第58話 あいつらは、一体なにものなんだ!? 可愛らしい侵略者!
装甲服を着た戦乙女はエネルギーシールドのおかげで全員無事なようです。ですが、機銃手の姿はありません。階段を上ってみると、機関銃の後ろで力尽きるように倒れていました。
最後の方でスタン弾を浴びたのでしょう。よく見ると強化服の戦乙女が右のワークスペースや階段付近に何人か倒れています。フル装備では雑兵の小悪魔級でしたが、こうして見るとあの物量は脅威的でした。百人以上はいましたから。
「しっしかまぁ、数は多かったけど、こんな奴らに空間門管理室が占拠されたなんて意外だな」
階下に集まった四人の戦乙女のうちの一人がそう言うと、他の三人は頷き合いました。
「そうよね。強化服の子たちは苦戦してたみたいだけど、私たちならこの通り余裕だもの」
「でも早いとこ奪還しないとヤバいよ。淫魔界からどんどん淫魔たちが流れ込んでくるし」
「うん……あ、正面に誰かいる! 通路の方、数二点……!」
階下の戦乙女たちが一斉に通路の方にプラズマライフルを向けました。私も正面を警戒し、目の前に設置された機関銃に飛びつきます。
「ユキメ、前衛の子たち全滅してるよ。あの機械の鎧も剥げないで倒れないでほしいねぇ」
「うん。でもシグメ、ほら、もうあの人たちしか残ってないみたい」
「じゃあ楽勝だね。一気に食べちゃおうか」
通路から二人の人影がふらりと出てきました。
ゆったりとした所作で、無防備に近づいてくるその二人には犬のような獣耳がついていました。獣人タイプの淫魔です。一人は赤みがかった黒髪のミディアムヘアの少女で、人懐っこい笑みを浮かべています。そしてもう一人は雪のように白い長髪の少女で、こちらを子馬鹿にするように冷笑を浮かべています。どちらも一〇代半ばくらいの少女の姿をしていて、それぞれ髪の色と同じ黒い着物と白い着物を着ていました。
「女形……!? 淫魔級かッ!?」
戦乙女の誰かがそう息を呑んだ瞬間、プラズマライフルが火を噴きました。
「撃て撃て!」
階下の戦乙女が叫ぶと、四人分のプラズマ弾と私の荷電粒子機関銃の猛攻が淫魔を襲います。
ですがどういうわけか、そのプラズマの弾道はねじ曲がり、誰もいない通路の方へと流れていきました。これでは彼女たちの身体を焼くどころか、着物に焦げ跡ひとつ残せません。
プラズマを弾いた……いえ、あれはもっと別の、光を鏡で反射させたみたいな……不味いっ。
私は一旦射撃をやめました。黒い方の淫魔級――シグメが戦乙女に肉薄したからです。
「その鎧を着た子は厄介だねぇ。普通に能力を使っても効果が薄いから」
「クソッ、舐めた真似を……ッ!」
シグメが一番前にいた戦乙女の装甲服を指でつーんと撫でたその瞬間、シグメを振り払おうと彼女が怒りのうなりを上げながらプラズマライフルの銃床で殴りかかります。ですが、シグメはひらりと避け、彼女のアーマーに抱き着きました。
「でもこの距離なら! さぁ踊って、大切なお仲間を貪る性のダンスを!」
「うう……、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃっ! 急にどうしたの……!?」
シグメに抱き着かれていた戦乙女がくるっと後ろを向いたかと思ったら手近な戦乙女を押し倒し、自分と相手のガスマスクを剥ぎ取って荒々しく唇を重ねました。
(次回に続く)4




