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第26話 雑誌コーナーでドキドキしてるお姉さんっていいよね……

 コ〇ドーム買って帰っちゃったよ……あのダウナーロリ。絶対間違った使い方するぞ。小袋を開けて彼女の『え……っ? なにこれヌルヌルする……変な風船』というリアクションが容易に想像できる。


 自動ドアを通って帰路につく小さな背中を見ていると、笑いが込み上げてくる。

 印象的なお客さんだったな。無垢な瞳で下ネタ地雷原をお散歩して爆弾をばら撒くような子だ。名付けるなら天然ボマーとか、かな。


「あの、すみません」


 コンビニの奥から優しげな声が聞こえてきた。

 どうやらさっき考え事をしている間にもう一人お客さんが入っていたようだ。

 だがすぐに声がした方に向かうと――


「え……?」


 俺は固まった。雑誌コーナーに見覚えのある女性がいた。

 右目を銀色の前髪で隠した優しい顔立ちに、ブラウスを大きく膨らました胸……間違いない。ルキナさんだ。白いブラウスに黒いスラックスというスーツ姿で、その上にパーカーを着て申し訳程度にフードまで被って黒い二本の角を隠しているが、見間違うはずがない。


「る、ルキナさん……?」

「え……いえ、違います。私は……仕事帰りの女性です……!」


 おっと、絶対モブじゃないモブが現れたぞ。確かにOL風の格好してるけど、明らかに無理があるだろ。そのビジュアルじゃ華やかすぎて印象にめちゃくちゃ残るって。


「それはそうと、この書物です。絵や記号は理解できますが、文字が読めません。他の言語に対応したものはないのですか?」

「すみません、基本ここにあるものは輸入品ですので……」


 このコンビニが抱える問題の一つだ。棚に並んでいるものは、基本的に日本で作られた商品らしいから商品の表記はすべて日本語だ。対応策としてこの国の言語に対応した説明文をシールにして商品に貼るという話があったが、雑誌だとそうはいかない。あの膨大な文字をいちいち翻訳するなんて無理だ。とはいえ、雑誌コーナーがないコンビニは寂しいからあくまでインテリア的な意味で置いていた。


 食品に目が行って見向きされないと予想していたが、こんなに早く指摘されるなんて……。


 想定外な事態に、どう対応したものか……、と俺が思っている間、ルキナさんはぱらぱらと雑誌をめくっていた。


「不思議です……読めないのに、この書が物語だと分かる。それに、こ、これを眺めていると胸の奥がドキドキします……」


 一通り見て満足したのか、大事そうに豊満な胸に雑誌を抱える。そのせいで表紙が俺の目に飛び込んできた。

 お風呂上りなのか、タオルだけで恥部を隠した金髪美女のイラスト。そしてその金髪の上には『昇天コミック』という文字。それは男たちの夢と希望と欲望が詰まった禁書。

 早い話がエロ漫画雑誌だった。


 なんてものに興味を持つんだ……しかもエロ漫画が読めないとかいう理由で店員を呼ぶとか変態の所業だよ……! なんて恥ずかしいお姉さんだ……。


 文字が読めなくても男女でヤってる絵ばっかりなんだから察せるはずなのに、ルキナさんときたらまたぺらぺらとページをめくりはじめた。


「特にここです。子供っぽいお姉さんがお願いをするように手を合した瞬間、あまりの可愛さに男性の心が撃ち抜かれ、自分を押さえられなくなってお姉さんを押し倒し、女体を貪るところが、展開が早すぎてついていけません……それにこの次のページは……うぅ……」

「お、お客さま、それは禁書です……! それ以上はおやめください……!」


 漫画の主人公と優しげなお姉さんが本格的にヤり始めたところで、俺は手を伸ばし、パタンと漫画を閉じさせた。


「禁書……やはり、この胸のドキドキは禁書による影響……これはなんの魔術書なのですか?」

「いや、魔術書じゃないですけど、まぁ男の一部分を固くする効果はあるかな……って、そうこうことじゃなくて、それは、そっと静かに嗜むのがマナーなんですよ」


 そう説明している間も、固くする……石化魔法の禁書ですか……だったらこの胸のドキドキは石化の前触れ……、と顎に手を当てて熟考しているルキナさん。IQの無駄遣いだ。そんなに考えなくてもいいのに。


「とりあえず、それは元の場所に戻してください」

「いえ、わたくし、気になりますので」

「うわぁ、めっちゃ真面目な声……」


 綺麗な声を低くし、キメ顔を作ったルキナさんの勢いに飲まれ、俺はちょっと引いた。



(次回に続く)2


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