第20話 悪魔美女との交渉2
「俺がやるしかないか……」
『あ、よかった。ちゃんと出てきてくれました』
にっこりと笑うスケベシスターことルキナさん。笑顔で優しい顔がもっと優しく見える。しかもあの落ち着いた雰囲気。ちょっと年上という感じで最高にグッとくる。
この人ってめちゃくちゃ人間に友好的じゃね? 悪魔部隊は見せかけだけで、本当は話し合いに来ただけなんじゃね……?
『おかげで建物を焼いてあぶり出す手間が省けましたよ』
全然友好的じゃなかった。発想が蛮族だ。これは不味い。
だが、ここでびびってたら相手にこちらが容易に倒される存在だと知られてしまう。だからここは慌てず、騒がず対処しないと。イメージは、何事にも動じないコンビニバイトだ。
そういうわけで、俺は面倒そうに頭を掻きながらふてぶてしく口を開いた。
「あのー、なんすか? 朝っぱらこんな大勢で近所迷惑ですよ」
『近所迷惑って、あの、ご近所さんなんていないと思うのですが……』
俺とルキナさんの間はかなり離れているが、魔法か何かで声を拾っているのだろう。普通に話せた。
「この上、マンションすっよ? いっぱい部屋があるでしょ。困りますよ~ルキナさん、そんな威圧的に構えられちゃ住民が不安がりますから」
無論、嘘だ。このマンションに俺たち兄妹以外は住んでいない。だがそれを知らないルキナさんは『すみません、配慮が欠けていました』と慌てて頭を下げた。それに連動して巨大なシスターのホログラムも謝罪している。巨人がぺこぺこしてるみたいでちょっと滑稽な絵だ。
『それはそうと、あなたは人間の代表の方ですか?』
「ええ、一応このカミマートの店長をしている者っす、はい。まぁこの中じゃ一番責任ある立場らしんで突き出されましたっす。生贄っす」
『ちょっと言葉遣いが怪しい人ですが……いえ、それより昨日の旗の件です。わたくしが統治する城塞都市プローディオに旗が立てられました。これは悪魔に対して宣戦布告を意味します』
やはりその件か……どうしよう。
俺が黙っていると、ルキナさんがきりっと眉間を寄せた。
『まさか「知らない」なんて言いませんよね? 他国が統治する領地に勝手に旗を立てたのに』
「いや、あれは宣伝的なヤツで……」
『そもそも突然こんな建物を建設しただけでもこちらを刺激してるのに、旗まで立てるなんて、さすがにもう看過できません。監視だけで済めばよかったのに、こんなことになって大変残念です……』
「あれ? これってまさか戦闘不可避? そういう感じ?」
すでに諦めムードが立ち込めている。交渉の余地なしという圧力。だが俺は諦めない。悪魔に攻め滅ぼされてコンビニが物理的に潰されてたまるか。
「冗談じゃないっすよ。こっちはね、商売でやってるんすよ? 商売に国境なんてないでしょ」
『商売? えっと、侵略行為じゃ……』
「いや、違うっすよ。つーか、周りを見てくださいよ。こんな戦力で戦う訳ないでしょ。あなた常識あります? コンビニ相手に戦争とか虐めってレベルじゃないっすよ?」
『コンビニ? え、でも確かにあの建物、戦闘目的には見えませんし……』
『お姉ちゃん! 騙されちゃダメっす!』
割り込むようにフードを被った少女がルキナさんにずいっと寄った。ホログラムにフード下の可愛らしい顔が映り込む。
『この男、昨日旗振ってアタシを威嚇してきたっす。そりゃもう、必死に追い払うようにしてたから間違いありません』
「語尾が『す』だと。こいつも『す』の使い手か。キャラ被りになるな……口調戻すか」
こいつあの塀にいた奴か……つり目がちでギャルみたいな顔だし、ルキナさんを姉と呼んでるから妹のようだが、感情的で馬鹿っぽい奴だ。こいつが入ってくると話がややこしくなるな。
心底面倒だ。俺は疲れたようにため息をついた。
(次回に続く)4




