第56話 これが戦乙女の鎧――装甲服《アーマードナノスーツ》
詰所の隣にある武器庫に入ると、そこは壁際の武器ラックに銃火器が並んだ部屋でした。武器庫の四隅にある円形の武装ステーションに私は立ちました。
一段高くなったそこから機械のアームが次々に伸び、私に機械の鎧をつけていきます。
装甲服。さっきの強化服には特殊繊維とナノマシーンを織り込んで身体能力を強化するものでしたが、これはその完全上位互換です。
首から爪先にかけて多層構造の合金とジェル層に守られ、高い強度と衝撃吸収能力を持つこのスーツは、戦乙女の盾であり矛。背面のジャンプパックと一体型のパワーユニットを備え、そこから出力されるエネルギーシールドは銃弾もエネルギー兵器も防ぐほど。ですが、スーツの外観は滑らかな金属で、スペックとは裏腹に薄い装甲という感じで動きやすい。顔は、エネルギーシールドがありますから、鼻から上半分を露出していて、ガスマスクと通信用のヘッドセットがついているだけ。これは利点です。ぱっと見ただけで個人を判別できますから。
ちなみにこちらのスーツも神々から、カッコいいのに可愛らしさもあるのぉ、と大変好評だったりします。エロい目で見られるのは大変不本意ですが……。
しかし、いちいちここに来るのは不便ですね。
このスーツを転送できれば戦術的に大変有利に戦えますが、着装時のエネルギー波も弾いてしまう偏光コーティングの装甲プレートのせいでそれはできなかったりします。
少し時間がかかりました。早く応援に向かわないと。
機械のアームから差し出されたプラズマライフルを受け取ったところで、ヘッドセットに雄々しい声が聞こえてきます。
『こちらは軍神テュールだ。淫魔どもはエリアの外縁に向かっている。おそらくドッキングゾーンを占拠し、切り離しを阻止した上で隣接するエリアに侵入しようとしているのだろう』
通信を聞きながら、個人用誘導弾システムの弾種を選択していきます。
閉鎖空間が主な戦場ですから周りに被害を出しにくいマイクロミサイルにして、敵の物量が多いときに使用する想定で広範囲を焼ける燃焼弾頭《フレイムスピアⅢ》を二発入れましょう。
投影ウインドウのパネルを操作して、小型ミサイルポッドに入れるものを決めました。
アームが伸び、逆U字型のミサイルポッドを背面に装着し、全武装の着装が完了です。
『奴らは、他の神界も第一神界域と同様に手中に収めるつもりだ。諸君ら戦乙女にはドッキングゾーンの死守と、可能であれば空間門管理室の奪還をしてもらいたい』
最後に、健闘を祈る、と言ったテュール様の声に頷き返すと、私は武器庫から出ていきます。
「やっぱりこれは持っていきましょうか」
壁際の武器ラックを通ったついでにアサルトライフルを背中のラックに収め、四つの弾倉を腹部のポーチに入れました。
これはお守りです。実弾火器なんてあまり使われませんが、私は実弾もエネルギー火器も持つ派です。この方が色んな敵に対応できますから。
通路からキキッとタイヤが擦れて止まる音がしました。ちょうどドアの前に来た運転席から鋭い声音が響きます。
「ほら、特急便だよ! 急いで急いで!」
「はい!」
武器庫前に横付けされた高機動車両に私は飛び乗りました。極限に軽量かされたその車にはドアは無く、頑丈なフレームだけで構成された物。迅速に乗り降りし、より多くの戦闘機材を運ぶには最適な車です。四つのシートと銃座に一人乗せたまま私と合わせて五人の戦乙女を快速で運びます。
そして通路を四分ほど進んだその時、爆発音が響きました。
「クソっ、隔壁が突破されたかっ!?」
「爆音が反響してるわね。どこからかしら?」
「音響センサーによると、もう一ブロック先から響いてるようだね」
「この先は、観測ステーションだったわよね。本当に外縁に向かってるってことは……」
不穏な空気が立ち込めてきます。彼女たちの硬い声音を無言で聞いていた私は、プラズマライフルの安全装置を外しました。
(次回に続く)2




