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第54話 異世界でSF映画!?

 小首をかしげてぱっとしない俺の様子に焦れたのか、物覚えが悪い生徒に教えるようにユリさんが「いいですか」と指を一本立てた。


「勇夜さんたちが入ったあの遺跡、メルクーア遺跡は元々神界の一部だったんです。本来の呼ばれ方は、第一神界域メリクリウスエリアといって、決して下界の者の手が届かない高次元領域に存在していました」


 整った顔を曇らせ、ユリさんが言葉を続ける。


「ですがある日、次元を超えて淫魔が攻めてきました。ほとんどが私たち戦乙女の相手にならない雑兵ばかりでしたが……武力で勝てても敵の圧倒的な能力の前に、私たちは追い詰められていきました。そんな淫魔の軍勢を率いていたのがクロコさんだったんです。彼女は淫魔の将として神界を犯しにきたんです。そして私たちは――」


 ユリさんが腕を頭上に伸ばし、 ぴんっと天井を指差した。


「空から落としたんです。犯されるくらいなら第一神界域メリクリウスエリアを……」

「で、何年も経って、この世界の奴らにメルクーア遺跡とか言われるようになったってわけか?」

「その通りです。忌々しい話ですが、当時の神界は……外敵が侵入してくる想定は神界周辺の空間を裂いてくるものとしていて……まさか空間門ゲートを利用して内側から攻めてくるなんて思ってもみなかったんです。想定外の事態とはいえ、酷い戦いでした」


 そこまで言ったユリさんは落ち込んだように少し肩を丸めて、イートインスペースに戻った。


「では皆さん、私は神界に戻って今回の淫魔の対応方針を聞いてきます」

「クロコはどうなるんですか……?」


 不安そうな目で訴えかけるレヴィに、ユリさんは厳しい顔のまま口を開いた。


「おそらく討伐という話になるでしょう。あのまま生かしておくにはあまりにも危険ですので」

「そんな……どうにかならないんすかっ!? 淫魔だから殺すなんて、横暴っすよ……!」

「ふぅ……その調子では、無理にでもクロコさんと接触しそうですね。ですが、これを見ても同じことが言えますか?」


 腕輪型のデバイスを外してテーブルの上にそれを置くと、ユリさんは投影ウインドウを起動した。

 通路が見える。壁と床が滑らかな金属に覆われ、壁から天井付近にかけて分厚いフレームで補強されている。頑丈そうだ。等間隔にフレームが並んでいる所を見るに、恐らく隔壁がおりるか、区画ごと切り離すような構造になっているんだろう。

 そんな宇宙船か未来的な基地の風景が突如として慌ただしくなる。警報が鳴り響き、ユリさんが着てる物と同じ黒いブレザー姿の女性たちが慌ただしく動き出す。


『この警報は、敵襲……っ!?』


 端末からユリさんの声が響き、映像が左右に振られた。どうやらユリさんの視界を映しているようで、ユリさんが首を振る度に動いていた。

 なんだか、FPSみたいな映像だな。通路もSFっぽいし、ゲームみたいだ。

 投影ウインドウの中のユリさんが走り始めると、現実のユリさんが手振りで映像を示した。


「これは、淫魔が神界に侵攻してきた時の映像です」

「おお、すげぇ。異世界でSF映画的なモノ見てるよ。ジャンルが正反対すぎてなんか新鮮」

「でもさ、お兄。魔法と化学は紙一重って言うし、面白ければどっちも一緒だよ。ってか、さっさと武器とか拾わないかな? そしたらもっとFPSっぽい絵になるのに」


 お前もFPSゲー感覚で見てたのか。やっぱ俺たち兄妹だわ。

 FPS脳な陽菜美を見てそっと微笑む俺と対照的に、レヴィは苛立たしげに唸っていた。


「こんなの見せられても無駄っすよ……クロコはもうアタシの大事な家族ですから」

「レヴィ、まずは落ち着こう。ほら、ここコンビニだからお茶もできるし」

「シアは黙ってて、こんな時にお茶なんてしてる場合じゃないっすから――」

「少しは頭を冷やしなさい。そうでないと、今がどんなに危機的状況なのか判断できないでしょう」


 レヴィの声を厳しい口調で遮るとユリさんは「それでは対策会議に行ってきます」と言って壁に開いた空間門ゲートで神世界に戻った。

 その際、ユリさんの背中に掛かっていたライフルがやけに物騒に見えた。

 あれで、クロコを撃ったんだもんな……会議、上手くいくといいな……。

 俺は不安を感じつつも投影ウインドウに視線を戻したのだった。


「面白かった!」


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