第33話 ヒロインの境遇がヒドい! ある意味拷問だわ……
「しゃーせー」
客が入る度にレヴィが挨拶している。青いラインが入った黒いコンビニ制服も段々様になってきて、もう立派なコンビニバイトだ。
バカだと思ってたけど、あいつ日本の知識があるおかげで事前に知ってるというか、結構要領がいいんだよな。
あの日、万引きの制裁として無理やりくすぐったり足ツボでせめたりしてしまったことの口封じと、淫魔関連の対策としてレヴィをコンビニバイトとして迎え入れていた。
とはいっても最初は勧誘に難航した。
『は? 本気で言ってるんすか?』
『悪くない話だろ。お前も知っての通り、このコンビニは悪魔を撃退するだけの力がある。淫魔に襲われた時、ここに居れば安心だろ』
『何が安心すか、この変態、犯罪者! もうおしまいっす! お姉ちゃんに言ってアンタを捕まえてもらって、そんでもって豚箱で不味い飯を食ってもらうっすよ!」
スタッフルームのソファーから立ち上がり、びしっと指さして豚箱宣言。だが俺は落ち着いた調子で口を開く。
『そんなことできると思うのか? お前が万引きしたことで店長権限が発動した。お前に拒否権はない。さぁ、俺と一緒にコンビニで働こうじゃないか』
『無理無理無理っ! 絶対毎日セクハラされるもん! レジで接客中のアタシのお尻を撫でながら、新人指導だ、とか言ってエッチなことする気でしょ!』
『そ、そんなエロ漫画みたいなことしねぇよ……! 常識的に考えろ、お客さんから見えるだろうが!』
『どの口が言うっすか!? アタシにあんなことしておいて……』
『あれは万引きしたお前へのお仕置きだ。もうしない』
『そうっすか……』
レヴィはひとつ息を吐くと、激しい口論の後とは思えないくらいしょんぼりと肩を落とした。
『なんだ? 残念そうだな。もしかしてまたしてほしいのか?』
『そんなわけないでしょ! これは、ほっとしてるだけっす!』
『とにかくだ。やっぱお前、ここでバイトしろよ。コンビニの調査が任務なんだろ? それにここで働けば衣食住は保障するぞ』
『マジ? 住み込みで?』
『ここはマンションでもあるからな。部屋はいっぱい余ってんだよ』
『あの、家賃は?』
『働いてくれるなら格安でいいぞ。この辺の相場の二〇パーセントくらいとか。どうせ、この辺りじゃ悪魔しかいないから、信用できそうな奴に貸すつもりだったから……まぁ社員寮みたいなもんだな』
『神じゃん! ひと月住んで銀貨二枚くらいっしょ? やった、アタシも夢の一人暮らし!』
『悪魔が神じゃんって喜んでるよ……いいのか? お前それで』
『ホントよかったっす。実はアタシの家、パパもママも性に開放的で家中どこでもパコパコしてるかあら居心地超絶悪いんすよね。だから任務のついでに夜遅くまでここで時間潰してたんだけど、もうそんなことしなくてもいいんだ……』
ヒドイ家庭環境だ。それじゃあ家に帰りたくないのもわかる。
『お前も、いろいろ大変だったんだな……』
こうしてレヴィがコンビニバイトになった。
そして今となっては立派な戦力だ。
「あざしたー」
客を送りだし、その後ろに並んでいた客たちに対応するレヴィ。レジ担当の彼女は気楽な調子で働いている。意外に器用な奴だ。コンビニバイトの才能あるぞ。公共料金の支払いや宅配の受け取りとかは異世界のコンビニだからなくて、さらに掃除もほとんど円柱形の掃除ロボットが閉店間際にやってくれるから普通のコンビニよりも楽ではある。だがここの利用客は、コンビニの利用法がわからない魔族たちがほとんどだ。そんな彼らをレヴィは両替機に誘導したり、ちゃっかりおすすめ商品を宣伝したりするのだから抜け目ない奴だった。
(次回に続く)1




