第19話 悪魔美女との交渉
それにしても悪魔なのにシスター服なのが、ギャップがあっていいな……あ、なんか側近みたいなヤツに耳打ちされてる。うんうん頷いて可愛いなー。
とそこで、俺のお楽しみタイムを邪魔する奴が隣に並んできた。
「鶴翼の陣ですね。彼ら、こちらを包囲するようです」
「戦いになるのか……ああでも、向こうのリーダーっぽい悪魔シスターさんは優しそうな人だし、案外話し合いで解決するんじゃ……」
「話し合いをするためにあんな戦力は用意しませんよ。目算で五千人以上は軽くいますから」
「だったら、早く対処しないと。ユリさん、神的防衛プランをお願いします」
「了解しました。今、端末で連絡を……んん……?」
俺に促されて腕輪型の端末でSF映画よろしく投影ウインドウを展開したユリさんだったが、なぜか軽蔑するような目つきになった。
何か問題でもあったのか……?
そう思って聞いてみると、ユリさんはうんざりしたように口を開いた。
「今の状況を、見世物として神界でライブ中継されているんですが、コメントが少々荒れてまして」
「コメントが荒れてるだと……? なにを悠長なことを、こっちは命の危機なんだぞ」
「はい……そうですね、この通り酷いものです」
ユリさんが投影ウインドウをくるっと反転させ、見せてくる。
えっと……『スケベシスターを見せんか!』……『なんでそこで義眼使わないんだ。我々が見えないじゃないか』……『貴様らだけズルいぞ、わしもスケベシスターみたい!』……『おいこら! こちとらスクショ待ちしてたんだぞ! どうしてくれんだよ!』
欲望の塊だった。
咄嗟のことで義眼の望遠モードじゃなくて陽菜美から双眼鏡を借りたが、ふー危なかった。危うくライブ中継で俺のスケベな視線がバレるところだった。
というか、ろくな奴がいないな。スケベな神しかいない……コメントだけみたら人間と一緒だな。まぁ同じ男として、わからんでもないが……。
陽菜美も俺に肩をくっつけてウインドウを覗き、うわぁと呆れ混じりの声を漏らしている。
だがそこで、どんどん流れていくコメントに苦笑した俺の耳に柔らかい声音が響いてきた。
『はじめまして、人間の皆さん。私は魔王軍第九師団長のルキナ・オズ・アシュウェルと申します』
ルキナさんっていうらしいけど、不思議な声だ。大きく響くような……ってデカッ!
コメントから魔王軍に視線を移すと、あのスケベシスターが強大化していた。
一〇メートルほどまで引き延ばされた身体は若干チカチカと光っていてやや薄い。そしてそのまま視線を下げると、巨大なシスターの股下には普通サイズのシスターが立っている。その手には水晶のようなものを両手で持っていた。どうやらその水晶で出力しているようだ。たぶん、一種のホログラムか何かだろう。
『この悪魔貴族たちをまとめる魔界のこうしゃくです。あ、上から二番目の位ですから、公爵じゃなくて侯爵です。お間違えのないように』
やけに親切に教えてくれる悪魔だった。
『では、さっそく本題に入らせていただきます。人間の代表者、出てきてください』
「ユリさん、呼ばれてますよ」
「は? この店の責任者はアナタでしょ。何を言ってるんですか、店長?」
「でも俺より目上な人はユリさんでしょ。ユリさん行ってよ。エリアマネージャーなんだから、こんなときくらい役に立ってよ」
「失礼ですね、その言い方だとまるで私が役立たずみたいじゃないですか……というか、人間の代表者って言っていましたよねぇ? 確かに私の出身は日本です。けれど、元妖狐で今は戦乙女なので違いますよ。アナタが行くべきです」
「えっ、ユリさん妖狐だったの!? いや、でも人間の耳もあるし、妖狐って……」
「戦乙女に転生したので人間の耳も狐の耳もあるんですよ」
新事実、ユリさん元妖怪で妖狐だった。しかも人間と獣の耳を持つ特殊タイプだ。
そのことが気になって聞こうとしたがユリさんは、それより今は悪魔たちをどうにかしませんと、と言いながら俺の背中を押してコンビニから追い出した。
(次回に続く)3




