第25話 パッケージに『光る!』って書いてある商品を買おうとしてる少女がいるんだが……ってホントに買うの!?
次の日、夕方に入店してきたギャル悪魔はコーラとポテトを買うと、イートインスペースに直行した。
よほど気に入ったらしい。やはりちょろいぞ、あの悪魔。ファミレスみたいにソファーでくつろいでるし、もう常連で間違いないな。
だが客が彼女だけでは到底コンビニは成り立たない。
どうしたものか……、と俺は棚にお菓子を補充しながら頭を捻る。宣伝したら悪魔と戦闘になるし、印象は最悪だ。今の好感度は敵の基地。これをどうにか親しみやすいコンビニにランクアップしなくちゃならない。普通のコンビニだったらお客さんのニーズに合わせた商品を開発したり、流行りの商品を棚に並べればいいが、異世界ではそうはいかない。
分からないことだらけだ。本当だったら異世界人なんてこうなるだろう。
『美味い! これがカミチキ! 露店の焼き鳥とは大違いだ!』
化学調味料がじゃんじゃん入ったフライドチキンに舌鼓したり。
『これほど香り高いコーヒーをワンタッチで……しかもたった銅貨一枚で飲めるなんて』
一流のバリスタ監修のコーヒーメーカーの実力に戦慄したり。
『この書物、色がついてるぞ……!』
雑誌を見て驚かれたり……そういった物珍しさでコンビニ経営なんてイージーモード。初日の俺はそう思っていた。
だが実際はどうだ? 客も来ない郊外で、問答無用で魔法を放たれ、その後、奇跡的に来た客といえばフライドポテトを貪るJK風のギャル悪魔だけ。これは不味い。早くどうにかしないと。
「あの、お兄さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「うーん」
俺は考える。なんだか可愛いロリボイスがうっすら聞こえる気がするが、どうせ空耳だろう。客はギャル悪魔だけだし。それよりコンビニ経営の妙案が必要だ。
「私のこと無視しないで、お兄さん」
「うーん……」
思いつかない。難題だ、これは。一朝一夕でどうにかなる問題じゃないだろ。
「そこの、カッコいいお兄さん」
「なんでしょう、お嬢さん?」
振り向くと、そこには小柄な少女が立っていた。
「よかった……気づいてもらえた」
俺の視線の先には、商品棚から取ってきたのか小さな箱を手にした少女がほっと息をついていた。可愛らしい白のワンピースに丸っこい黒い靴、さらに長いプラチナブロンドを太い二本の三つ編みお下げにして背中に流していて、これだけ見るとどことなく外国のお人形さんみたいだ。ただその頭には小さな黒い角が鬼のように二本あって、気だるげな瞳は赤い。
悪魔少女だ。声ものんびりしてるし、身体も小柄だ。ダウナーロリというやつだろうか。
「この商品について聞きたいんだけど……この風船、ホントに光るの?」
大事そうに両手に握ったまま小さな箱のパッケージを見てダウナーロリが首をかしげている。文字が読めなくてもイラストとか図形の説明で理解したらしいが半信半疑といった感じのリアクション。一体何を持ってるんだ?
「……っ!?」
パッケージを覗き込んだ瞬間、俺は固まった。
犬風のイラストは風船のよう丸く、その周りにはキラキラと輝く星さま。それと大きな文字で『光る!』と書いている。それだけなら可愛らしいグッズに見えなくもないが、ダウナーロリが箱を裏返してまじまじと見ると『避妊具』とか『コ〇ドーム』とかいう文字が容赦なく俺の目に飛び込んできた。
微妙な空気が漂い出す。
「お、お嬢さん……悪魔なのによく読めたな。光るって」
「うん、私お勉強好きだから、日本語も簡単な漢字なら読めるよ」
「でも、お嬢さんにはまだちょっと早いかなぁ……いや、でもヤるなら絶対必要だし……」
「どうしてー? 説明求むー」
あ、不味い……これは興奮するシチュエーションだ。
中学生くらいの無垢な少女に性知識を教える。エロ漫画では定番の流れだ。
だが俺は、その変態的欲求を堪え、どうにか真顔を作った。
「自分で調べなさい。これは一種の通過儀礼なんだから、自分で調べるのが作法なの」
「う、うん……じゃあそうするね。お兄さん、これください」
「お買い上げありがとうございます……これでよかったのかな……」
俺は首をかしげながら彼女とレジに行き、支払いを済ませた。
(次回に続く)




