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黒瀬と姫の雨宿りラジオ  作者: ラジオタルト
2/5

皆さんチッチを知っていますか?



「さあ始まりました!『黒瀬と姫の雨宿りラジオ』。本業画商の黒瀬です」

「数学者の姫です」

「今日は献血をしました。リスナーの皆さん、どれ程が経験があるでしょうか」

「黒瀬は時々行ってるよね、俺は痛いの嫌いだから絶対行かない」

「注射は注射でもワクチンなど、体内に入れるよりも血を抜く方が痛みは少ないらしいですよ?」

「俺覚えてるもん、アレルギー検査って言われて血液取られた時すっごい怖かった。痛かったし血の気が無くなってく感じがすごい不快」

「血が抜かれていく感覚ですか? すみません鈍感で。全く感じたことありませんねぇ」

「じゃあブラシーボ効果かも。錯覚」

「こういう場合もブラシーボ効果って使うんでしょうか。薬のときに使うイメージが」

「知らね。意味が伝わればいーの」

「それもそうですね」

「言葉は道具。通じればいい」

「間違いありません」

「黒瀬は正しい言葉使いじゃない? 良いよ、最近の若者言葉はけしからんとか言っても」

「うーん、私の中で言葉っていうものは移り変わりゆくものなのであまり。方言とかも好きですし。『正しい日本語』とかを大切にするのは国語学者な感じがします。私は言語学の方なので、言語学は言葉の意味って時代によって変わるとか、じゃあどうしてこういう表現の仕方になるのか、とかそういう分野です」

「じゃあなんでそんな上品な言葉遣いなの」

「家でこうだったからこっちの方がラクというのもありますが、一番は……こういう話し方の方が姫は好きでしょう?」

「あ、はい大好きです」


「ということで献血に関わるお便りです。ラジオネーム『イカの尾』さん。黒瀬さん、姫、こんばんは! いつも楽しく聞かせてもらっています! 私は以前リスカの習慣がありました。そんなある日何かのSNSで『リスカしてるなら献血行って人様の役に立て』というようなコメントを見つけました。超理論で全く破綻しているとは思いますが私は何故かこの言葉に納得して献血を始めました。リスカを家族にバレて心配されていたり、部活を変えて人間関係も良くなったことで今ではリスカを止めて献血に行くだけです。献血は自分の血を見ることが出来て安心できます。生きてるだけで血は手に入るモノですからそれを提供することが感謝されるのは、無条件で全肯定してくれている感じで満たされます。雨宿りリスナーの中でこういう悩みを持っている人がいたらご一考ください!

「以上、献血の宣伝でした」


「『リスカすんなら献血行け』はリスカ常習犯の神経逆なでじゃねーの。それで納得するきみは希少種」

「自分でも止めたいと思っていたのかも知れません」

「そういうこともあるか。最後の後押しみたいな? 心配されるとかえって止めずらくなるとこもありそう。俺だったらそうなるかもしんねーや、黒瀬そこらへんどう?」

「聞きますよやっぱり。拒食症の子とかだと何キロまで戻ったら通院が終わるとかあるとその体重にならないようにキープしてしまうとか」

「わーでも分かる。病気が治ると人が離れてくんだよね」

「構って欲しいというのが理由じゃなかったのに、何時からかそこも気にし始めてしまうこともあるみたいで」


「ていうか良いの? 献血を自傷行為に使って」

「そもそもそこまで痛いものでないので代わりになるかどうか。献血ってそんなしょっちゅうできるものでも無くて3ヵ月とか開けないといけませんし、健康でないといけません。献血をするためには健康である必要があるのでそういう意味では献血にすがってもいいですね」

「献血にすがる」

「ん-。私はボランティアは100%の善意でなくとも良いと思ってます。自分の為にボランティアしてもいいじゃないですか」

「それは同意。黒瀬はなんで献血すんの」

「主に善意から」

「その他の1%にも満たない理由を教えて」

「献血ルームという所があって、血を採取するうえでは落ち着いていた方が良いですから心地の良い空間になっているんです」

「それ聞いたことある。お菓子とかジュースとか漫画もあるって」

「ええ、そこで献血終わった人に話しかけるとか。する前に話しかけて盛り上がって興奮させちゃ悪いし」

「ナンパ?」

「ナンパとは目的が違います。あれですよ……人脈づくり?」

「黒瀬の知り合いづくりの悪癖はもう分かってるからいいよ、抑えられない趣味なんでしょ」

「その言い方……まあいいです

「他にも友人と行ったり、主に交友関係目当てで行きます」


「てかさー献血の話題になった時からうっすら思ってたんだけど、チッチ知ってる?」

「チッチ? 知りません」

「血の妖精、チッチ。献血のゆるキャラ」

「献血にまでゆるキャラがいるんですか……。ああ! もしかしてパンフレットの表紙なんかに描いてある、赤いとんがった耳を持つ?」

「そうそう! 分かってんじゃん」

「あの子チッチって言うんですか」

「アイツ可愛くない?」

「はぁ」

「姫主権ゆるキャラランキング一位だよ」

「そこまで?」

「なんとなく好き。特別かわいい! って思う訳じゃないけど可愛い」

「献血行かないのに?」

「献血行かないのに。そういうもんだよ、チッチオタクじゃないけどゆるキャラの推しはチッチです」


「では続いてのお便り、ラジオネーム『ペイン(まる)ックス』さん。おそらくペインテックスでしょう」

「セッでなく?」

「ええ、『セ』でなくて『テ』です。ペインテックスというのは油の成分が多く含まれる絵の具で紙、布などに模様を描くようなことです。その絵具自体を指す場合もありますね」

「画商ムーブじゃん。滅多にない希少な瞬間です」

「皆さん! 色々手広くやっていますし一番の収入源は投資だったりしますが本業は画商です。お間違えの無いように」

「一番の収入源投資なの?」

「ええ、去年は、ですが。それではお便り読ませてください。

「黒瀬さん、恋愛相談です! 僕は少し前から片思いし……」

「待って姫は?」

「最後まで聞きましょう。僕は少し前から片思いしている同級生がいます。互いにとって異性の中では特に親しくしているような関係です。中学生からの親友にも相談していました。毎日とはいかなくてもよくライ〇もしていましたし二回通話もしました。勿論二人きりで夜です。勇気を出してデートに誘おうかとドギマギしていたら、僕の親友が好きだから協力してくれとメッセージ。良いとも悪いとも言えなくて『へーどんなとこが好きなの』なんて返しました。まだ親友には何も言ってません。どうすればいいですか。親友には失礼ですが僕は文化祭でミスターグランプリに出る程度には見た目が整っています。優勝を狙えるほどではありませんが。対して親友はそうではありません。それに僕の方が成績も良く、その子とも僕の方が話しています。他の男ならともかく親友だと僕は納得できません。

「姫はこんな相談されたら複雑怪奇な妄想を始めて解決案を出さないまま勝手に萌えそうです。黒瀬さん、どうか姫の手綱を引きながら良い案を教えて下さい」


「ウザいんだけどこのパインセックス! パイナップルでシコってろよ」

「とんでもない暴言ですね」

「はーい、その性格の悪さが原因だと思いまーす」

「だったら親友は優しいとか性格が良い、と書きそうなものですよ。真面目に参考にしたがっている気がします。必要だと思ったところをなるべく正直に書いてるんじゃないですか?

「それにしても三角関係というのは厄介ですよねぇ、いつの時代でも」

「それな。姫最近物理に興味が向いてるんだけど」

「ほう、どういう」

「万有引力」

「かなりアバウト。それで?」

「物体が二つだと簡単に説明付くでしょ、いつどういう状態でいるか。もう高校で習うレベルじゃん。でもこれが3個になった途端難しくなんの、近似値しか出ない。解けないの」

「へー! そうなんですか、不思議です。知りませんでした」

「つまり物理は恋愛と一緒!」

「すみませんパインセックスさん。妄想はしていませんが物理の話をさせてしまいました。姫を縛り付けることは私には重荷です」

「黒瀬がセッんんを言うのってえっちじゃん。年齢制限ものだよ後でディレクターさんに怒られろ」

「なんですか、意味の分からないことを言うのは止めなさい」

「黒瀬って存在が18禁だよね」

「続けるんですか、そして侮辱でしょうか?」

「褒めてる褒めてる」

「逆に姫は全く色気がありませんよね。汚していけない感じがします。実際は18禁ファンタジーな知識でいっぱいですが」

「色気ないは褒めてない」

「そうですか? なんというか色欲とは対極にいるような雰囲気があります。純粋、神聖、潔癖、透明、無垢……どれも少し違うなぁ」

「なんか白の連想イメージみたいなラインナップ。俺のイメージカラー白ですか」

「うーんそうですね。そんな感じがします。私はどうでしょう」

「黒か紫」

「うん真逆。


「そして相談を忘れていました、すみません」

「えーまだやんの、次行こ」

「まだ何の話もしてないでしょう。役に立つかはともかく案を出してあげましょう」

「……はーい」

「まずその片思いのお相手が特殊性癖だと思いましょう」

「ああ?」

「親友の方が筋肉があるなら筋肉フェチ、筋肉が無いならひょろい男が好き、といった風に親友よりも自分が劣っている訳ではなく相手のタイプで無かった、と」

「はいはい、自分に言い聞かせて納得させるのね。大切」

「その恋を成就させるのは難しいのであきらめた方が良いと思います。そして私だったら親友に諦めたことを報告します」

「相手の恋応援してあげんの? 優しくね?」

「その時は『失恋しました。秘密ねって言われたから誰とは言わないけど好きな人教えてもらった』とでも言います。きみのことが好きだってと言われても相手も気まずいと思うので」

「うん」

「で、ここからその子の恋を応援するのかですが」

「ここから重要」

「その子と毎日連絡とり合ってたのは、したいからかもしれませんが振り向いて欲しいからって言うのもあると思っていて。だとするとその恋は終わったのでその女の子と文面を気にしながら連絡とる時間って貴方にどれほど意味があるでしょうか?」

「別にこの先を望まないならそこまで気遣う必要ないか」

「ええ、だから他の女友達だとしたらどのくらいまで協力するかな、といった具合に面倒くさいと感じない程度で協力すればいいんじゃないでしょうか」


「そこまで吹っ切れるもん? 黒瀬じゃないんだよ」

「初めは苦しいかもしれませんが、他の女友達と同じようにと意識して行動していくうちに吹っ切れそうですけど、難しいかなぁ」

「なんか黒瀬ってそういうとこ女脳っぽい」

「あー確かに。女性の方が失恋引きずらないですよね、男の方だと一年位前に好きだった人でも席替えで近くの席に来たら、片思いしてた頃を思い出すというか、前好きだったな~と思い出す人多いイメージです。女子はなさそう」

「わかる。あれね、上書き保存と別途保存」

「女性が上書き保存で男性が別途保存ってやつですね」


「姫がこういう状態になったらどうします? この三角関係」

「えー俺の場合、俺のことが好きな人が好きだから俺を好きじゃないと冷める」

「そうでしたね。じゃあこの気持ちは分からない?」

「は? 見る目ねーなこいつ。てなる」

「恋の協力は?」

「え。まず親友にばらすでしょ、勿論親友が口硬いって信頼できる場合ね」

「はいはい」

「で、親友に俺はもう冷めたからどっちでもいいけど付き合いたい? 付き合いたくない? て聞いて、付き合いたいだったらダブルデートとかどう? って元片思いの女子に提案して、数回の茶番をしてのちゴールインさせる」

「ちゃちゃっと済ませますね、姫らしい。興味ないと言われたら?」

「積極的にキューピットにはならずに頼まれたことをメンドクサクない範囲でやる」

「どちらにしても諦める必要がありますね、ここから相談者さんの恋を成就させるのは難易度が高すぎるようです」

「絶対無理とは言わないけど結構こっちに都合イイことが二、三ないと無理じゃね」

「運要素が大きくなりますよね。貴方の行動でなにか変えられるとはあまり……思い付きません」

「うん、吹っ切る方がおすすめ」


「そろそろお別れです。来週も是非聞きに来てくださると嬉しいです。お便りもお待ちしています」



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