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第14話 おい、変なタグをつけるな

「なぁ陽菜美、俺ちょっと真面目な話をするんだけど」

「うん」

「街にチラシでも配りに行かない? ほら、このコンビニの知名度も上がるし、実際に会って話せば怪しい者じゃないってわかってもらえると思うし」

「ニッコリ笑いながら渡すの?」

「おう。こんな風にな」


 陽菜美に向かって最高の笑顔を作り、俺はチラシを渡すジェスチャーをした。するとなぜかドン引きの顔を作って「うわぁ、胡散臭……」と身を引かれた。なぜだろう。


「今のお兄、海賊みたいな黒い眼帯をつけて、制服も黒いし、闇金にみえるよ。そんな人が笑顔でチラシって、絶対手を出したらいけないやつじゃん」

「く……この眼帯のせいか……おのれぇ、眼帯め……」

「外したら? 別に怪我とかじゃないんでしょ」

「俺だって外せるもんなら外してぇよ。でもこれって、異世界で働いてる俺たちが新しい環境で四苦八苦する姿を見せるものだろ」

「うん、きっと人間観察バラエティみたいに神様たちの見世物になってるよ」

「それでさぁ。俺の左目って機械の義眼……つまり高性能なカメラみたいなものになったんだけど、今の俺たちが見世物になってるならこいつを利用されると思うんだ。観察対象の主観映像って没入感出すためにあった方がいいだろうし」


 そこまで俺が言うと陽菜美が苦い顔で「うわ……」と息を吐いた。それから可哀想なものを見るような目になって小さく首を横に振った。


「酷いよ……お兄からプライベートを奪うなんて」

「ああそうだな、おかげで小便をするときも眼帯が手放せない。もし外せば映像として記録が残るかならな」

「放尿シーンなんて見られたら地獄だね。同じ理由でお風呂でも外せないんじゃない?」

「まあな。でもそれならまだマシだぞ? オ〇ニーなんてしてみろ、全く需要のないエロ動画の完成だ」

「個人撮影。素人。オ〇ニー。無修正」

「おい、変なタグをつけるな。こっちは真剣なんだぞ。もう二度と両目でイチモツを見れねぇんだからな」

「それは辛いね」

「ああ辛いとも、百パーセントのオ〇ニーを封じられたわけだからな」

「うん、片目だと映像関連のオカズもエロ漫画も見にくいもんね……あんまりだよ……」

「おお……! わかってくれるか、妹よ!」

「わかるよ! 色々不便だもんね。トイレも、お風呂も、一人でシコシコしてるときも眼帯が外せないなんて一種のプレイだよ、情けなーい。目に貞操帯がついてるみたいだね……ぷっふふふ……かわいそうー」

「て、テメェ……! 全然可哀想って思ってねぇだろ!」


 笑いをこらえるようにぷるぷるしやがって、そういう笑いが一番馬鹿にされてるみたいでムカつくんだよ。

 俺がふつふつと怒りの炎を燃やしていると、そこでカウンターの端のドアにあるスタッフルームからユリさんが出てきた。


「相変わらずガラガラですね。エリアマネージャーとして心配になりますよ。客がゼロでは成長のしようがありませんから」


 やれやれと小さく首を振りながらこちらに歩み寄ってくるユリさん。なんでもユリさんは職業斡旋課の課長で人員不足のためかマネジメント業務も引き受けているらしい。


 とはいえ、ユリさんがやってくれたことといえば、コンビニの制服とかが詰まった段ボールを送ってきただけでコンビニ経営に対して何のアドバイスもしてくれていない。使えないエリアマネージャーだ。宅配だけなら誰でもできる。仕事ができそうなのは見た目だけか?


 などと考えていると、俺の横で陽菜美がしれっと肉まんにかじりついていた。


「おいしぃー、やっぱり肉まんって美味しいわ。私のソウルフード」

「やめなさい。商品をつまみ食いする店員がどこの世界にいますか……まったく」

「ここにいますよ。あ、もしかしてユリさんも肉まんいりますか?」


 ユリさんに窘められてもけろっとした態度でそう言い返す陽菜美。豪胆である。あまりにも客が来ないから商品をつまみ食いする店員になってしまった陽菜美だが、ユリさんもいまさら指導をするのも面倒くさいのだろう。諦めたように肩を落とした。



(次回に続く)3

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