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 そんな大騒動があった翌日。

 アリシアはスヴェンの屋敷の前で、アレックスたちに囲まれ、別れの挨拶を交わしていた。そこにはチャーリーだけでなく、かつてアリシアを慕ってくれていた使用人たちが勢揃いしている。彼らは口々に、アリシアへ感謝を伝え、今後の幸運を祈ってくれた。そしてスヴェンに、くれぐれもアリシアを頼むと頭を下げる。

 改めて、アリシアは自分が一人ではなかったことに気付かされ、喜びの涙を流しながら満面の笑みを見せていた。

 そんなアリシアを愛しげに眺めるスヴェンへ、今度はアレックスが深く頭を下げる。


「……スヴェニエール殿下。僕が言えることでないのは重々承知しておりますが……姉のこと、何卒くれぐれもよろしくお願い申し上げます」


 悔恨を滲ませるアレックスの声音に、アリシアは息が詰まる思いだ。家を出た当時は、これが最善の道だと信じて疑っていなかった。仕事は辛いし、なかなか状況が好転することはなかったけれど、それでも家にいるよりはマシだと、ずっと思ってきた。しかしアレックスはあの後、伯爵家でたった一人で、家を守るために頑張ってきたのだ。なかなか便りをよこさない姉を心配し続けながら。姉を守りきれなかった自分を悔いながら。

 そんなアリシアの思いに気づいたのか、スヴェンはアレックスの肩に手を置いて、少し強引に顔を上げさせる。そして、人好きのする笑顔をアレックスに向けて、こう言った。


「そんなに畏まらないでください。あなたは私の義弟になるのですから」

「え……しかし、僕は……」

「あなたは、ずっとアリシアの誇りで、心の支えでした。そんな大事な存在を、私がアリシアから奪うことなんてあり得ません。……落ち着いたら、ぜひ帝国へ遊びにきてください。いつでも、どんな時でも、必ず力になります」


 スヴェンの言葉に、アレックスがくしゃりと顔を歪ませて涙をこぼす。きっと、今生の別れだと思ってここにやってきたのだろう。アリシアは、そんなアレックスに手を伸ばし、自分よりよほど逞しい身体を力一杯抱きしめた。


「大丈夫よ、スヴェン様の言う通り、望めばいつだって会える。……きっとこれから、パレスームは荒れると思うわ。何かあったら必ず、一番に私のところに来て。いい? 約束よ」

「姉さん……あり、がとう……!」


 そう言って泣きじゃくるアレックスに小さい頃の面影を見て、アリシアも一粒涙をこぼす。そしてぱっと身体を離すと、アレックスを安心させるために最高の笑顔を浮かべて見せた。


「大好きよ、アレン。離れていても、私たちは血の繋がった姉弟。あなたが望んでくれさえすれば、いつでも会える」


 そうして五年前と同じ言葉を唇に乗せると、それに気づいたアレックスも情けなく眉を下げて笑う。そして最後にもう一度別れのハグをすると、スヴェンと共に馬車に乗り込んだ。

 窓から顔を出して、アレックスやチャーリー、他の使用人たちに、大きく手を振る。

 ゆっくりと馬車が動き出し、アリシアは新天地となる帝国に向けて、進み始めた。



 少しずつ遠くなっていく景色をいつまでも眺めながら、アリシアは物思いに耽る。

 記憶を取り戻してから、いろんなことがあった。前世の記憶は、アリシアに魔道具開発のための大きな知識も与えてくれたけれど、同時に大きな心の傷も残していった。

 正直なところを言うと、まだスヴェンの全てを信じきれているわけではない。スヴェン自身がアリシアを望んではくれているけれど、その気持ちが一生続くかどうかなんて、今のアリシアには知る術がない。前世の元彼やかつてのカイルのように、他の女性に目移りしてしまう可能性だって、完全にないとは言い切れない。

 

「……どうしたの、アリス? 寂しくなってしまった?」

「スヴェン様……」

「大丈夫、君にはずっと、私がついてる。大好きだよ、アリス。今までもこれからもずっと、君だけを愛してる」


 そう言って、隣に座るスヴェンの唇がそっと、アリスのそれを塞いだ。この甘さを享受できる間はきっと、アリシアはどんな辛いことがあっても乗り越えていけるのだろう。だからこそ、スヴェンに相応しい自分でいられるように努力しなければと、アリシアは幸福に包まれながら思った。


「……私も、愛しています。スヴェン様」


 そうして笑い合う二人を乗せて、馬車は帝国へと向かっていった。





 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました……!


構想だけは昨年末からあったんですが、書籍化作業が入ったり本業が立て込んだりで、気づいたらもう3月orz

これはなんとしても書き上げたいという思いだけで、3日間の家事育児休暇を旦那からもぎ取り、カフェにこもって書き上げました。

オープンからクローズまで、コーヒー2〜3杯だけで粘ってすいませんでした……(ry


3日間しかない!という焦りの中、なんとか書きたいことは詰め込めたかなと思います。

少し時間ができたら描写を足したり、番外編書いたり、続きを書いたり……したい!(願望)


少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひ評価・いいね等よろしくお願いします!

皆様の応援を力に変えて頑張ります…!



**********


そう言えば!

昨年8月に特別賞を受賞させていただきましたアイリスIF大賞さんのエントリー作品が、もうすぐ書籍になります。

アンソロジー形式なので、他の素敵作家さんの作品も併せて読めます!

そして私の作品にも……素敵扉絵をつけていただいております……!!

(↑興奮しすぎて子供たちと大騒ぎしました)


まだ発売日とかはわかりませんが、着々と書籍化進んでおりますので、こちらもぜひ!

よろしくお願いしまーす!


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