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第60話 妖狐の能力、見せてあげます!

 脳幹を撃ち抜けば倒せるはずです。

 ですがシグメの頭に銃口を向けた瞬間、装甲服の複合センサーが反応して警報ダイアログを網膜に表示し、視界の端に白い着物がちらつきます。


 ――不味い! 


 私は咄嗟に幻影デコイを展開し、術で自分自身を透明にしながら半歩下がりました。

 ぶんっと振るわれた少女の手が私の幻影を捉えます。私とそっくりな見た目の幻影は、触れられると黒い霧になって霧散しました。

 どうにか避けられました。ですが、触れられなくても少しだけ頭がくらくらしてきます。これが幸福の力なんでしょう。


「どうして……確かに触れたはずなのに感触がなかった」

「くっ……白い方も厄介ですね」


 私が銃口を向けると、ユキメが小さく首をかしげた。


「今の黒い霧は何? それにその狐みたいな耳……もしかして妖狐?」

「そうですよ。といっても元妖狐ですが、私もちょっとした能力があるんですよ」


 これは戦乙女になる前の、まだ妖狐だった頃の能力。相手を化かし、相手の認識をずらす術です。幻影を本物と認識させながら私は透明になって別の動きをするというだけのシンプルな幻術ですが、これは万能ではありません。幻術の有効範囲は二メートルほど。近接戦や銃撃戦であれば非常に有利に立ち回れますが、この二人の淫魔の能力は彼女たちを基点として放射状、あるいは指向性をもったエネルギーを飛ばすものですから、完全に避けきるのは無理です。


 撤退するしかありません。私では、勝てないです。


 弱腰でもこれが事実。ですがそれを悟られないように私は毅然とした態度で銃を構えたまま相手の次の行動に備えて腰をかがめました。


「あなたたちでは、私に触れることすらできません。実弾は有効なようですし、このまま撃ち殺してあげますよ」

「ふーん、すごい自信。でも、その銃じゃあ私たちは殺せない。ねぇシグメ」

「うん、ちょっとチクチクするだけだし、大したことないよっと!」


 シグメが階段を飛び越え、プラズマ機関銃の横に立ちました。そして、ぺっと何かを吐き出します。カランカランと床に落ちたそれを見て、私は思わず目を見開きました。

 吐き捨てたんです。飴玉でも吐くように、胸に撃ち込んだはずの高速徹甲弾を。

 銃弾を口まで移動させたようですが、こんなふざけた生き物がいるなんて……。

 二人の淫魔がじわじわと距離を詰めてきます。


「この子、幻術を使うから触れられない。視覚的にばら撒くのが効果的」

「うん。じゃあ狂気と幸福の視線で脳をシェイクしてあげよっかー」


 ユキメの提案に頷くと、シグメの瞳が赤く光りました。その隣ではユキメの瞳も青白く光っています。


「……っ!?」


 ぞっとしました。怪しく光る赤い瞳に恐怖して、静かな光を宿す青い瞳に歓喜して、頭の中がぐちゃぐちゃにされたみたいに混乱して勝手に足が後ろに下がります。

 この淫魔をこれ以上先に行かせてはなりません。もし、ここを突破されたら神界が狂気と幸福の地獄にされます。

 頭ではそう理解しても、私にできることは下がりながら牽制射撃をすることくらい。ですがその射撃も弾倉マガジンが空になってできなくなり、無我夢中で通路に飛び出します。


「キツネ狩りだ。犬の血が騒ぐね、シグメ」

「そーだね、ユキメ。妖狐を狩る犬神ってなんかカッコいいし」


 完全に遊び感覚です。彼女らは元犬神の淫魔のようですが、私だって元妖狐で、戦乙女で、装甲服だって着ているのに、なんですかこの体たらくは。ですがこれは好機でした。



(次回に続く)6


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