王国追放
「ガイア、貴様は今この時を以てこの国から永久追放の刑に処す!」
「っ!」
王国の中心に建つ城の謁見の間にて、国王の怒声が聞こえてくる。
その中には国王と側近と大勢の兵士、そして魔道士ガイアが居た。
「……一応お聞きしたいのですが、何故です?」
「何故だと? それは貴様が一番良く理解してるのでは無いのか?」
「国王陛下の仰りたい事の意味が、私には分かりかねますね。」
「フッ……この期に及んでまだシラを切るとは、往生際の悪い奴だ。 言っておくが既に証拠ならあるのだぞ?」
国王はそう言い、妖しげな笑みを浮かべた。
「証拠……ですか?」
「そうだ! お前がグラディウス一族が送り出した暗殺者であることも、罰したスタルクス家当主と裏で国の内部崩壊を企てたことも、既に把握しているんだ!」
「……はい?」
ガイアは、国王の言葉に開いた口が塞がらなかった。
彼と自分が訳の分からない事を企てていた等と言われても全く身に覚え等無かった。あるとすれば昔に度々向こうから此方の村に来て親父達と雑談をしたくらいだ。
それに加えてガイアは人類の監視として父親から半ば強制的に行かされた記憶はあるが暗殺者になろうなんて事はしたことも無く、先ずそんな気力など湧く事無く無気力に生きていた。
それに例えそうなってなくても、父親との約束を破る訳にも行かなかった。
だと言うのに、コイツ等と来たら……そう考えていると、国王はそんな怒りでうち震えるガイアを見て更にこう続ける。
「どうせ仇だの何だのとそんな理由であの男と結託したのだろう? あの男の事だ、我々の今のこの現状が気に入らずにお前と手を組んで革命でも起こす気だったんだろう。 まぁ無意味に終わってしまったようだがな!」
「お言葉ですが国王陛下……その様な妄言の為に、貴方に尽くしてきた一貴族の当主を捕縛したと言うのですか?」
「妄言とは随分な物言いだな? 自分の立場くらいは弁えた方が良いぞ? 魔力適合率ゼロのエセ魔道士が!」
ガイアの発言が気に入らなかったのか、或いは腐っても国王としての威厳やプライドを保つためか、国王はそう吐き捨ててガイアを見下す。その目はまるでゴミを見ている様であった。
「……聞きたい事があります。」
「なんだ?」
「それ等の話は、彼自身がそう言ったのですか?」
「……それを知ってどうする?」
国王は険しい表情になってガイアにそう聞き返した。
少し国王が面倒臭そうな顔をしているのをガイアは決して見逃しはしなかった。
「少しばかり気になったんですよ。 何を以てその様に確信しているのかを……」
「先程も言ったであろう? 奴とお前が裏で関与していた事が既に証拠となっているのだ。 無駄な悪足掻きは止せ……これ以上歯向かい、場を乱すと言うのであれば追放では済まさぬぞ?」
「口封じ……か。」
「口の利き方に気を付けろ反逆者が!」
国王の側近がガイアの口調に対して怒りを顕にし、そう怒鳴り付けてガイアを反逆者呼ばわりした。
「陛下、これ以上この男と話してもただ言い逃れをしようと話を反らされてお話になりません! 証拠も既にあるのですし刑を執行すべきかと。」
「うむ、それもそうだな。 よし、ガイアを連れ出すんだ!」
「畏まりました。 おいお前達、聞いたな? 今すぐこの反逆者を連れ出し、この国から追放せよ!」
側近が国王にそう囁くと国王はそれに対してウンウンと頷き、そう宣言すると、側近が周りの兵士に指示を出して俺を拘束する。
「さぁ来い! この国から追い出してやる。」
「恨むなら自分の行動を恨めよ? 反逆者。」
ガイアを拘束して連れ出す兵士が口々にそう言い、ガイアを引き摺って行く。
国王や側近も清々したような顔をしており、ガイアはそれを見て自分の後悔は間違いでないと確信してしまった。
「あぁ、もうとっくに恨んでるさ。 親父の意向に従ってしまった俺自身の甘さをな?」
俺は自虐的な笑みを浮かべて小さくそう呟き、兵士に城外まで連れ出されると、そこで後頭部から強い衝撃を受け、ガイアは意識を失ったのだった。