とある都市伝説――無規則世界
急に説明がつかなくて不条理な出来事でどん底な生活にガクンと落ち込んでいってしまった人は、夕映えの空がしだいに猩々緋色になってきたタソガレドキに、薄暗くてぼんやりと見えて寂しい小路を、高層ビルの幅広くて平べったい屋上を、公園の片すみに静かに隠れるブランコを折よく通りかかったら、何気ないうちに、本紫色の瞳をしている悪魔とめぐり会う可能性があるかもしれないのだ。
まだかすかな希望をふところに抱き留めて絶望している人は、しっかりと目を閉じて、手を合わせて、目の前に立っている彼に向かって、決して叶えるはずがない願望をひそひそ立てて、出来上がる瞬間にすかさず、彼に一発で銃殺されることになった。なぜなら悪魔としての彼の手に握った拳銃は、あの異世界への唯一のルートだからだ。それにあの世界には、ここに生きてきた今日までの現実についての認識がすべて粉々に打ち砕かれたり、時間の流れる秩序がすべてさっぱり無視されたりする状況の上に、代償をいくつか払い渡されることさえすれば、どんなに理不尽ででたらめな願望でも実現できるのだ。
「では…」
「あなたにも、どうしても叶わなければいけない願望がありますか?」
――<匿名週刊>185期からの一部抜粋