの円形の飾りに空間門を開き、ユリさんが入っていく。それに続いて俺たちもぽっかりと穴をあけた空間に足を踏み入れた。
中に入るとそこは未来的な空間で、四方を金属に囲まれた部屋だった。円形のプラットフォームが等間隔に四つあって、壁際には銃火器が並び、物騒な空間になっている。
武器庫だ。ユリさん視点で見たものと同じところじゃん、ここ。
(次回に続く)1




