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⑴『思想家の、快適と憂鬱』
⑴『思想家の、快適と憂鬱』
㈠
或るページをめくると、その思想家の書物には、様々な言語が、散りばめられている。勿論、此処で紹介する訳ではない。ただ、その思想家は、殊更に慌ただしく、周囲を見回しては、行き着く場所へと、足を向けることを、怠らないのである。
㈡
思想家には、快適と憂鬱があった。快適としては、一つには、自己の思想が、誰かの役に立つことである。それは、思想家にとって、一番嬉しいことだからである。また、その思想的文章が、後世まで残存し、思想家として、名が残ることもまた、思想家にとっての、快適ではあった様である。
㈢
憂鬱としては、一つには、自己との言語格闘に、疲弊する、ということがあった。思想家は、常に、思想のことを考えている。それ故、思想が出てこないことは、致命的な訳である。意識を自己観察して、思想家は、常に、明日、のことを、思考しているのである。