第12話 異世界にコンビニができた結果……
異世界生活四日目。
今日も今日とてコンビニのレジに立つ。
暇だ。誰も来ない。
異世界生活一日目はコンビニ開店の準備で潰れたが、二日目から普通に営業していた。それなのに誰も来ない。入店人数ゼロ。ゼロということは商品が売れていないということ。日持ちしないホットスナックなんかはその日に廃棄だ。あまりに廃棄が多いからホットスナックを用意するのをやめ、もっと日持ちするモノだけを泳がせる。だが誰も来ないのならホットスナックの二の舞だ。そろそろほとんどの食品を破棄しないといけない時が違づいてる。食品の鮮度管理なんて基本中の基本だが、これじゃあ腐るまで食べ物を並べてるだけの仕事だ。
神々が経営する小売店。最初、ユリさんにこのコンビニの店舗名を聞いた時、おいおい冗談か……そのまんまじゃねーか、と呆れたものだ。
あーあ、こんなに廃棄だして……カミマートのくせに早速経営の危機じゃん。大丈夫か? こんなの見ても面白くねぇだろ。神様たちも。
そう思うと、初日の出来事を思い出した。
「では、基本方針を説明します。あなた方には、神々が提案した企画『異世界で働かせてみた』を一緒に盛り上げていく一員になってもらいます」
「異世界で働かせるなんて、テレビの企画かよ……」
「ええ、似たようなものです。あの退屈で仕方がない神々への見世物となって娯楽を提供する。それが私たちの仕事です。それで、さっきの職業診断の結果、異世界でコンビニ経営してみることに決まりました」
俺の言葉にあっさりと頷くユリさん。環境に適応しなさい、とありがたい助言をくれた後の言葉だから余計に刺さる。諦めて従えとでも言われているようだ。
「とはいえ、勇夜さんたちは普通に生活してください。基本的に映像は、ステルスドローンで撮影したものを神々が好きなタイミングで覗き見る下界監視方式を採用していますから」
そう言うと、ちなみにドローンはそこに飛んでます、と虚空を指差したユリさん。だがそこには何もない。どうやら目に見えないカメラが飛んでいるようだが、聞けば聞くほどふざけた話だった。
なに勝手に話を進めてんだ? こっちはまだやるなんて一言も言ってねぇぞ。
ユリさんの事務的な態度が気にくわなかった。神々の見世物になってになって当然という流れが嫌だった。だから俺は、自分の未来を勝ち取るために口を開いた。
「あの、俺たちを巻き込まないでくれませんか? こっちだって普通の生活を送る権利くらいあるんで」
「こんなところに拘束して無理やり働かせようだなんてふざけんな! 人権侵害もいいところだぞ! とうちのお兄が言ってます」
「おいテメェ、陽菜美! なに俺の後ろに隠れて好き勝手言ってんだ。言いたいことがあるなら本人に向かって言えよ」
「無理無理、あんな美女と会話なんて難易度鬼だし、それに私、向こうからずいずいくる小悪魔タイプが好みの完全受け体質だからお兄が言ってよ……!」
「くそ、このチキンちゃんめ……しょうがねぇな」
「揉めているようですが、何かご不満なところでも?」
はじめは初対面だから敬語で接していたが、これまでのユリさんの態度のせいで俺の怒りゲージは結構溜まっていた。だから『さん』呼びは崩さずにいても、もう丁寧に話す気はない。それに下手に出ていては舐められる。ここは強気に攻めるんだ。
「不満なとこだらけだ。俺の妹がもう言ったが、これ強制労働だろ。しかも拉致してるし、明らかに人権侵害だぞ」
「あなたは自分の命にいくらつけますか?」
「い、いくらって……こんなときになんだ……?」
「値段です。あなたの命の価値を言ってください」
「そんなもん、値段をつけられるわけねぇだろ。お金には代えられねーし」
「言いましたね。そう、お金には代えられない」
ユリさんは不敵に笑った。
「爆発で気絶したあなた方を助け出し、治療をしたのは私たち戦乙女です。あのままでは焼け死んでいたでしょうね。もっとも、火事の現場でなくても人間の医学では完治するのは不可能でしたが……特に妹さんの方は酷かったです。肺挫傷で死にかけていました。ほとんど即死ですよ、アレは……」
そういえばあの爆発の時、陽菜美の方が壁に近かった。あれじゃ、俺より爆発に巻き込まれて重症になっていたことだろう。それはわかる。わかるが、どうも納得できない。
(次回に続く)1




