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ラミアの柘榴  作者: 青井藻々
第1章 半人前のヴァンピール
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事件

 エマが苦い顔をしたのを見て、ゲルハルトは肩をすくめた。


「何の因果か……料理人として『ラミアの愛し子』に入団した君が『ナイト』になるとはね」


 エマは何も言えず、ただ黙ってうなずいた。


 ゲルハルトは慈しむような笑顔を浮かべながら、言葉を続ける。


「君は今回の任務が訓練後初めてと聞いたから、『ラミアの愛し子』の中で最も力のある者をつけることにしたよ。このユリウス・ヴォルフという男だ」


 エマは再び小さくうなずき、恐る恐るユリウスの方を見た。


「一度スコットランド支部で見かけたことがあります。任務で立ち寄られたみたいで。そのとき僕はコックだったので、直接話したりはしませんでしたが……」


 ユリウスは眉をしかめた。


「はあ?そんなことあったかぁ?」


 ゲルハルトは苦笑いしながら続ける。


「まあ、一度も見かけたことがないよりは心強いだろう。それに、今回は白雪も一緒に任務に当たってもらう。白雪はハンター君と歳が近いし、話も合うだろう」


「あ、ありがとうございます」


「さて、早速だけど任務の話をしてもいいかな?」


 ゲルハルトは言葉を切ると、三人に資料を渡した。


「今回君たちに行ってもらうのは、南部のヴィースブルクという街だ。最近若い女性の行方不明事件が相次いでいるので、これを調査してもらいたい」


「調査は俺たちの仕事じゃねえぞ」


 ぶっきらぼうなユリウスの口調を気に留めることもなく、ゲルハルトは言葉を続ける。


「これまでは行方不明事件だったので、ただの人買いである可能性も否めなかった。しかし、とうとう先日、死体が発見された。体中の血を抜かれた状態で、森の中に捨てられていたそうだ。首には牙の痕。ほぼ決まりだろう。」


 エマは暗い森の中に転がる血の気のない死体をを想像し、思わず身震いした。


 一方のユリウスは面倒臭そうにため息をついた。彼にとっては死人など日常の一場面に過ぎない。


「もう少し確度の高い情報はないのか?その一件だけだと、吸血鬼騒動を隠れ蓑にしたただの殺人事件かもしれないだろう」


「無論、すでに『シーカー』を数人送っている。まあ、領主であるノスフェラト伯爵は代々『ラミアの愛し子』に惜しみない寄付をしてきた家だ。上も無下にすることができないんだよ」


 苦笑いをしたゲルハルトは、エマと白雪の方に視線を送りながら言った。


「そういうわけだから、明日の朝一番に発ってもらう。細かいことはその資料の中にあるから、あとで確認しておいてくれ。何か質問は?」


 白雪は首を横に振ってから、エマの方に視線を送った。エマは何か言うべきなのか迷ったが、結局言葉が見つからずに黙り込んだ。


 誰も質問してこないことを確かめたゲルハルトは、おざなりな十字を切り、どこか投げやりに「神のご加護があらんことを」と言うと四人を部屋の外へと送り出した。


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