第17話 コンビニは大盛況……でも俺、ナチュラルにやらかしちゃった?
早朝、店を開くと平原にはお客さんがわらわらとひしめいていた。
「おぉー、すげぇー大盛況じゃん。人間ほとんどいないけど……」
「そうだね。剣とか銃とか持ってるし、軍人さんかな? 人間ほとんどいないけど……」
圧倒的物量に気圧され、半ば現実逃避気味に呟く俺の声に乗せて陽菜美も気圧されながら呟いている。
それもそのはず、コンビニを挟んだ両翼に展開された彼らはあまりにも物騒だった。
中央にフードを被った人間らしき者たちと、その隣に陣取った動物的な特徴を持つ魔族たち。牛の頭や山羊の頭をした者がいる。ミノタウロスとかバフォメットとかいう有名な魔族だが、そのさらに両翼に並んでいる奴らは生き物ですらなかった。
身長は人間と同じくらいで、二本足で立っている。肉も肌もない身体は骨だけで、頭蓋骨も当然のようにむき出しだ。何もかもスカスカなのに、空っぽの眼窩には眼球の代わりに赤い光が宿っている。まるでこの世に未練を残した物の魂や、生者への憎悪を現した光の眼球だ。しかもその数は、いちいち数えるのも面倒なほど多い。
いや、問題は数だけじゃない。デカい奴もいる。人間サイズの者を数倍に引き延ばしたような大きさの骸骨だ。頭蓋骨に一本だけ角が生えてるし、目も一つしかない。
あれ、絶対人間の骨じゃないやつだ! 一つ目巨人だろ!
俺はその異様な一団を一瞥し、困ったなぁ……、と言いながら頭を掻いた。
「あんなに入らないよ。数的にも大きさ的にも」
「心配するとこそこ……!? お兄、ヤバいよ! あれ絶対お客じゃないよ!」
「なんだ? このコンビニに攻めてくるって思ってるのか?」
「うん……」
「はははっ。心配性だな、陽菜美は。コンビニを攻めるなら強盗レベルで十分だろ? あんなにいたら強盗じゃなくて戦争だぞ。明らかに過剰戦力だろ」
「でも、異世界人からしたらしたらこのコンビニマンションって未知の存在じゃん。きっとびびって最大戦力ぶつけるって話でまとまってるんだよ」
ちょっと不安になるようなこと言わないでくれるか? ちょっと自信なくなっちゃうだろ。
そう思う一方で、俺には確信があった。
「い、いや……これはあれだ。宣伝の効果だ」
「宣伝って……なにしたの?」
「昨日さぁ、俺を見てた現地人がいたんだけど、そいつにのぼり旗を振ってアピールしたんだよ。そでウケがよかったから、城門のところに旗をさした」
「あの旗を?」
「あぁ、さしたぞ。ちょうど門のところにさし込むところがあったからな」
「うわぁ……門に旗って。そこ国旗とかさすためのところじゃないの? 城門ってその城とか街の顔だし、多分お兄のやったことって他人の顔に唾を吐きかけるような行為じゃないの?」
言われてみればそんな気がしてきた。
式典とか凱旋とかパレードとか、考えられるだけでもこれだけ特別な日に旗を立てる決まりは人間にだってある。ということは……国旗とかさす場所にコンビニの旗立てたのか俺?
「しかもあれ、旗のデザイン。見ようによってはこっちも国旗みたいだよね。カミマートって書かれててもあのエンブレムみたいなの国の象徴みたいじゃん」
「じゃあ俺は、他国の国旗をこの国の街に立てたってことか……それって……侵略じゃね?」
「侵略だね」
「あ……」
ようやく理解した。
ヤバい! ナチュラルに宣戦布告してた! 鈍感系主人公みたいに気づかないうちにやっちゃったよ! あーやっちゃた! やっちゃったよ!
身体に火がついたみたいにわたわたした。
だからだろうか、俺は咄嗟にこの事態を解決してくれる人の元に向かった。
(次回に続く)1




